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検査が終わるや否やスネイプ先生はすたすたといなくなってしまい、ダンブルドア先生は私を寮まで送ってくれた。もう夜なので寝間着のままでいいやと出ようとすると、流石に冷えるとローブを貸してくれた。でもかなり大きくてダボダボだったから返した。でかいのは重いね。あとマダムには冷え防止らしい飲み物を貰った。ハーブティーらしく、よく眠れるとかなんとか。

寮に戻ると、時間も時間だったので談話室には誰もいなかったが、火がついていた。なんでだ、と隣にいたはずのダンブルドア先生を見るも、先生は忽然と姿を消していた。ワアオ。どうなってんの、超怖い。夜にやめてください。謎の心霊現象怖い。鳥肌が立った腕をさすりながら部屋に戻ろうとすると、突然横からふっ飛ばされた。

「へぶらっ!」
「ナマエ……ッ!」
「…………ハリ、ぐえっ」

運良くソファに着地したらしくふんわりとした奴にハリーと2人ゴロゴロ転がった。目が合うとハリーに首元に抱きつかれる。しかしごめんハリー、しまってるしまってる、苦しい。とんとんと手を叩きアピールするが、ハリーには伝わっていないらしく、私がうごうごと動き調整するしかなかった。うーん子供あるある。おんぶも必ず首締められるよね。
抱きつきながら何を言うわけでもなく無言のハリーを緩く抱き締め返す。暖炉に火があったのはハリーがいたからかー、と納得したが、うん……ハリーこんな時間まで何してたん?と疑問が。何してたん?

「きみを、まってた……!」
「…………えっこんな時間まで!?」
「だ、だって、帰ってこないんじゃないかって、パーティーにもいなかったのに……!」
「今日起きたばっかだからなあ……」

しかしそんなに待ってたとは。おまいは忠犬か。忠犬ハリ公か。好意なのでありがたいはありがたいが、そんな夜ふかしも良くないぞと頬をつつくと、ハリーは私の手を握った。握り返してやると、ハリーの顔が泣きそうに歪んだ。

「僕、君のおかげでバジリスクに勝てたんだ。君がバジリスクの片目を潰してくれていたから、ナマエが味方してるんだから勝てるって思った。怖くなかった」
「すげえ」
「でも、戻ってきたとき、君が起きないって聞いたとき、すごく怖かった。ナマエがもう帰ってこないんじゃないかって、」
「大丈夫だよ」
「友達がいなくなるのはすごく怖いんだ、起きてよかった、ほんとうに、よかった!」

ハリーの言葉にそうかいそうかいと頷く。彼の涙に私超反省。だがしかし私はいなくなるから出来ればその怖さは克服してくれ。今年こそ帰るぞ、こんな危険地帯いられるかダアホ。

涙目になり、鼻声になってきたハリーの頭を寄せてぽんぽんと撫でると、ハリーの抱きつきが強くなった。あとはわかるな?大泣きだ。ギャン泣きだ。
そりゃ怖いに決まってる。その怖くなかったってのはあれだ、土壇場で来る謎の自信だ。アドレナリンさんだ。ここの生徒よりは生きてる私が怖かったんだ、ハリーみたいなちびっこが怖くないはずがない。まあ中にはマジで怖くない子もいるだろうけど、ジニーちゃんという人質もいたわけだし、そんな中1人とはプレッシャーも酷かったんじゃないだろうか。私なら胃に穴あく。私がいうのは癪かもしれないけど、よく頑張りました。花丸150点。
大泣きのハリーをひたすら抱きしめてぽんぽんする。なんだこのサラッサラの髪。綺麗な黒髪だ、と少しつまんで暖炉の火にかざして見ると、うっすら赤く見えた。暖炉の火の色が透けたのかわからないけど、もしかしたら赤毛も入っているのかもしれない。外人髪の色豊富だしな。赤毛のハリーも可愛いと思う。

「ぐすっ……ナマエ……」
「ん、落ち着いた?」
「ナマエ……」
「はいはいここにいますよ。うひゃあ、目ぇ真っ赤っか。飲み物持って来ようか」
「やだ」

ぎゅっと服にしがみつかれ首を振られるとどうしていいかわからない。離れるのが怖いのが飲み物がいらないのか。今更だがマダムポンフリーに持たされたブツを思い出し、開けてみるとよくわからないハーブのいい香りがした。しかしこれ、口をつけるには少々熱そう。しまらないなあ、と頬をかき苦笑すると、突然隣のミニテーブルにシンプルなマグカップと暖かいタオルとティッシュが出現した。謎の心霊現象第2弾。びびる。これはハリー用だな……?
赤い目元に暖かいタオルをあてがう。ぐすぐすと鳴らす鼻をティッシュでかませてやり、マグカップにハーブティーを入れ少しふーふーと冷ましてから飲ませてやると、落ち着いたハリーの完成だ。ティッシュはセレブが良かったが、まあ致し方ない。日本でもお高いんだからこっちでも高そう。

「……ナマエ、いなくならないで」
「どうかなあ」
「やだ……」
「めっちゃ可愛いな今の」

服に顔を埋めて小声でやだ……ってめっちゃ可愛かった。わしゃわしゃと頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。ハリーの魅力ハンパなし。これは将来有望。
そのまましばらく無言でゆっくり頭を撫でていると、ハリーから寝息が聞こえて来た。おやすみ英雄殿。ちなみどうやって部屋に返してやればいいんだ。ヘルプ。

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