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バサバサとふくろうの大量の羽音にもう慣れてしまった。降り注ぐ羽からお皿を守るのもプロレベル、そういう大会あったら確実に優勝してる。皿…お前のことは俺が守る!正確には中の料理。お残しは許しまへんで!
そして振ってくる手紙を追い払おうと杖を出してそのままハリーの手に私の杖が渡るというのももはや恒例。追い払い呪文いつまで経っても上達しないじゃん!口を尖らせると、ハーミーから「練習のために多くの犠牲を出さないで」と言われてしまった。破壊モンキーと化してしまったらしい。キングコングナマエと呼んでくれ。ちょっと自惚れすぎ?

「ヘドウィグ!」

茶色のふくろうに紛れて、ハリーのペットちゃんであるヘドちゃんが飛んできた。頭上を1回くるりと回ってからゆっくりと着地する。ハリーからクラッカーの欠片をもらってもそもそ食べている姿は可愛いが……ちょっと太ってない?ちなみに何故私がヘドちゃんと呼んでいるか、おわかりだね?発音が出来ないからです。ヘ、ヘドウィーギュ。本人ならぬ本ふくろうからつつかれまくった結果ヘドちゃん呼びが許可されたのは大体2年生の頃である。

「パーシーに手紙を出してもらってたんだ。随分長く待ったよ、おかえりヘドウィグ」
「……あれ?これ、手紙じゃないんじゃ」
「ええっ」

てっきりヘドちゃんが持って帰ってきたのは手紙の返信だと思ってたらしいが、3人ともえっと声を上げた。どうしたんじゃ。手元を覗くと、可愛らしいラッピングがあった。甘い香りがする。

「イースターエッグだ」
「ヘドウィグ……手紙は……?」
「おや。その手紙、あんまり知られたくない類のやつ?」
「え?うーん……そう、かも」
「定番のやり方だね」

はてなマークを浮かべる3人にまあ見てろってと胸を張り、手を伸ばして一番大きな卵にナイフを突き立てた。ガキンッと音がして、思ったより頑丈なチョコレートだぜ…とジンジンする手に遠い目。チョコレートの持っていい硬度ではない。これだから魔法界は。ロンが「ええっ!?」と驚いたからシーッと動作をして静める。案の定、ビーンゴ!中から手紙が出てきた。あと何かしらの魔法がかかって無傷な手紙と一緒にヌガーも出てきて、ナイフを持つ私の手についた。

「……これ、あの、歯がくっついて取れなくなるヌガー?」
「貸して」
「……ハアッ!?」

手紙を盗まれないトラップなら優秀すぎる。ナイフから手が離れないんじゃねーの、某接着剤アルファより密着強度強いんじゃないの、このまま動かしたら私の皮膚が紙のようにビリィッといくんじゃないの。ガクブルして恐る恐るハリーを向いて聞くと、なななんとハリーは私の手についたヌガーを舐めた。ハーミーが唖然としてロンが超驚いて私が固まった。……ナニ、シテルンダイ、キミ。

「糖蜜ヌガーだけど、普通のやつみたい。美味しいよ」
「…………さいですか」

そっとチョコレートからナイフを引き抜いて机の上に置き、両手を開いて顔の横に上げた。おまわりさんここです。不可抗力なんです。決して意図した訳では無いっていうか私も予想外だったんです。上げた手はハーミーにそっと降ろされた。同情の強い瞳にぐぬぅと奥歯を噛みしめる。びっっくりした……。
ハリーは何事も無かったかのようにチョコレートをつまみ、美味しいと言った。流石英雄、メンタルが常人のそれじゃない。見ろ、ロンが宇宙猫のようになってるじゃないか。宇宙猫の友人を放置して、ハリーは他にも入っているイースターエッグを見てニコニコする。

「みんなの分もあるよ。名前が書いてある。これはロン、こっちがハーマイオニー……と……ナマエ……」
「小さいわ……」

ハリーの語尾がだんだん弱くなっていく。渡された卵はハリーとロンに比べると6分の2くらいだった。約分しろって。3分の1な。……それ以下かも。ハーミーは肩を落とした。ロンも気まずそうにして、自分のチョコエッグを細かく割った。ロンなりの気遣いかもしれない、優しい子だね。私はというと、まさかいただけるとは思ってなかったからむしろびっくりだ。気を遣わせてしまったらしい、申し訳ない。

「あなたのお母さん、もしかして週間魔女読んでる?ロン?」
「ああ。ふぉーりのふぇーじみ、んぐ、見るのにね」
「なんて???」

いい子だけど糖蜜ヌガー口に詰め込み過ぎだろ。早く溶かせと熱い紅茶をカップに入れて渡すと、ロンは苦くなるから嫌だと首を振って、ゆっくりゆっくり口いっぱいのヌガーを飲み込んだ。ハリーが食べきれないから、とくれたチョコレートの欠片をつまみながら待つ。ようやく飲み込んだロンが言った。ロンのお母さんは週間魔女の料理のページ欠かさず見ているらしい。なるほど。どうりで主婦層の文句が多いわけだ、魔法界にもゴシップ雑誌を読んではネタに愚痴を吐き出す主婦はいるらしい。ハーミーは超悲しそうにシュンとした。それを見て、ハリーが慌てて手紙を開けた。しかし、チラッチラッと私を見てくる。わかってるよ、さっきあんまり知られたくない類だって言ってたでしょ。ハリーにへらっと笑いかけて頷き、自分の分のイースターエッグを鞄に入れると私は席を立った。図書館寄るから先行ってんねー。

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