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こそこそと薬草学の前に話しているハリーとハーミーを遠目に見ながら、グリフィンドールの流れに乗って温室に向かう。今日もあのきしょい奴をやるのかなー、嫌だなー。とぼとぼと1人歩くのは、久々だと案外寂しい。

ホグズミードの日から、なんだかハブられている。それは確実に。なんてったってハリー自身から「しばらく近づかないで!」と言われてしまった。ハーミーと2人がいいらしい。もしかすると、私はクラムくんに嘘をついてしまったかもしれない。とりあえず言われた直後にクラムくんには両手を合わせて謝りのポーズを送った。なんだそのポーズ、と言いたげな彼が真似して返してきて、その隣のマルフォイくんが不思議そうに真似てたのが面白かった。おまいらかわいいかよ。謝ったはずが1個乗って帰ってきてしまった。等価交換もクソもないね!

「……あれ、ハリーは?」
「さあ」
「仕方ないから僕が組んであげようか?モンキー」
「シンプルにムカちゅく」

背が伸びたロンに偉そうに上から物を言われ、ムッと下から見る。しかし今やトリオの中でも一番背の高いロンには私の視線など効果は微塵もないようだ!なんたる無力!ハーミーにはあんなに弱いくせに!成長は喜ばしいがちょっと切ないものですね。
しばらくハリーの番犬ならぬ番猿をしていた身、私と組んでくれるのはグリフィンドールのみになってしまった現状。教室内は見事にグリフィンドールとハッフルパフに分かれている。そして溢れかけている私をグループ入れてくれるというのは大変魅力的なお誘いだ。というわけで、私はへらっとディゴリー氏の爽やかスマイルを意識して「よろしく!」と言った。なんだかんだ誘ってくれるんだからロンはやっぱりいい子だ。

「気持ち悪いからやめた方がいいよその顔」
「んだとゴラ」

修正、いい子に変わりはないが、ムカつく要素は多い模様。
ロンと、ディーン、シェーマスとゲラゲラ心底どうでもいい話で笑いながら簡単な腫れ草のプランターの手入れをした後、よくわからん腫れ草の生態の授業を受ける。未だに来ないハリーを心配してちらちらと後方を見るハーミーを後ろから見守る。隣は珍しいことにロンだ。トリオと一緒にいてもロンと隣は久々なので新鮮な気分。

「さっき密集地帯どこって言ってた?」
「熱帯は大体生えてるらしい」
「密集地帯を聞いてるんだけど」
「トッゲトゲしいな。あー…3大密集地帯はアマゾン、オーストラリアー、アー………あともう1個は忘れた」
「ちゃんと書いとけよ」
「ロンに言われたくないしぃ。有名どころの熱帯雨林書いとけば当たるでしょ」

「そこ!うるさいですよ、真面目にお聞きなさい!グリフィンドール2点減点!」
「迷惑かけるなよモンキー」
「お 前 も 入 っ て ん だ よ 」

2点減点されたと言うのに何1人で知らん顔してんだオラァ!と机の下で足を踏んでやる。あれは1点と1点だろうがァ!ヴッと呻き声がした。ハハッざまあ。ニヤニヤしながら前を見ると、ハーミーが心底呆れましたという表情でこちらを見ていた。ハハッ……ハハッ……。小さく手を振ると少し笑ってくれたので良しとする。いや全然良しじゃないんだけど。無論、その後ハーミーは5点くらい加点されてました。ハーミー様様女神様。
授業が進み羊皮紙の半分が埋まったところでハリーが遅れて急いでやっと来た。スプラウト先生に謝り、すぐにハーミーとこそこそ話し始める。その様子を見ながら、ロンがこそりと話しかけてきた。

「ナマエ、何かしたの」
「え?何が?」
「僕みたいにナマエが喧嘩するとは思えないけど」
「私も喧嘩した覚えはないんだけどさあ」

可能性があるとしたら、ディゴリー氏の件くらいだ。丁度ホグズミードの日だし。校内には少なからず残留組もいたわけだし、見られていた可能性は普通にある。でもちょっと話した程度でハリーの怒りを……買うか?買うのか?買ってしまうのか?でも私の会話の自由にも怒られてちゃ堪らないってもんだ。恋人じゃないんだから。恋人でもそんな束縛は良くないぞ、携帯チェックなんて私は絶対お断り派だ。アドレス帳の人物を1から説明したくないし、メールをいちいち見られるのも嫌です。

「ロンも恋人をあんまり束縛しちゃダメだよ」
「…………なんの話してるんだ?まさか、ハリーと、」
「ところでハーミーとハリーってデキると思う?可能性あると思う?」
「は?いや、無いと、思うけど……」
「だっよねえ……うーむ、上手くいくといいんだけどなあ」
「──まさか、ナマエが……!?」

このとき、私はロンの中に出来た盛大な勘違いに気づくことなく、心の中でクラムくんを応援していたのであった──。




「ナマエ、ちょっと来て」
「おん?」

薬草学が終わり、さあご飯だーと体を伸ばすとサッと手を取られた。なにやら神妙な顔をしたハリーにだ。「お昼は?」「後にして」そんな殺生な。私のお腹の虫さんが悲鳴をあげた。しかしハリーの表情は真剣で、何やらまた重要問題を抱えていそうな雰囲気。あとお願い、と付け加えられたらお姉さんは折れるしかない。身長的にきついはずなのにそれを考慮してわざわざ座ってからの上目遣いを発動された。そんなことされちゃったら負けるしかないのだ、そうだろうナマエ太郎。そうなのだ!へけっ、と頷き机の上の荷物を取る。なんてちょろいんだ私よ……。

「何その顔」
「…………いや、別に、……大丈夫?」
「何が?」
「……ハ、ハリーと、色々…………」

言いにくそうに言葉に詰まるロンにはてなマークを浮かべ、大丈夫じゃね?と適当に言う。ハリーだしなんかあってもまた乗り越えるさ。多分。なにか酷いことだったら流石に言うよ、と言うと、ロンは違うそうじゃないと言いたげな顔で頷いた。顔に出すぎィ!なんてわかりやすいボーイなんだ。しかし私にはロンが何を気にしているのかは全くわからないのである。
手を引かれるままハリーについて行くと、空き教室についた。中には机に教科書を積み上げたハーミーがいる。……これは嫌な予感。まるで図書館。嫌な予感。

「アー、私お昼ご飯を、」
「ナマエ、呼び寄せ呪文を手伝って欲しいんだ」
「ウーゥゥウウゥ……だと思ったぁ……」

苦い顔になる。またあの理論詰めか。もうやんなっちゃう。頭が痛くなっちゃう。そんな思いを込めてハリーを見るが、ハリーの目はとても綺麗だった。少し潤んだ瞳は真っ直ぐ私を見つめている。ウワァ…目の色きれい……。

「ナマエ……」
「コラコラそんな可愛い声を出すんじゃありません男の子でしょ!わーったよ、わかりやしたよ、やりますよ。……でもお昼は食べたい」
「だめよ、時間が無いの」

本のページを速読していくハーミーにピシャリと跳ね除けられてしまった。つらい。空腹が。しかし従うしか無さそう。私は諦めてローブを脱ぎ杖を握った。

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