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わっかんねえなあ、と羽ペンの先っぽで無駄に机の上をサッサッと掃いながら本と白紙のレポートを見比べる。消しカスがあったらいい掃除道具なんだけど、残念ながら鉛筆さえないらしい魔法界にはない。消しカスが恋しくなる日が来るなんて人生ってスゴイナー。消しカスの代わりに滲んだインクを誤魔化せないか羽の先っぽで遊んでいると、隣の席に誰かが座った。ハッと後ろを見ても図書館のラスボスはいなかったからホッと安堵で胸を撫でる。最近クラムくん人気でちょっとでも真面目にしてなかったらすーぐ追い出されちゃうんだよねえ…。

「使わないならその本を貸してくれ」
「エッハイ」

そっと本棚の向こうにいないか目を凝らしたところで声をかけられ、体をグルンっと真正面に戻す。隣を見ると、これまー細い青年がいた。アッスリザリンだ。

「それ、まだ終わってなかったのか」
「………」

サッと本を自分の方に引き寄せ開き読み始めたと思ったら、謎のスリザリンボーイはちらりと私の白紙の羊皮紙を見て鼻で笑う…わけでもなく淡々と言った。いや誰だよあんた。チベスナの私を置いてスリザリンボーイはペラペラとページをめくると、とあるページを開き机に置いた。

「……ここだ、書け」
「は?」
「アインソフオウルについてのレポートだろう」
「……エッなんで数占い学のこと知ってんの?」
「この本は数占い学の本だが?」
「レポート…」
「俺とあなたは同じ授業をとっている。……まさか、気づいていなかったのか?」

信じられないと目で言われへらりと笑う。まさか気づいてると思ってたのか…?数占い学私のいる振替授業人少ないじゃん。尚更認識忘れるよ仲良い子いないもん。モンキー扱いされない代わりにあの教室ほぼ個人空気じゃん。覚えているわけがなかろー。私はそういう人間です。
スリザリンボーイは軽くため息を吐くと、目を細めて私に手を差し出した。何?シェイクハンド?手を重ねると、正解だったらしい。大昔教科書で見たことあるようなお手本通りの握手を交わす。

「セオドール・ノットだ」
「ナマエ・ミョウジ。……なーんか聞いたことある名前だなあ」
「ドラコと共に行動することが多い」

その言葉を聞きまじまじとノットくんを見つめる。嫌そうにされた。マルフォイくんと一緒に…いた……か……?もはや失礼極まりない認識である。素直にごめん。

「それで──ミョウジ、お前はなんなんだ?」
「は?」

ノットくんの謎の疑問にぱかりと間抜けに口を開ける。は?

「はっきり言おう、あなたの数字はおかしいんだ」
「なんばー」
「俺たちは同学年だ、つまり総じて同い年のはずだ。だというのに先日の授業であなたのセカンドナンバーの数は多すぎる」

せかんどなんばー。ぎくりと肩を揺らした。数占い学は数秘術を扱う、んで数秘術は生年月日から計算して数字を出して四柱推命みたいなことをするわけだ。そんでもって、生まれてから今日までの数字を使う。勿論年齢も含む。……つまり、ノットくんの言っていることは、そういうことだ。この前の授業でそれをやって、私が素直に私の生年月日で書き、かつ私の年齢を書いたからだよう。いやでも提出しないやつだったからいいかと思って。特に信じてないけど占いってちょっと気にはなるじゃん?じゃん?誰が数字を見てると思うんだよ。そもそもなんで人の見てるんだよ。はれんち。

「あなたが年齢を偽っているとは思えない、ホグワーツにいる時点で明白だ。ならばあなたが勘違いをしている、もしくは単に数字で遊んでいただけの可能性がある。しかしあなたは遊ぶほど数占い学を好きなようには見えない、ならば残っているのはあなたが自分の生年月日を勘違いしている説だ」
「Oh……」
「だがあなたはホグワーツに入学している、生年月日が違えば当然年齢が違うわけだから、とても入学を承諾する精神では無いはずだ。俺ならば確実に拒否をする、だがあなたは仮に年下の輪の中で生活をしている。それは、明らかに歪んでいる精神だ。わかるか?」
「ぜんっぜんわかんねえ」
「馬鹿め」
「今disられたのはわかった」

いきなりの悪口やめてぇ!?怒涛の早口の語りだと思ったらめっちゃシンプルにdisるじゃん…びっくりした…。ノットくんは眉間を揉んでどう説明するか…とぶつぶつ悩んでいる。どうにかしてわからせたいらしい。いいよさっきのdisみたいにシンプルに言ってくれよ。

「ふむ……あなたは精神疾患者か?」
「シンプルすぎる」
「はあ?」
「……精神疾患者って、いや、違うと思うよ…?」
「だが聖マンゴに入院しただろう」

いや知りませんけど。マルフォイくん曰くしたんだろうけど。あいにく私はその聖マンゴーライフの記憶がない。でも今それ言ったら確実に精神疾患者(予想)が精神疾患者(確定)になる気配を察知、私のターン、知らんふり発動!へらっと笑う。

「ミョウジ、あなたは知らないようだから言っておくが、聖マンゴのヤヌスシッキー棟の癒者があなたのことを話していた」
「なんだって?」
「どういう意図の質問だ?」

どういう意図?え?意図?なんだってって意図をなんていうの?なんと申されたか?

「…………だめだIQの差を感じる」
「そのようだな。質問を変えよう、あなたは今ヤヌスシッキー棟について聞いたのか?それとも、癒者の話したことについてか?」
「アー、それらプラス癒者って何」
「そこからか」

ノットくんは眉間をもみもみした。なんかすいません。これだからマグルは……って聞こえてんぞオラァ。

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