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ハリーが世界危険スポーツ堂々の1位の箒に乗って飛ぶアレで新記録という快挙を成し遂げたらしい数日後、ヒーローだった彼は大事件を起こしどん底に落ちた。

「チッ、ハリーのクソ野郎……!」
「どうすればいいの……このままだと最下位よ!」
「そんなカリカリすんなって。ほれ牛乳飲め牛乳」

カルシウムは大事だぞーと頭を抱えるシェーマスとラベンダーの2人に牛乳を渡すと、シェーマスは「呑気にしてる場合かよ!」と怒鳴りラベンダーは「Thank you」と素直に飲んだ。私ラベンダーのこと好きだよ。

「なんかアツい青春の点稼ぎとかはよく分かんないけどさ、誰だってミスはあるじゃん」
「50点!50点だぞ!?ロンとハーマイオニーも合わせて150点だ!」
「そんぐらいダーツとかならちゃっちゃか稼げるぜ」
「たかがゲームとはちがう!」

おい馬鹿野郎ダーツを馬鹿にするんじゃないぞ。あれはれっきとしたスポー、スポーツ……?でもないような気がするけど、プロもいるくらいだし、結構すごいんだぞ。コーンスープを飲み干し、シェーマスの空になった器にまた牛乳をそそぐ。なんだかんだ綺麗に飲むこいつもなかなかいい奴。
シェーマスがソーセージにフォークを乱暴に突き刺し食べたところで、丁度話題の的であるハリーたちが大広間に来た。グリフィンドール寮以外からも野次が飛び、3人は全く居心地が悪そうで。

「お、おはよう」
「おはよー」
「……俺、先行ってっから」
「じゃあねナマエ」

何故私に報告したのかよくわからないが、こちらに来て挨拶をしたハリーたちをガン無視してそそくさと2人はいなくなる。先行ってっからも何も私たち大広間で食事はすれど一緒に行動なんてしないだろ。危険スポーツを抜いて。ラベンダーに関してはハーミーの同室相手くらいの距離感だ。めんどくさいなあ。

「……ここ、いい?」
「今まで許可なんか取らなかったでしょうに。いいよいいよ、ほらお座り」

かなり遠慮して言うハリー少年にぽんぽんと隣の椅子を叩くとハリーは素直にそこに座り、向かいにハーミーとロンが座る。ハーミーは目元を真っ赤にしてるし、ロンは目の下に隈が出来ているし、ハリーは顔色が悪い。まだ10歳ちょっと過ぎにこんな大バッシング受けるとかハードモードすぎるよね。流石に大人げないよね上級生。私は自分を棚に上げていくスタイルです。
もぐもぐとスクランブルエッグをレーズンパンに挟んだサンドイッチもどきのようなものを食べていると、ハーミーがぐすっと鼻を鳴らした。

「ナマエは、変わらないのね」
「失礼な、ちゃんと成長してるよ」
「そうじゃないわ。……私たちを責めないもの」

ぽりぽりと頬をかいてそうだなあ、と口ごもる。だってねえ。

「私普段から減点されてるしね、あんま寮にこだわりないし」

へらっと笑って言うと、ハーミーはナマエらしいわ、と少し笑った。しかし対照的に怒ったのはロン。

「どうしてそんなことが言えるんだよ!スリザリンに負けるかもしれないんだぞ!」
「……んなこといってもなあ。まだ学期末までには時間あるし、ガンガン点稼げばいい話じゃないの?」

単純にさあ、もう終わりだとか考えが早すぎない?まあカリカリすんなよ。ロンにも牛乳をそそぎ渡す。ロンは、私の言葉にぽかんと口を開けた。まーぬーけーづーらー。

「私が言うのもなんですけどね、授業でよく発言したり当てられて正解したり魔法がうまくいったりすればぽんぽん点は入るんだし、せっかく増えたものが減ったとか考えたって、そこまで思わずともすぐ増えるもんじゃないの。毎日授業はあるし、生徒数は多い。塵も積もれば山となるって言うじゃないの。もちろん日々減点もされるから一進一退かもしれないけどさあ、例えばの話、毎日7時間の授業でそれぞれ2点とか微々たるものでも貰ったとしてよ?7×2で1日14点、残りの日数があー、3ヶ月?とかそこらへんで、そうすると日曜抜いても1人300点くらいは行くわけだ。でもグリフィンドールの1年生は何人もいるし、まあ単純に全員が頑張ったとして余裕で1000点は越える。ロンたち3人が1人1日14点頑張って稼いだとしても余裕だし、運がいいことに学年一の才女であり点泥棒でもあるハーミーがいる。150点なんて微々たるもんじゃね?」

デザートにフルーツポンチを食べながらぺらぺらと話していると、ロンもハーミーも目を見開き酷く驚く。なんだその顔は。私だって計算くらいは出来る。隣を見てもハリーは目を見開き口をぽかんと開けてこちらを見るのみだ。とりあえず開いている口にライ麦パンを突っ込む。

「もがっ……あにするの……。けほ、ぼく、すごいびっくりした、ナマエってすごい!」
「今更気づいたのか」
「ナマエ、あなた最高よ!大好き!」
「僕、君のことちょっぴり見直した……」
「照れる」

私が突っ込んだパンをもぐもぐ食べながら、ハリーに謎に手を握られたので握り返す。嬉しそうに笑って、ハリーはパンを咀嚼する。えっなにこれ?とりあえず空いてる方の手でフルーツポンチを完食した。

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