06

火急の案件、トロール襲来、校内には丸腰女子(多分)2人。
アッこれ詰みそうやばそう。アンドそんな私の予感は見事的中しそう。だんだん近付いてくる悪臭に顔を歪めた。
早くあの子も避難させねば。別にトロールに殺されたくはないけど、子供が殺されるのを見ていたくはない。囮くらいなら出来るっしょ、と少し楽観的に考えて泣き声の聞こえた扉を叩く。

「ひっく、だれ、?」
「お取り込み中のところ申し訳ない、今ちょっとトロールが来てまして、早急に避難が必要です。出てきてくれませんか?」
「あ、なたは?だれ?」
「グリフィンドールの1年のミョウジです、あの自己紹介してる場合ではなくマジでやばいん」
「ッ、あなたもそうやって私を馬鹿にするのね!!」

バアンと勢いよく扉を開けて出てきた子は、昼間見たグレンジャーちゃんだった。が、その目は赤く充血していて、目元も何度もこすったらしく赤く腫れている。グレンジャーちゃんの誤解も解いて慰めたいところだが今はそれどころじゃない、繰り返す、それどころじゃない。

「私、あなたはいい人だと思ったのに!」
「ありがとう、でも本当にそれところじゃないんだ、マジでトロールが、」
「そうやって私をからかって笑うつもりなんでしょう!? ホグワーツにそんな低級な魔法生物が侵入できるはず」

ないじゃない。そう続くはずのグレンジャーちゃんの言葉は、大きな音に飲み込まれてしまう。
うわ、とトイレの出入り口を見れば、バッキバキに崩壊した扉があるわ、その上にはもちろんのことながらトロールさんがいる。やあ、元気そうだね!

「………え?」

呆然としているグレンジャーちゃんはどうやら足が動かないらしい。所謂、腰抜かした状態。ははっこれはマジでやべえ。
というかなんでここが分かった?と疑問に思ったとき、片手のローブが滑り落ちた。かぼちゃジュースを大量に吸収したローブ。かぼちゃの匂いがする。

「お ま え か !!」

ちくしょうこんなモン置いてくるんだった!!後悔先立たず、しかし不屈の精神で私はこれを逆手に取り装備する。とりあえずここを離れればよし!

「グレンジャーちゃん、道を作るから動けそうなら早く寮へ走って。いいね?」
「だめよ!!」

キメ顔でキリッと言った私の言葉が即座に否定されてしまう。アイエエ?ナンデ?

「あなたが危ないわ!」
「でもここでグレンジャーちゃんが行ってくれないと私も動けない。なんせ、まだ地理が頭に入ってなくてね」

こういう事を言うと更にモンキーと言われるわけだが、まあそこは置いておく。
私の言葉にグレンジャーちゃんは顔を歪め、私はそれを肯定と見なしてトロールの方へ行こうとする。
しかし、ココでまさかの人物登場である。

「ハーマイオニー!!」

英雄ヒーローは遅れてやってくるのがお約束だわな。でもタイミングが悪い、すこぶる悪い。
私はゲンナリとし、どうしようかとまた思考回路の中で逃げ道を探そうとするもそうは問屋が下ろさない。入ってきた眼鏡の子にトロールが棍棒を当てようとし、私は弾丸で眼鏡くんを庇った。

「ナマエ!!」
「がっ……ってぇ、」

息を呑む声が近くで聞こえた、というも当たり前、私は眼鏡くんを抱き込む体制だ。グレンジャーちゃんの悲鳴は後にして、血が出ているだろう腕の感覚がほぼ無い。これ折れたな。

「グオオオオ」
「うるせえくそったれ!!」

追撃を下そうとするトロールの頭に、ジャンプしてローブをかけ視界を強奪する。まぬけな、とよく言われるトロールはトロールらしくそれだけで混乱し、唸り声をあげながら動き回った。二次災害も酷い。ごめんトイレさん。

「あ、あ、」
「グレンジャーちゃん、この子とはよ逃げ」
「ハリー!グレンジャー!!」

逃げて、と最後まで言えずまたヒーローのご登場だ。子供はさっさと逃げんかい!!冒険はいいけど危機感を持て!!
ちっ、と舌打ちを一つ。出口は既に2人がいるから逆に危険だ。私は急いでグレンジャーちゃんの元へ行こうとすると、残念なことにトロールは復活してしまった。はい詰んだ。

「グガアアアア」

激おこなトロールさんは棍棒を振り回し、次々とトイレの中を混沌化させていく。
古いトイレのドアは木造だった。

「あがっ、」

飛んできた割れた切っ先が、私の背中にずぶりと刺さる。

あつい、と思ったが、痛みも、きゃあああ、と聞こえたグレンジャーちゃんの悲鳴もよくわからない。感覚だけが抜け落ちたみたいだった。グレンジャーちゃんに棍棒が当たりそうだったのでとりあえず武器、武器、と重い腰にあった杖を抜いて投げつける。先がマイルドにとんがっている杖は投げればそこそこの武器らしい。棍棒、回避だぜ。やったねたえちゃん。

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