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「いやいやいやいや待て待て、無理」
「何がだよ!ほら、行くぞ!」
「は!?誰君!」
「シェーマスだよ!この前も一緒に見ただろ!?なんでディーンは覚えてて俺は覚えてないんだ!?」
「あ……いやそれは……ごめん……」

ディーンとシェーマスの2人に両腕をずるずると引きずられながら廊下で必死に抵抗する。何故かって?

「早くしないと試合始まっちまうだろ!」
「なら早く行けよ!私置いていけよ!」
「だめだ!クィディッチの魅力がわからないままなんて絶対だめだ!」
「お前らその熱血他に向けろよ!ノーセンキュー!」

ぎゃーぎゃー言いながらも、既に私より体格のいい2人に勝てるわけなく、引きずられたまま会場へ連れていかれてしまう。人が多いしモンキーだの野次はうるさいしほんと帰りたい。しかし2人は離してくれず、私は席についてしまった。あまりの熱気にげんなりとする。あのね、危険スポーツなるべく見たくないの。そう言ったところで「どこが危険なんだ!あんな面白いスポーツはない!」と返されるオチが見えて更にげんなり。感覚麻痺してるよおまいら……。

「始まるぞ」
「ハリー今回はどんな最高のプレイするんだろうな!」

ワクワクしているところ悪いが私はさっさと部屋に戻りたいわけで。なるべく危険を見ないように選手達のいる地上を見つつ、グリフィンドール寮らしい実況者の熱い実況を耳に、芝生青いなーと適当なことを考えていると、開始早々にわあああと大歓声があがり、隣からも興奮の声が聞こえた。スニッチを見つけたんだ!流石だぜハリー!そんな声に、ふと顔を上げてしまった。

「ぎゃあああぶつかる!ねえ今ぶつかった!?ハリー無事!?」
「ハッハリィィイイイ!お前最高だ!」
「見たかハッフルパフめ!!!」
「聞けよ!」

新記録だあああ、という実況の叫び声。客席の大歓声。私やっぱ魔法界向いてないわ。あー、ビーフシチュー食べたい。




夕食の席で興奮冷めやらぬ生徒達がわちゃわちゃと言っていることを聞き流しながらひたすらチキンカレーとナンを食べる。ビーフシチューは無かった。片側からはお祝いだと器いっぱいにオレンジジュースをそそがれ、もう片方は山盛りのローストビーフにかぶりつき、お前ら食事は普段通りじゃないかと無粋なツッコミをオレンジジュースと共に飲み込んで耐えた。途中ハリーが戻ってきたが、何故か彼はいつもの2人を連れてすたすたと大広間を出ていく。疲れすぎて食欲ないことってあるよね。きっとあんな速さで飛びながら反射神経集中なんてエネルギーがすごいんだろう。私の精神的疲労もすごいぞ。
デザートのレーズンパイを少しだけ食べて、1人大広間から抜け寮に帰ろうとした、途中。

「よおモンキー」

ばしゃりと耳元で音がして、上半身が一気に冷たくなった。ぽたぽたと静かな廊下に滴下音が響く。久々だなこの感じ。
声のした方を向くと、そこにはどこぞで見たことのある金髪がいた。大きな身体に見下ろされ、嫌味にまぬけと鼻で笑われる。

「……ミスターフ、フリル?こんばんは」
「フリントだ!」
「あでっ」

どうやら彼、わざわざバケツから私に水をかけたらしい。パコンっと投げられた青いバケツが頭にあたる。まさかのプラスチック製。マジかよ魔法界。

「相変わらず気に食わねえ、クソ女め」
「んな事言われても」
「うるせえ」

なんだこの理不尽。思わず目がチベスナになるが、それさえも気に食わないらしく平手で頭を叩かれた。しかしあまり痛くはない。おろ?実は非力だったりする?それか手加減してくれてる?どっちにしろびっくりだわ。ええ、そのナリとその性格でぇ?

「クソッ、ハリーポッターの野郎……調子乗ってんじゃねえぞ」
「ハリーに言ってくださいよ……」
「うるせえっつってんだろ!」

だから理不尽。痛みは少ないがこれ以上馬鹿になったらどうするんだ。叩かれる度にやっと覚えた薬の材料を忘れていく気がする。

「ふん、いい顔じゃねえか。モンキーにふさわしいぜ」
「はあ」
「いいか、グリフィンドールはスリザリンに負けるんだ。せいぜい今のうちに喜んでおくんだな」
「はあ」

今日もいいたいことを言い満足したらしいミスターフリ、フリル……フリント!は、満足げに頷くと杖をひと振りして私の濡れた部分を乾かすとすたすたと行ってしまった。えっなにあの人何しに来たの?乾かしてくれんのに濡らしたの?なんなの?バケツは持って帰ってはくれなかったのでとりあえず廊下の端っこに置いておいた。

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