72

不吉な惑星サターン、かーらーの「貴方真冬生まれですわね?」「いいえ7月生まれです」というシビレル先生とハリーの占い学コントを見て心が和んだところで、同じく土星と診断された私にシビレル先生のターゲットが移った。

「幼い頃の大いなる喪失、そしてあなたを守る過去の混乱ーー残念ですけれど、ええ、とても残念で悲しい事ですけれど、あなたは」
「あ、私真冬生まれではないです」
「……きっとあなた、とても、とても嫌な思いをすることになりますけれど、あなたはそれを遠ざけることも出来ないようですの」

なんつう予言じゃ。今までにないパターンのものに驚き桃の木山椒の木とあんぐりびっくり口を開けてしまった。しかし嫌な思いは結構してっからそんな、うん、マタカァみたいな感覚である。

「見て!星位のない惑星が出てきたわ、ねえこれってすごいことじゃない!?」
「未確認の星発見しちゃった感じ?この情報結構売れるんじゃない?」
「冥王星ですわ」

ラベンダーとN〇SAに持って行く計画の話をしていたというのに、シビレル先生はサクッと星を言ってしまった。最後尾とかなんとか。しかもロンが余計かつお下品なことをいっちまったもんだからさあ大変。ラベンダーの機嫌は悪いわ宿題いっぱい出されるわ。多分アレあとでハーミーさんにチクられるやつだぜ。かわいそうに…。


授業後、大量に出された宿題をいつやるか悩みながら2人の後ろをついて階段を降りると、丁度ハーミーが後ろから到着した。

「宿題がいっぱい出たの?」
「めっちゃ出た。主にロンのせい」
「トレローニーが悪いんだろ!」
「残念ね。ベクトル先生はなにも出さなかったわ」
「ベクトル先生?」
「数占い!あなた、まだ覚えてないの?」

ハーミーの呆れ顔にへへへと苦笑する。ハーミーが、この内容をやったから見ておくといいわ、と教えてくれた。
えらい夕食待ちの行列にゲッと顔を顰めながらも揃って並ぶ。「これ整理券とか出ないの?どこのチェーン店だよっていうね」「何言ってるの君」悲しいノリツッコミだよ放っておいてクダサイ。ロンから切ない目を向けられ気まずく視線を外すが、すぐに誰かがロンを呼ぶ声が聞こえてつられてそちらを見ると、なにやら嬉しそうなマルフォイくんがいた。手に持つ新聞がどうのこうのと話している。何?ロンが新聞に載ったの?

「父親さ、マヌケなミスターウィーズリーがね」

マヌケな、という言い回しに眉を寄せる。マルフォイくんはそれはもう楽しそうな顔で話しだした。ふんふん、と話を聞いて行くうちにロンはめちゃめちゃ怒り出す。ぶっちゃけ聞いていて話はよくわからなかった。魔法省がどうのこうのとか、闇祓いとか、難しい言葉がいっぱい出てきた。しかしよくわからないなりに、ロンのお父さんがなにやら大変そうなのはわかった。ふんわりな理解。

「マッドアイってどっかで聞いたことある…」
「ムーディ教授よ、DADAのね」

コソコソ小声でハーミーと話している間にロンとマルフォイくんは喧嘩をし始め、更にハリーが入ってヒートアップした。何やらお互いの親をけなし合っている。母親がどうとか。みんなママの悪口いわれて怒るなんていい子だ…不謹慎だがほっこりしてしまう。と、まあ眺めていたら、だ。

「そこのモンキーは親無しで、ああ本当に可哀想な奴らだよ!」

「……は?」

その喧嘩がこちらに飛び火した。
やめろ、その関係は今の私には地雷なんだ、と注意する前に、私の拳が舞っていた。

「うわあああ!」

ガツン、とマルフォイくんの顔に当たった自分の手を見て、アッヤッベと冷汗をかいた。後ろの(多分主にグリフィンドール)は盛り上がりもっとやれと言っているが、いや、あの、それどころではない。若干ヒリッとする拳を抑えた。手を上げてしまった。しかもグー。ご、ごめん!と尻餅をついたマルフォイくんに慌てて手を伸ばすが、彼はひっと悲鳴を上げて後ずさった。と、その後ずさった先に何か光が見えた。
危ない、と再度手を伸ばすと、私の指先でマルフォイくんが小さな動物に変身した。白い、小さな、動物。イタチみたいなやつ。

「……は?」
「卑怯なことをするな!」
「はあああああ?」

視線を上げると、ちょうこわいおじさんがいて、杖を構えていた。ちょうこわいおじさんは、元マルフォイくんに手を伸ばす私に触るな、と怒った。その声と勢いに腰が抜けた。まじで、え、ちょうこわい、は?なに?杖?あれ、マルフォイくんは?え?どうなってんの?
足を引きずりながらこちらに来るちょうこわいおじさんに、元マルフォイくんが怯えて走り出す。すると、ちょうこわいおじさんは元マルフォイくんにまた杖を向ける。慌てて元マルフォイくんの前に滑るように移動した。摩擦で膝が痛い。

「ちょっ、ちょっちょっちょ、まっ、」
「どけ小娘!」
「まっ、まって、どうどう、おちついて、」
「逃がさんぞ!」
「ぎゃああ!やめろよ!!」

ちょうこわいおじさんが元マルフォイくんを魔法で宙に上げて床に落とした。悲鳴が上がる。私もめっちゃ怖い。震える足を叱咤して無理矢理元マルフォイくんの前に出る。するとちょうこわいおじさんは私にも魔法を向けそうな雰囲気を出した。えっこれも怖い。思わず私も杖をちょうこわいおじさんに向けた。多分、いざとなれば杖は投げるんだけど。
ちょうこわいおじさんは私の向けた杖を見て、ほう、と片眉を上げた。その顔もこわい。全てが怖い。

「そいつを庇うのか?お前を侮辱したそいつを庇うのか?」
「…い、いや、いやいやいや、おかしいでしょ、なんで攻撃したの?つかなんで魔法、は?」
「お優しいことだな、だが教育には不要だ!」
「その言葉そっくりお返ししますけど!?」

そもそも侮辱されたって言ったって、私はマルフォイくんを殴ったわけで、それでもうプラマイゼロ、っていうかむしろ私が悪いほうの立場なんですけど。何を言っているんだこのおっさんは。信じられねえ。睨みつけてくるちょうこわいおじさんを睨み返し、ぎゅっと杖を握りなおす。そのとき、

「ムーディ先生!」

マクゴナガル先生の悲鳴のような声が聞こえた。
先生はよ!PTA待ったなしだぞ通報しろ!

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