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”〜ヒーローを巡る女たちの戦い〜
 愛の語りが繰り広げられた試合から一夜明け、男女の関係に亀裂が走った。図書館で争っていたのは、ハーマイオニー・グレンジャーを宝に選んだヒーロー。そしてその相手は、グレンジャーの友人であるナマエ・ミョウジであった。ヒーロー、クラムの友人は言う、「クラムはしょっちゅう図書館へ行ってグレンジャーと会っていたんだが、それ以前からミョウジとも会っていた。可哀想に、誰だって勘違いするもんさ」
 言い争いに負け、置いていかれたミョウジは涙を零し、恋に敗れた姿は普段のモンキーとはかけ離れた女の姿であった。”


「ブッフゥーーー!!」
「うわっきたな!」
「いや、んふっ、ふふ、ふ、あっはっはっは!なんだこれクソウケる!誰だよ友人!あーーっはっは!」

ハーミーが凄い顔をして預言者新聞を読み上げるものだからなんだと聞いていれば、朝から腹を抱えて笑ってしまった。口に牛乳含んだタイミングではやめてよ。なんだこの茶番。あまりに笑いすぎてヒイヒイ言っていると、ロンが「ナマエが恋……?」と大層怪訝な顔をした。失礼だぞチミ。ウケる。今ロンがスープ零しただけで笑える。

「えっなにこれ修羅場?私とハーミーがクラムくんを巡ってキャットファイト?ンフッフフフだめだツボってしまった、あっははははは!」
「ちょっとナマエは黙ってて」
「ごめっんっふふハリーごめんて」

久々に真顔で言われてしまった。謝ったけど笑いは収まらないし、そっとハーミーに口を抑えられた。えっまってなんで誰も笑ってないの?私だけ?もしやYMK?空気読めないモンキー。なんだこの空気。

「あっていうかハーミー、違うからね本当に違うからね、なんなら私からハーミーを取ろうとしてたのはクラムくんのほうだよ!?そもそもなんですかこの証言とやらは、誰が勘違いするって?ありえないね」
「ナマエ……!」

ふふんと胸を張り首を振って記事を否定する。隣から手が伸びてきて、ぎゅっと私の手をハリーが握った。にっこりと微笑まれ、私もにっこりと微笑み返す。ハリーそんなにライバル意識強かったのか。私はハリーの味方だから安心してくれよな!の意味を込めて頷くと、ハリーは軽く頬を桃色にした。血色良いな、可愛いねハリー。可愛いものを見るとついニコニコしてしまう。

「勘違いさせるようなことする方が悪いだろ、どうでもいいことで騒いでホグワーツに嫉妬してるんだ」
「ロン!」
「ナマエがクラムを好きになることなんてないよ!ダンブルドアが強いってことと同じくらい当たり前だろ!」
「え?ロンどしたん?わ、私のために争わないで〜〜〜んっふふふはははは」
「ナマエ」
「ウィッス」

何やらまた言い争いがはじまってしまったようで、収めるためにジョークを言えばブーメランになってしまった。そろそろ腹筋吊りそう。ダメ笑い本当に止まらない。




今朝新聞を握りしめた私が笑いすぎて軽い過呼吸を起こし少し騒ぎになっていたからか、私の件にわざわざ触れてくる輩はあまりいなかった。スリザリンの子にはからかわれたけどいつものことだし。今日はホグズミードデイだったから、ということもありそう。もちろんお留守番組の私は図書館に行こうとして、昨日の今日だからと思い留まった。出禁は困るんじゃ。
適当に暇つぶしをしながらみんなの帰りを待ち、やっと来た夕ご飯のお時間、はらへりー!とグリフィンドールの席へ行くとトリオは既に帰還していた。しかし、何故かハリーの頬がぷっくり膨らんでいる。またなんかあったんか。席につくなり、ハリーが私を向き言う。

「どうして教えてくれなかったの?一緒に行きたくなかった?」
「………なんの話?」
「ホグズミードに決まってるでしょう」
「…………うんん?」

一緒に行く、ってどういうことだ?私は今日ずっとお留守番してたけど……?近くにあったグラタンを咀嚼しながらそう言うと、ロンが「白々しい奴だな」と言った。ちょまてよ。どういうこっちゃ。ハーミーでさえ「言ってくれればよかったのに」と少し不機嫌な様子で。おかしいなあ。終始首を傾げながら食事を終えると、3人は話があるからとそそくさいなくなり、私はとぼとぼと1人部屋へ帰った。
部屋にはもちろんアリアとサーシャもいて、今日は2人でホグズミードに行ったらしくあそこの店がどうのこうのと話していた。それを横目に、ホグズミードに連れていってもらったらしくすやすやのサーシュを軽く撫でて、自分のベッドの上に飛び乗るとお尻の下にぐしゃりと、マットレスとはまた違う感触が。布団をめくると、隠すようにお菓子の袋が5袋くらいあった。

「……あれ?なんだこれ」
「覚えてないの?」
「あなたすごい夢中で買い込んでいたのに」
「……買い込んでた?」

サーシャとアリアの言葉に、自然と眉間に皺が寄る。どういうことだ、ハリーの言っていたことと重なる。でもそうすると、私がホグズミードに行ったことになるじゃん。……ドッペルゲンガー?まさかな。いくら魔法界でも……いやでもファンタジーだからな……。いっちょカマかけてみっか!

「……ねえ、私、2人と一緒に行ったっけ?」

探るように問いかける。そんなはずはない、と思っている反面、このお菓子が証拠になってしまう。私の記憶違い?アホ言えあれから外に行く行為は私の中で控えめどころかほぼ一切避けていることだぞ。しかしこのままでは裁判長異議あり!だめです証拠不十分で棄却します。アウチ、の流れだ。そして、2人は首を振った。

「いいえ?店で見たのよ、そういえばあなた、珍しく一人だったわね。いつもの3人はどうしたの?」
「………………アー、や、野暮用、で」

空いている袋から飴玉が出てきて、ほいっと口に放り込む。勝手に変わっていく味に顔を顰め、ベッドに潜り込んだ。
……おかしい、おかしいぞこれは。でもお菓子はおいしい。いやダジャレじゃない。コロコロと口の中で飴玉を転がして考える。今日私が城から出ていないことは間違いない。だって出た覚えないし。朝大広間で大笑いして、そのあとハリーたちを見送って、そんで、そんで────そういや私、今日何してたっけ?

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