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はあーと息を吐いたら白い息。室内なのに白い息とはどういうことか。今年も床暖は入らないホグワーツのようで、寒中水泳を平気でするクラムくんの気が知れない。そもそもあの湖で泳ぐの怖くね?クラーケンとかいうバケモンがいるとかいないとか前誰か言ってたよ。怖すぎるわ。
ハーミーがホグズミードで買ってきてくれた羽根ペンに新しいインクをつけてレポートの続きを書く。7の意味とか言われてもラッキーセブン☆しか出てこない。ぺらぺらと適当に本のページを捲ると、死についてという項目が出てきて反射的に本を閉じた。敏感なお年頃なのよやめてちょうだいオホホ。

「数占い学?」

聞こえてきた声は頭上から、と思いきや正面からだった。いつの間に目の前に座っていたのは噂をすればなディゴリー氏だった。ついこの前君のことハリー話してたよ。
ディゴリー氏は難しそうな本を片手にやあ、と爽やかに挨拶してくれた。ヨッ色男!

「来年はいもり試験があるから気が抜けなくて。ナマエも来年はふくろう試験だろう?」
「いもり?ふくろう?なんすかそれ」
「……知らないの?」

驚き桃の木山椒の木な顔をしたディゴリー氏が詳しく説明してくれた。ふんふん。

「は?試験?いつもやってるのとは違うやつ?嘘でしょ?」
「残念ながら本当さ。特に君たちが来年受けるふくろう試験は将来に響くから慎重にね」
「むりみざわ」
「むりみざわ…?」

不思議そうな顔でオウム返ししてくれたディゴリー氏キャッあざとい。いやそれどころではない。なんだそれ初耳。これ以上試験が……!?無理無理落第決定じゃん。

「ジニーちゃんと同学年かー。それも楽しそうだなあ」
「諦めが早いよナマエ!ダメだって頑張って!」

遠い目をした私に驚愕し声を上げたディゴリー氏に図書館の守番マダムの鋭い声が飛んだ!クリティカルヒット!ほぼ私のせいだね。うん。素直にごめん。試験のことは一旦置いておこう……。

「で、ディゴリー氏本題は?」
「…え?」
「なんか話に来たんじゃないんすか?そんな会っただけでお喋りする仲じゃないじゃん私ら?」
「それは……はは、そうだね。正直に言うよ、ハリーのことを聞きに来たんだ。もちろんナマエと仲良くなる目的もあったけどね」
「フゥ〜言うことなすこと色男〜」

茶化さないでくれる!?と照れ顔の小声。はっはっは。……んでハリーのことってなんだ?首を傾げた。

「卵はどう?」
「たまご?……あ、卵ね。あの叫ぶやつ。今夜お風呂行くって言ってましたよ」
「本当かい?それはよかった……。ハリーにはあまり信じられてないと思っていたから」
「いやーあれは信じてるけど素直に出せない反抗期ってやつですよ。可愛いってことで許してあげてね」
「ふっ、ふふ、もちろん」

謎にツボったらしいディゴリー氏の笑いが収まるのを待つ。泣くほど笑うことか?沸点謎だわ。イケメンにも不思議なところはあるんだな。でもイケメンだからそこも魅力に写っちゃう!なんてずるいんだ……。ディゴリー氏はごめんごめんと言いながら涙を拭う。その手にお洒落なアクセがあるのを見てうわぁー似合うなーと思った、のだが。

「……う゛ん!?」
「えっ?」
「図書館ではお静かに!」
「すみません!いや、ディゴリー氏、その腕の……」

めちゃめちゃ見覚えのあるブレスレット、っていうか、めちゃめちゃ知ってるやつっていうか、いやあれはブレスレットっていうよりも、

「これ?チョウがくれたんだ。ミサンガっていうんだって」

それ作ったのワイやねん……。お守り代わりにもらった?へ、へェー、そうなんだ…。彼ピ思いの彼女でいいね。そんな照れんなって色男。チョウかわいいよねわかる。話しながら私の目は半目だ。

「ちなみにディゴリー氏は何をお願いしたんすか?」
「お願い?」
「そ。ミサンガって自然に切れると願いが叶うっていうじゃん」
「そうなの?知らなかった。そうだな…お願い……」
「まー言うて占い学よりも当たるかわからんやつだし、元気で試合終わりますようにとか」
「優勝しますようにじゃなくて?」
「優勝しなかったときそれのせいにすんの?ダサいわハッフルパフプリンス」
「ふふ、ナマエの言う通りだね。うーん、そうだなあ、五体満足無事に終わりますように、かな」

そうだな…初っ端ドラゴンだったもんな……。いつかの土下座を芋づる式に思い出してゲンナリしてしまった。私の土下座写真何故かハリー持ってるんだよな……。不思議そうな顔をするディゴリー氏に頑張れ!と言ったところで、そろそろキレたマダムに「勉強しないなら出ていきなさい!」と追い出されてしまった。寒いのに元気絶好調だなマダム。
そういや、私普通に来年もホグワーツにいること受け入れてんな?バカバカ。そこは諦めちゃダメだ、来年こそ帰るんだよオラァ。




……なあんて、まあ、その、帰ろうとは思ってるし帰る気満々だしそろそろ家賃滞納どころではない恐ろしいことになっていると思っていてね、でもね、昨日ディゴリー氏から教わったふくろう試験とかいうのも気になるっちゃ気になるじゃん?全部落ちたら本気でやばそうじゃん?私は真面目に授業を受けることしか出来ないんだけどさ…。少し鬱々としながらフリットウィック先生の真似っ子をして杖を振る。と、横でフリットウィック先生が飛んで行った。

「ひいい」
「うわあーー!!」

パニック状態である。あっちなみに私じゃないんですよこれは。大泣きしながらフリットウィック先生を追いかけて行ったのは我が友李徴ならぬネビルだ。フリットウィック先生は見事に反対側の壁まで到達した。ホォームランッッ!見事なホームランです!思わず拍手した手はディーンによってそっと下ろされた。

「ナマエ、出来た?」
「見る?このふぁさっ」

ひょこっと隣のテーブルから不安そうに来たのは我が友、多分友、でも同室者って印象の方が強いサーシャだ。ふっふっふ見たまえ私の魔法を!ちちんぷいぷい!杖を振るとクッションがふぁさって柔らかく飛んでぺちっと落ちた。私はサーシャにドヤ顔した。

「全然追い払えねえ!」
「堂々と言うことじゃないけれど、少し安心したわ。私より出来ない人がいて」
「言ってること最低だけどその通り底辺にはナマエ・ミョウジがいるよ…」

無理だよ出来ねーってー。これでふくろうとやらも落ちちゃうんだろうな…クッションと同じように。だれうま。しょうもないことで少し気分が浮上した。

「そもそも追い払うって難しくない?チンピラじゃないんだから」
「苦手なものを想像したら?虫とか」
「こっち蚊いないっぽいからイマイチ難しい」
「蝿は?」
「蝿がいるのってどこ?ゴミ捨て場とか?わざわざ行くのめんどくせー」

またクッションをふぁさっふぁさっとさせる作業に戻り、少し考えてみたがよくよく思うとホグワーツで蝿も全然見てない気がする。今は冬だから蜘蛛もいるかどうか……その辺で凍ってそうだよな。ひえ。想像しただけで寒い。

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