20

がたんごとん、がたんごとん、線路は続くよどこまでも。廊下の隅っこでトランクに腰掛け、冷たい風を浴びる。一応トランクの中を見ると、やはり私が中高生のときに来ていた服(大体ジャージ。色は変わった)と、去年ど忘れしてトランクの中に眠っていたミサンガキットとサバイバルグッズ。あれ、ミサンガは使ったんだっけ?そして、またおもちゃのメダルみたいな硬貨。

「ワァオ、デジャヴ!」

こんなデジャヴあってたまるか。



おはよう、と声をかけられ、ハッとした。気づくと城の中、大広間に向かって歩いている途中。またこれか。足が勝手に動くことの気持ち悪さよ。少しもつれて転びそうになった。

「わあっ、大丈夫?」
「……ん、ネビル。おはよう。大丈夫だよ」

ネビルの背は伸びていて、前以上に私が見上げる形になる。切ない。周りを見ると、やはり大体の生徒が一回り、までは行かなくとも成長していた。私もしかして変わってない?

大広間に入ると、変わらない天井のお空と、ダンブルドア校長のおひげ。ああ、戻ってきたのかあ、とやっと実感した。やはりなんだか疲れてしまう。あーご飯食べよー!…と、食事の前に新入生らしい。既に寮ごとに席についている私はぼうっと新入生たちを見ていた。ちっちゃい。私はちっちゃいわけじゃない。日本人がちっちゃいんです。

「ナマエ!あれが俺達の妹さ!」
「……どれ?」
「そこにいるだろ!赤毛の!」
「あー……」

私の気の抜けた返事にちゃんと見ろ!とバシバシ背を叩いてくるシスコン双子にため息が出た。はいはいそっくり。名前は?アンだっけ?

「違うわ、ジニーよ。てきとうなこと言わないのナマエ」
「ジニーか……おしい」
「どこも惜しくない!」

ぷりぷりと怒るウィーズリー(兄)を放置して、ハーミーに宿題について聞かれたのであーうん、とてきとうに誤魔化す。あんまり思い出したくない。私にとっては、去年自体がついさっきまでの出来事なんだ。

ウィーズリーの末っ子だというジニーちゃんは無事グリフィンドール寮に選ばれ、嬉しそうに兄たちとハグをしていた。ハーミーも知り合いらしく、ハグをかわす。ジニーちゃんはなんだか緊張してる様子で私に自己紹介をした。

「ナマエ、でしょう?あの、ハリーたちからたくさん話を聞いたの」
「……ハリー?」
「ええ。フレッドたちもナマエの話をよくするし、ロンからの手紙にも書かれていたことがあるのよ」

マジかよ、とウィーズリーを見ると、ニヤニヤと笑いながら2人してこちらを見ていたし、パーシーさんには謎に頷かれた。

「何言われたかわからないけど、まあ、よろしく」
「大丈夫よ、みんなナマエのこといい人って言ってたもの!」
「あまり信じない方がいいよ」

私そんないい人じゃないし、とへらりと笑うと、そんなことないわ!とハーミーから否定が入った。私いつの間にこんなモテてたの?いつもならここでロンが真っ先に私のいい人説を否定してきそうなところだが、というところで気がついた。

「そういやロンとハリーは?」
「あ……それが、わからないの」

一転して不安そうな顔になったハーミーに首を傾げる。わからないとは。曰く列車でも会わなかったらしく、本当にわからないんだとか。ウィーズリー兄弟は一緒に駅まで行ったのにいつの間にかいなくなっていたらしい。置いてきたんかお前ら……。
そんな話をしていると食事が始まり、もりもりと食べた。空腹感無かったはずだが、ごちそうを目の前にすると一気にお腹が空いてしまった。もちろん味は濃い。でも美味しかった。食事が終わると、今度は眠気がやってくる。こう身体の疲労だとか、空腹だとか睡魔だとかが来て、初めて生きてる、と感じた気がした。あの部屋は、異常だ。
うつらうつらとして周りの話を聞いていなかった私だが、ぐっすり寝た翌日、ハーミーは1人ではなくいつもの3人でいたのでなんか察した。あと生徒がざわざわしてたから多分なんかあったんだと思う。よくわかってはいない。
しかしそれも朝食で解消された。ロンに、なにやら大声で叫ぶ手紙が来た。ボイスレコーダー付きの手紙とかすごいな、と思ったんだけど、それは何やら違うらしい。やっぱり魔法グッズ。すごーい魔法便利ー!ちなみに大声は凄まじかった。あれお母さんらしいよ、男の子ばっかりのお母さんってパワフルだね。

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