18

見事グリフィンドール寮の優勝となり、グリフィンドール生は随分ご機嫌で荷造りをする。わーわーと楽しそうに談話室から聞こえた声に、息を吐いた。ベッドを整えて荷物を肩にかける。

「もう行くの?早くない?」
「んー、私のとろさだと人たくさんだと電車乗れなさそう」
「ああ、確かに」

サーシャに頷かれてはは、と苦笑。納得される私。ええ毎日階段に置いていかれてますよ。階段は動くもんじゃないよ。エスカレーター設置はよ。
トランクをほぼ引きずりながらホグワーツを1人先に出ようと玄関へ向かう途中、ダンブルドア校長に会った。久々のおひげに挨拶をすると、校長は杖を振り私の荷物を軽くしてくれた。わあ魔法便利。

「ナマエ、この1年どうだったかね?」
「色々ありました」
「ああ、その通りじゃ。わしは、こう考えている。……君にとって、ホグワーツが家になればいい、と」

は、と息が肺から漏れた。手が少し震える。目をそらして深呼吸をした。

「校長先生、それは……それはいいアイディアだと思います。でも、ありえない」

今、自分でどんな顔をしているのかわからない。

「……ナマエ、気をつけるのじゃよ」
「ええ、失礼します」





時間が早く無人のホームに1人、真っ赤な列車を前に佇む。
私、ここ来るときも変だったんだ。思い出して、やはり笑ってしまう。私すごい経験してるなあ。
帰れるかと言われると、わからない。誘拐犯がどうしたいのかとか、そもそも私は何故ここに来たのかとか、考え出したら止まらない、止まるわけがない。魔法だって?魔法使いの学校?私この1年一体何してたんだ?
私の家は木造二階建てもしくは黒と赤で統一されたデザインの、少し散らかったあの部屋で。

軽くなったトランクを持つ手が震える。肩にかけたバッグの重さがよくわからない。足元を見ると、サイズの小さい靴。
はあ、と息を吐いて、深く吸う。乾燥した風が喉を通り、喉がピリッと痛んだ。
列車の入口に、足を乗せる。



視界が回転した。

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