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ガリガリと羽根ペンで文字を書く音だけが今、図書館の一角を支配していた。隣には私と同じく切羽詰まった顔のロンそしてネビル、シェーマス、ディーン。円卓の騎士(笑)の表情は硬い。

「普通休暇入ってから増加するもんじゃね?なんで?宿題だけフライング?」
「黙ってやれナマエ」
「安心しろ俺らも同じこと思ってるから」

ふざけんなって話だよ、なんでほぼ全部の教科の宿題が増えてんのよ。選択授業が少ない私たちでさえこれなんだから全教科とってるハーミーは化け物だな。そうボヤくと、ロンが心底ゲンナリした顔をした。想像するだけでしんどい、わかる。ちなみになんでこの面子にハリーがいないかって?意外とハリーはコツコツやり、要領がいいタイプだからだ。どうも、要領悪く溜めやすい5人です。一見悪口だけど揃って自他ともに認める事実なのが悲しい。

「でも来年のふくろうはもっと大変なんだって……」

ポツリとネビルが言った。ロンが即座にその話はするなと言う。シェーマスは苦い顔をして、ディーンは青くなった。私もげぇっと口から嫌な声を出す。肩を落としたネビルが、絶対に無理だよ……とネガティブ全開モード。しかしながら、私たちに大丈夫だ!と言えるものは何も無い。よってシーンと静かになった。素直でよろしいかな……。

「これ、随分と真面目にやっているようですね、結構結構」
「フリットウィック先生…」

ひょいっと軽快に飛んできた声がホホホと笑った。一斉に目を向けると、フリットウィック先生が小声で私たちのテーブルの前に。

「すみませんが、ミスミョウジ、少し来てくれますか」
「……私、すか?」
「ええ、ええ」

鷹揚に頷かれて、はてなマークを浮かべながら席を立った。レポートは書きかけだが、まあ、しゃーない。少し心配そうなロンの肩を叩いてフリットウィック先生について行くと、移動した階段の先にキラキラしたローブのダンブルドア先生がいた。こんにちはーと挨拶をすると手招きをされて、フリットウィック先生はではこれで、といなくなってしまう。……えっ、置いてかれた?ダンブルドア先生はそのまま私の背中を押すように手を添えて、促されるまま戸惑うままについていくと案の定校長室だった。ようガーゴイル、久しぶりだな。

「ゴキブリゴソゴソ豆板!」
「えっなにそれ」

ぴょいんっとガーゴイルが飛び退く。あ、合言葉かよ……嫌な名詞が聞こえちまったぜ……。少し立った鳥肌をさすって校長室に大人しく入ると、目の前にポンッと出てきたお菓子がゴキブリゴソゴソ豆板らしい。チョコだね。チョコだからこそゴキブリだね。ナイスチョイスとクソ喰らえが5:5くらいで私の中でせめぎ合っている。食うか食わぬか。でもどうよ、口の中で動いたら最悪だよ、蛙チョコの非ではない地獄だよ。でもまだ動いてないんだよなこれ……いやいや動く動かない基準で決めちゃダメだって、魔法界でだって動いてるお菓子の方が少ないよ。多分。……でも出されたお菓子だしな、案外美味しいかもしれない。まあ、最悪吐き出してもダンブルドア先生は許してくれそう、だ、と、信じてるわ。よし。結局一口だけ頑張って飲み込んだ。もぐっ…もぐっ…と警戒してゆっくり咀嚼する。味は……うむ……蛙チョコとあんまり変わらないかな……?見た目のダメージはかなりあったけど味は大して……むしろ拍子抜けっていうか……。なんとも言えない気持ちで紅茶を飲む。こっちは美味しくってやっぱりなんとも言えなかった。口の中に入れるまでがクライマックス。

「ムーディ教授の、君への期待の大きさは聞いておる。しかし甘言に惑わされては、人の知恵も無駄というものじゃ。ナマエ、君はよくよく考えねばならん。君が学んでいるのは攻撃する魔法ではなく、守る魔法のはずじゃて」
「……えっと……ハイ」

やっべ話全然聞いてなかった。え、ええ?なんすか?魔法の話?いやあまだ全然出来なくって。下手に話すと墓穴を掘ってしまう。ナマエは秘技愛想笑いを繰り出した!愛想笑いで返されてしまった!ターン終了!引き分けってことでいいかな。そんでもってムーディ教授といえば、だ。

「ダンブルドア先生、変な質問なんですけど私が必要としてるものってなんだと思います?」
「必要としているもの、のう……」
「点数とか才能とかセンスとか頭脳とか、まあ色々考えてはみたんですけどイマイチわからなくって」
「そうじゃのう……少なくとも、わしは今ナマエに必要なものは休息じゃと思っておるよ」
「……休息?」

おや?それはどういうことだ?ダンブルドア先生はパチンといつものウインクをしてから言った。ははーんなるほど、本題はこれだったか。
ミョウジナマエ、イースター休暇も聖マンゴ行き決定です。ジャガジャン。

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