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この前まで使っていた空き教室にクソ爆弾が投げ込まれているのを目の前で目撃して、変身学の教室をマクゴナガル先生が貸してくれてマジでよかったと心底思った。もしまだあそこ使ってたら最っっっ悪だった、かぼちゃジュース頭から被る方がマシ。第3の課題が近づくにつれて、最近また嫌がらせが増えてる気がする。多分、私やハーミーのこともあるんだと思うけど、どちらにせよ胸糞悪い話だ。ほっとけよって感じだが世間様はそうもいかないし。ため息を吐いてルートを変えようと踵を翻す。と、すぐにその足は止まった。

「マクゴナガル先生」
「ミスミョウジ、ごきげんよう。おひとりですか?」
「これから教室に行こうかと」
「そうですか。進捗は?」

あー、えーとですね、うーん。キリッとしたマクゴナガル先生に、肩を竦め少し笑みを浮かべた。誤魔化しともいう。が、何も言わずとも先生は察したように頷き、期待しておきましょうとだけ言った。何か勘違いされてる気もするしそうじゃない気もするけど、うむ、まあホグワーツには2人も選手がいるし、ディゴリー氏が本命みたいなところもあるだろうからいいのだ。ハリーたちはそうは思ってないだろうけど、私からしたら無事に終わればそれでいい。私のエゴを押し付けるようで悪い気はしてる。でも、たかが学校行事程度で友達に死なれたくない。そういうものは飲み込んで、私はマクゴナガル先生に頷き返した。しかし、ここでマクゴナガル先生に会えたのは丁度よかった。ここからは私の話だ。

「ところでマクゴナガル先生、質問があるんですけど」
「なんでしょう」

”ミョウジ教授の孫は恥知らずだ。かつてのミョウジ教授がお聞きになればあなたを強く叱りつけるだろう。ミョウジ教授の名を汚さないでくれ、かのお方は姿を消されなければ魔法界を代表する素晴らしい魔女になられていたのだから、あなたはその孫としてその背を追わなければならない。
俗の塊のような感情は捨て、魔法に身を費やしたまえ ”


「私の祖母を、ご存知ですか?」

マクゴナガル先生の表情から柔らかさが消えた。固く口を閉じるように変わっていく。廊下の一角が、これから夏に向かっているというのに冬のように冷たい気がして背筋が冷える。多分、今の私はうまく笑えていない。否定してくれとそう思っている。でも、現実はそうはいかない。

「初めて、あなたから家族のことを聞かれましたね。いつ聞かれるか、私どもは冷や冷やしていました」

ごくり、生唾を飲んだ。

「質問の答えはYesです。ミョウジ先生は、私の恩師なのですから」

震えを押えるため頬の内側をぎゅっと噛んだ。血の味がして気が紛れる。恩師、ミョウジ先生、本当にいたと。家族の質問、は、本当に、私の祖母と?

「私の口から多くを語ることは出来ません。ですが、私の変身学の始まりはミョウジ先生でした」
「……そう、ですか。ありがとうございます」

無理やり口角を上げて笑みを作る。へったくそなんだろうなと思うけど、真顔よりマシだろう。マクゴナガル先生の表情は固いままだったけど、目元の笑みは伝わった。
さて、ここへ来て新たな謎浮上だ。いい加減にしろミョウジナマエ、私は一体何を秘めてるっていうんだ。




「なに?それ」
「妄想激しいオタクの手紙」

くらった妨害呪文で全身がのろまになったから解けるまで休憩ーと椅子に座り、ローブのポケットの中から引っ張り出して何度も読んだ手紙を見つめる。 私が孫?じゃあ例の祖母か、もしくは祖父か?全く知らんなあ。教師だったなんて聞いたことない。私の記憶では祖母は10代で結婚してずっと専業主婦だぞ。また嫌な予感がするなあ。見られないように手紙をしまう。まだ人においそれと話せる段階じゃない。
くにゃくにゃの足でふらふらと近づいてきたハリーにあんよが上手、あんよが上手ーと手を叩いて怒られた。ところでくらげ足の呪いとか誰が考えたんだ、確実にアホの所業。

「あれ見ろよ」

窓際のロンが私たちを呼んだ。その指は校庭を差している。窓の外を見下ろすと、マルフォイくんといつものお付2人がいた。3人でなにやら楽しそうにしている。

「トランシーバーで話してるみたいだな」
「ははーんそういうお年頃ね。わかるわかる」
「ナマエ、あなたねえ……はあ。そんなはずないわ」

ホグワーツでは通じない、というのはわかっているけど、そういうのに憧れて真似したりはするでしょ。厨二病まではいかずとも、誰とて無線ごっことかするでしょ。マルフォイくんもやっぱり子供なんだなあと見ていてニコニコになる。

「……もういいよ、盾の呪文もう一度やろう」
「う、うん?あのハリー、いた、いたた」

何故か横からハリーに頬を抓られた。

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