Thank you for
3rd Anniversary!

外からわーきゃーと楽しそうなイッチ年生たちの声が聞こえてくる。春先の芝生は柔らかくて心地良いだろうちびっこたちが転がってはわーきゃー言っていてなんとも微笑ましい。そんでそれを見守る私の手元は微笑ましくない。魔法薬学で赤添削だらけのレポートと参考書の山を前に現実逃避である。カレイとヒラメの違いもいまいちわかってないのに葉脈の違いなんて私にひと目でわかるか〜い!
羽根ペンを持ったまま窓の外をぼーっと見ていると、カタリと隣の椅子が引かれた。

「やあ」
「んお、ディゴリー氏」
「……」
「…………セドリック」
「うん、こんにちはナマエ」

ディゴリー氏、いやセドリックがにっこりと微笑む。なんとなくの沈黙がしばらく、私は視線に耐えかねてそっと羽根ペンを動かした。セドリックは何も言わない。
……どうやら怒っている、いや怒るほどではないけど不機嫌なご様子。そらそうだ。今日のデートの誘いを「レポート終わってないからごめん!」と断ったのは私だ。そんでわざわざ様子を見に来てくれたらしい。全く面倒見の良い優秀な監督生殿だ。
セドリックが積まれた参考書の山から本をいくつかとって山を小山に分ける。ついでに横に置かれたレポートを手に取りトントンと各所を叩いては見せてくる。無言で。いやごめんて、サボってたわけじゃないんだって。ご指摘ありがとうございまあす!!
監督生殿の教えのままに間違ってる箇所を渡された本を参考に書いては紙を変えてトントンされて書き直してを繰り返す。図書館はとても静かである。なんとセドリックが手伝ってくれたおかげであんなに詰まってたレポートがあっという間に完成してしまった。優秀すぎるセドリックがついでに杖でひょいひょいと本を戻してくれて私は感動した。まほーってすげー!

「終わったね。じゃあ、行くよね?」

しかし、片手に杖を持ったイケメンのにっこりとした微笑みに、私はぎくりと固まって目を逸らした。

「アッ……アー…いや……まだレポート、が、」
「ハーマイオニーからは魔法薬学だけだと聞いているよ」
「うっ」

手回しが!早い!何故ハーミーも教えてしまうのか!セドリックの味方だからだ……うっ……。でも行くのは嫌なのだ、だってだってだってなんだもんなのだ。嫌よ嫌よもじゃなくてガチで嫌。ぐっと身を縮こまらせていると、セドリックがため息を吐いた。

「ホグズミードが嫌なのかい?それとも僕と行くのが嫌?」
「…ホグズミードがいやです」
「そう」

絶対行かん、こっちも色々あって色々怖いんだ!詳しくは本編をどうぞ!メタ発言乙!
私はてこでも動かないぞという強い意志でセドリックを見返すと、セドリックは仕方ないというように笑った。

「そんな顔しないで、無理強いをするつもりはないよ。ナマエと行けたらと思っていたけど、本当はどこでもいいんだ。僕はナマエと過ごせたら嬉しい」
「ヴッ」

あっあまーーーーい!!!朝スコーンにつけて食べたジャムくらい甘い!!胸焼けが!胸焼けがするセリフなのにどこか爽やかを感じさせるこの顔面!ときめきよりも爽快感のほうが強い!ミスコンがあったら優勝してる、ミスターホグワーツ略してミスホグはあんただ……。
信じられるか?私がこの男と付き合ってるって…マジ……?未だに信じられない。内心騒ぎながらすました顔するのも慣れたもんよ。

「このまま予習もいいけど……嫌そうな顔だね。なにかしたい事はある?」
「特には。セドリックは?」
「そうだなあ、今日みたいな天気がいい日は箒に乗りたいかな」
「ホウキ」
「嫌そうな顔だね」

まあな!そりゃな!わかってて言ったよな!でも貴重なホグズミードの休みにわがまま言ったわけだし…いいさ箒の1本や2本くらい乗ってやらあ。
あっでも待って、別にセドリックが乗りたいって言ってるわけだし私は見てるだけでも良いのでは?よしそれだ!ナイスひらめき!と思っていた私なんざお見通しというようにセドリックはにっこりと笑った。

「素敵な景色を見せてあげる」
「アッハイ」

よくわからん生物だか逃げ出す本だかが紛れ込まないよう椅子をきっちり奥までいれて図書館を出る。
私たちの話し声にちょっとイラっとしていたらしいマダムに睨まれながら扉を閉める。歩き出す前にセドリックに手を握られた。……あー、ま、まあ、カップルなんで、これくらいは、ね。ウン。
ちょっと気恥しいのを知らんふりして、少し力を緩めてから指の位置を所謂恋人繋ぎって奴に変え手を繋ぎ返す。そのまま行こうとすると、ぐんっと腕を引っ張られた。振り向けば先程の位置から動かないセドリックが、空いた片手で顔を覆っている。
……おっとぉ?これはこれは。セドリックのサラサラの髪から覗く形の良い耳が真っ赤になっていた。

「……ごめん…ちょっとまって…」
「へい」

わざと手に力を入れてにぎにぎするとセドリックの手がびくっと動き、形が良くて宝石が嵌ってるような目にじろりと睨まれるけど、見えてんだよな〜!手の隙間から見える頬は真っ赤だ。
勉強も運動も出来て顔面も良いしあんな甘いセリフを吐くくせに。こういうとこがたまんないんだよなあ、なんつって。


続く日々も君とありたい

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