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ハリーたちはなにやら忙しそうだし、こっちはこっちで切羽詰まってきている。諦めたらそこで試合終了の精神に則って真面目に図書館で時間関連の魔法を探しているとハリーが来て「第三の課題の練習、一緒にやって」とぶすくれながら問答無用でドナドナされた。拒否権は最初からないらしい。連れられるまま空き教室に入ると、なんでも失神の呪文とやらを練習しているらしい。私もとりあえず杖を出して振ってみた。すてゅーぴーふぁい。何も起こらず。ですよねえ。お陰で専ら実験台役に抜擢された。それが数日前のことよ。
なんでも第三の課題はトラップ迷路らしい。こっわ。だからたくさん魔法を覚えてなくちゃ危ない、と。……実験台になるのはいいんだけども、本当にこれ大丈夫なやつ?後遺症とかない?友達のためだと言われたらしょうがないんだけど。ま、魔法界だしなんとかなるか。難しく考えてはいけない案件っていうかハリーの命がかかってるからどうしようもない。フリットウィック先生が貸してくれた呪文学の教室でお腹を押さえながら大の字になる。ウップ……お昼に食べたやつ全部出るかと思った……。

「ナマエ、大丈夫?ごめん、ごめんね」
「あ、ああああハリー大丈夫だから、ちょっとお尻とかが痛いだけだから、大丈夫だから、そんなめそめそしないで心が痛い」
「クッションの上に倒れないからよ、ちゃんと後ろに倒れてちょうだい」
「いくら私でも失神時に方向決めるのは難易度高いかな……」

せっせとクッションを並べてくれるハーミーに苦笑して、そのうちのひとつを抱きしめる。私と同じように失神していたロンをハーミーが起こした。

「いってて……。ちょっとミセスノリスを攫ってこいよ。それかドビーだ、あいつなら君のためになんでもすると思うよ。文句を言ってるわけじゃなくて、ちょっと痛いんだよ……ナマエもそう思うだろ?」
「大却下」
「どうしてだ!?」
「痛いの痛いの飛んでけー!はい飛んでったー!」

ハーミーが眦をあげて、ロンにも「クッションの上に倒れなさいよ!」と言ってロンからは「じゃあ君がやれよ!」と、軽い睨み合い。僕のせいで、ってな感じでめそるハリーの髪をわしゃわしゃと撫でて、魔法たくさん使えるようになったねと話を変えた。ハーミーが頷く。コツは掴めてるから、今夜は妨害の呪文とやらをやることにしたらしい。私もリストを横から覗いて、チェックの増えてきたそれにうんうんと頷いた。そこでチャイムが鳴る。抱きしめていたクッションを含めて教室中のクッションを戸棚に戻し、ハーミーは数占い学へ、私たちは占い学へ向かった。今日のお香の匂いは薄目だといいなーなんて絶対叶わぬ希望を抱きながら梯子を登った先で、案の定むわっと熱気と匂いが襲ってくる。くーキッツ。そそくさと窓辺に移動して、バレない程度に窓を開けるハリーを隠した。
ふんふん、火星の支配力が、ふんふん、へーえ。全然わかんねえ。ぺらぺらと教科書を捲りながら説明を聞いていると、とあるページにヘドウィグと書いてあるものがあった。小声で2人に教えて、3人で盗み見する。へえー小惑星なんだ。「僕昔の魔法使いからとったんだ…知らなかった」えへへと笑うハリーが可愛くてキャッキャしていると、パッと明かりが消えて、シビレル先生が出したガラスのドームの中の天体模型に目がいく。これが本当に天体を映していて実際に動いているって言うんだから魔法界っていうのは本当に不思議だ。火星と海王星の角度が美しい位置にとか言われてもよくわからないが、確かに綺麗だなあと見ていると肩にとさりと頭が乗った。おろ。ハリーが私の肩に頭を預けている。

「……ねた?」
「みたいだ」

ロンが顔を覗き込んで確認した。しーとお互いに合図して、きゅっと黙る。ハリーもなにやらまた忙しそうだし、ロンはその事情を知っているから結構心配そうだ。ロンもたくさん考えて気を使ってるんだなあ。つい手が伸びて赤毛をくしゃくしゃに撫でてしまい、怒られるかと思ったけどロンは照れくさそうにするだけだった。愛いやつめ。
後ろからの若干の風を感じながら天体を見続ける。

「ですから凶星と凶星が近づくというのは不幸の訪いを強く示しており──」

唐突に、ビクンッ、とハリーの身体が軽く跳ねた。

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