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「はあぁ……あったか……あったか……」
「……ナマエ、ちょっと」
「うんうんハリーの手もぬくいね……」

でもそれ以上にミニドラゴン超あったけえ……。このクッソ寒い冬のお供はミニドラゴンで決定。

ハリーがこの前のドラゴンの課題で連れて帰ってきたミニミニドラゴンたんは、見た目はともかくとして可愛かった。見た目はともかくとして、サイズもちっちゃいし、動きがいちいち可愛い子だった。見た目はともかくとして。たまにぼんっと火を噴くもののそれ以外はとてもいい子で、こうして大人しく私のローブの中に収まってくれる。体温といい、少し火を吐きかけた温風レベルの呼吸といい、寒がる私を温めてくれるナイスな生き物だ。頼むから火は吐かないで欲しいけど。私のローブと皮膚が悲惨なことになる。まあ、そのあたりの危険を抜けばペットカイロって感じ?あ、今のは愛護団体に怒られる?ドラゴンって動物愛護の対象に入んの?
私はこのミニドラゴン略してゴンを気に入ってるし、多分ゴンも私を気に入ってくれている。はず。じゃないとほぼ毎日私のローブの中にいてくれないと思うの。お陰で今年の冬は例年よりも大分楽だ。ローブの中からハリーに引っ張り出され握られた手も、ゴンのお陰で大分温かい。

「……ねえ、ナマエ」
「なんだいロンよ」
「…………いや、なんでもない」
「ロン?」
「なんでもないよ」

妙に歯切れの悪いロンに、ハリーも不思議そうに見るが、ロンはふいと目をそらしてしまう。なんだいなんだい。よくわからないまま、占い学が始まった。

「ミスミョウジはいかが?」
「え?なんすか?」
「死ですわ、星を見て予測いたしましょう。そうですわね、あたくしから見ましたらあなたは──空から落ちますわ」
「アウチ」

今日もシビレル先生は絶好調だ。空から落ちるって。どんな死に方。えっもしかしてどっかの塔から突き落とされる?他殺死体になっちゃう?やだ事件じゃん。まあ、と声を上げるパーバティの純粋なことといったら。見ろ、ロンなんて普通に笑ってるぞ。
ペンをくるくる回してボトッと落ちて、それを拾ってまた回してを繰り返していると横からハリーにペンを取り上げられてしまった。

「大丈夫だよ、僕が箒でキャッチするから」
「いや、身体をバラバラにされてるかもしれん」
「その調子ですわミスミョウジ」
「えっ今の良いの?えー、じゃあそうだな……首締められて池に落ちたところ鯨に跳ね飛ばされて吹っ飛んで、その反動で四肢がもげる!どうだ!」

ファイナルアンサー!と期待して言えば、シビレル先生は真顔で「あなたにはやはり才がございませんのね」と首を振った。えっダメ?今のはダメ?ちょっとアイディアぶっ飛びすぎた?要素詰め込みすぎ?死因の加減難しいな……。やっぱ鯛に当たったあたりが妥当なのか?ってそれどこの将軍様やねーん。セルフ!ツッコミ!

「あたくし、こう思いますの」

シビレル先生はちょっと不機嫌な声で言う。不機嫌なのは私のせいかな。シビレル先生の判定がまだよくわかってないんだごめんね。そしてシビレル先生は意味深にハリーをチラ見して語り始めた。曰く、昨日の夜ここで編み物しながら水晶玉を見たら何かに見つめられた(要約)らしい。なにそれ怖い。ホラーじゃん。ドキドキしながら正体を聞くと、シビレル先生は逆に「なんだとお思い?」と聞いてきた。

「でっかい眼鏡をかけた醜い年寄りのコウモリ?」
「スケキヨ?」

「死ですわ」

違った。質量さえないものだった。ところでそのコウモリなんとなく可愛いね、と思いを込めてロンを見ると、ロンは「スケキヨってなんだよ」と聞いてきた。日本では有名な某映画に出てくるマスコットキャラクター(仮)です。隣でハリーは顔を背け、手で口を隠しながら笑っている。
そしてもはやシビレル先生=死みたいなところあるよね。本日5回目くらいの死に、パーバティとラベンダーはハッと口に手を当てた。君たちマジ純粋。

「それはますます身近にやってきますわ」

シビレル先生はハリーをガン見して言う。そうですか、と言いあくびするハリーくんに、シビレル先生は「用心なさい」と言った。まあ、そうだな、この前のドラゴンといいちょっと今年は怖いよねえ。ハリーを見ると、ハリーは私の視線に気づきムッとした顔をした。

「僕が死ぬと思ってるの?」
「思ってるっていうか……心配は、してる」
「大丈夫だよ。むしろ僕はナマエが死なないか心配だよ」

ハリーは羽根ペンを私に返して、ニヤリと笑った。僕が死ぬわけないだろ、と自信に満ち溢れた顔だった。いやいや私が死ぬ方がありえな、───いや、やめよう。なんでもない。





チキチキ!ハーミーを探して三千里!というわけで私たちは今どこにいるでしょーかっ!?
謎のテンションで本棚の間をすいすいと見て回る。夕食の席にいなかったハーミーを探そうとハリーとロンと3人で、大体ここにいるだろう予想順位トップに君臨する図書館へ来ています。でもいない。ハーミーがいなきゃ変身術のレポートわかんないよぉ……ふえぇ……。「いた?」「いない」一番奥の閲覧禁止の本棚の近くまで来てもいない。代わりにいたのはクラムくんだ。謎にサインを貰おうかひそひそするハリーとロンを横目にしていると、クラムくんと目が合った。小さく手招きされる。もう一度目を見た。……わぁ、子犬のような目ダァ。仕方ねえな、とハリーとロンを先に帰らせ、チラチラと人を確認してから近くによる。ここはバレている、棚を変えるぞ、しゃがめしゃがめーっ。あんまり人が寄り付かない魔法史の本棚の間に潜みこしょこしょと話をする。

「で、どうしたんだいクラムくん」
「クリスマスパーティーにハームオゥンニニーを誘いたい」
「まって」

え?なんて?

「クリスマスパーティーにハームオゥンニニーを誘いたい」
「…………ハームオゥンニニーって、」
「ミスグレンジャー」
「……名前呼び?」
「彼女がそうしてくれって」
「まって」

本日2度目の待ったをかける。いつの間に?今までまあ、話しかけられる度にほんのちょっとずつの相談は受けたけど、え?なにそれ初耳ィ。報告されてないよ。マジ?そんなに仲良くなったの?っていうかクリスマスパーティーって何?誘うの?ディナーのお席の話?

「違う、танц」
「たんつ」
「ダンス、ダンスパーティーだ。……君も出るだろう?」

……うぅん?なんだそれは。初耳。今までそんなことしたことないぞ。あれ、もしかして隠されてただけ?ハブられてた?やだ傷つく。

「……知らないのか?」
「超初耳」
「まだ知らされていないんだな。それでヴぉくはハームオゥンニニーをダンスパーティーに誘いたいんだが、」
「うん待とうか!?」

説明無しかよ。ヘイヘイクラムくん君そういうとこだぜ。面倒くさそうなクラムくんに頼み渋々説明してもらうと、今年はクリスマスにパーティーがあるらしい。いつものじゃなくて、ダンスの、男女が楽しく談笑してキャッキャウフフオホホの社交的なやつ。出欠の有無は問わないけど、代表選手は絶対。ダムストランクは全員出るらしい。なんでも代表選手は一番最初に皆から見られながら踊るんだとか。ワァオ何そのシンデレラみたいなやつ。ガラスの靴誰に履かせればいい?クラムくん?サイズある?

「君も行くだろう?」
「……いや行かない」
「何故だ?」
「ドレス無いからねえ」
「君ヴぁ制服でもいいと思う」
「クラムくんそれどういう意味?」

以前私のジャージ姿を見て形容しがたい微妙な顔をしてくれたクラムくんだ。はははと笑って流す。まあ、話は大体わかった。つまりハーミーをパートナーにして皆の前で踊りたいし共に楽しい夜を過ごしたいってわけだ。独占欲強いねクラムくん。
しかし残念なことに私にダンスパーティーを誘うなんて高貴な経験が無いのでなんとも言えない。シャルウィーダンスでいいんじゃないの、と言うとマジかコイツという目で見られた。わかんないんだって。

「ちなみに聞くけど、ハーミーにはなんて話しかけたの?」
「……ヴぉんを、聞いたんだ」
「ヴぉん。……本?」

クラムくんはハーミーをそっとチラ見するというストーカーチックな状況を打破すべく、初めにハーミーが熱心に読んでる本を聞いたらしい。そのときハーミーが読んでいたのは魔法史だったらしく、聡明さを褒めたんだとか。でもハーミーはつんとした反応だったから落ち込んだらしい。そこで私に相談をした。

「……相談した?」
「しただろう。おヴぉえてないのか?君のアドヴァイス通りにしたんだ。3回目のとき、ハームオゥンニニーはヴぉくをロマンチックだと」
「照れてるとこ悪いけどほぼ記憶にない。え?した?された?私なんて答えた ?」
「愛の詩集でインテリ責め」
「…………覚えてないけど確実に私だ……」

マジか。私そんなこと言ったっけか。いつの相談だろう。……そういや確かにハーミーに印象を与えたい的な相談された記憶はある、けど、も……なんつうアドヴァイスをしてるんだ私は。そして他校の代表選手になんつうことを言わせてるんだ。クラムくん3回も愛の詩集の場所ハーミーに聞いたの?マジ?
これはファンに怒られる。クラムくん溺愛おっさんにも叱られる。しまった参った。申し訳なさで顔を覆いながらも、私の様子なぞ気にせずクラムくんは続ける。

「そのときハームオゥンニニーヴぁ、ヴぉくが思っていた人とヴぁ違うと言っていた。……ヴぉくはなんと思われていたんだ?」
「ヴゥンリスニング力ェ……えっと、なんかすごい選手」
「そうか」

満更でもない顔すんなよ。私危険スポーツのすごい選手だって聞いたけど、いまいちよく分からないんだよねえ。っていうかクラムくんが乗ったら箒折れそうじゃない?むしろ箒振り回した方が強そうだよね。ホッケー的な。
話は戻るが、まあそんな感じでハーミーとちょくちょく話せるようになったらしい。彼女ヴぁ美しく聡明ですヴぁらしい女性だ、だそうで。いやほんとマジでそれ。全面的に同意。私も友達を褒められてニヨニヨだ。

「それで、アドヴァイスをくれないか?」
「あ、パーリィーのこと?うぬん…そうだなあ……」

異性を誘うのヴぁ初めてだ、というクラムくんに、私もそうだよと返す。そんな経験ないない。ダンスパーティーなんで優雅なもの一般庶民が知るわけないだろ!というわけで。

「マルフォイくんに聞くべき」
「マルヴォイ?ドラコのことか?」
「そうそう、マルフォイくんならお貴族様だし、そういうスマートで優雅なの知ってそう。慣れてそう。ちなみにクラムくんなんて誘おうと考えてたの?」
「君がヴぉんを読む姿はとても素敵だが、ドレスを纏う姿も美しいと思う、と伝えようと思っていた」
「ウッワァ……」

鳥肌が立った。なんつうロマンティックボーイなんだクラムくん。実は愛の詩集普通に好きだな?遠まわしに見たいってか?君がドレスを纏い僕の隣で微笑む姿を見たいってか?ウッワァ……。

「彼女ヴぁ、ヴぉくと行ってくれるだろうか」
「えっと…うん…大丈夫じゃないかな……」

ハーミーはロマンチックと気障……いや、歯の浮くような甘ったるい台詞が好きだったりするからこれは行けるんじゃないでしょうか。誘うというのヴぁ少しヴぁずかしいな、と照れるクラムくんに、いや照れるとこそこじゃないだろとツッコんだ。

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