- ナノ -

もともとゆるいむすびつき

最近好きな人が出来た。ずっと気になってたけど、ついにそれが恋に変わったと思ったとき突然妖精の魔法みたいに目の前がパッと華やいで、それからというもの日々彩が鮮やかになっていく。わくわくした心が抑えきれずに飛び跳ねて、同調するように箒の速度も上がっていく。視界の端に揺れる青色のミサンガも、私の恋を成就させるお守りのひとつだ。手作りでくれた友人を思い浮かべると成功するか少し怪しい気もするけど、そこは彼女の強さに願うしかない、ような……いいえ、恋は私の強さで決まるもの、頼ってはいけないわね。でも、少しくらい願掛けをしたいのも乙女心というもの。なんだか楽しくなってふふふ、と笑うと、一緒にいたマリエッタが「なあに?楽しそうね」と言った。

「またセドリックのこと?」
「ええ、もちろん。それから、ナマエのこと」
「ナマエ?……あら、噂をすれば、よ」

私と同じアジア系が、眠そうに目を擦りながら大広間へ入ってきた。なあにあの格好、とマリエッタが嫌味なく笑う。確かイモジャーと言ってたかしら、ジャパンの国民的な洋服らしいそれはあまり似合っていないけど、ナマエに妙にしっくり来るのよね。

「今日は1人みたいね」
「ハリーたちと一緒じゃないのかしら」
「さあ」

ナマエとの出会いは、特急の中で吸魂鬼に襲われた彼女を保護した教授から頼まれて、私たちのコンパートメントで預かったという、あまり平和じゃない出来事だったけど、今では可愛い後輩の1人だ。いつもグリフィンドールのシーカーのハリーと、その友達たちと4人で行動しているように思っていたけれど、案外そうでも無いみたいと気づいたのはついこの間のこと。てっきりいつも一緒だと思っていたのに、ナマエは1人でいることも多いみたいだった。特に彼女自身それを気にした素振りもないけれど、少し観察してみるとそのことを逆に気にしているのはハリーで。ナマエが1人でいるとき、必ず傍に真っ先に行くのはハリーだし、行けないときは彼女を見つめていることが多い。まるで──そう、恋をしているみたいに。
でも、本当はそれがハリーだけじゃないことも私は知っている。ミスグレンジャーも、ウィーズリーの弟くんも、ふとしたときにナマエを見ていることがある。ナマエを見て仕方ないなあって笑っていたり、少し心配していたり、様子は様々だけど一貫しているのは3人ともナマエが好きみたいってことかしら。そういう私もついナマエのことを見てしまうから人のことは言えないんだけどね。そして、ナマエもまた3人を見ていたりするから、きっと4人は両思いなのよ。それってとても素敵なこと。ナマエは1歩引いた場所から見ているけど、いつだって彼らを受け入れて、彼らもまたナマエを受け入れる。友人って、そういう関係が理想かも。私はマリエッタとそういう感じになれているかしら……でも私たちは彼らとはまた少し違う友人関係だから、今のままで満足な気もするし、もっと深い仲になってもいい気もする。少なくともマリエッタはまだ私に恋の相談をしてくれないし……。

「私、セドリックの話ばっかりしてる?」
「今更気づいたの?ふふ、もう聞き飽きたわ」
「でも全然話し足りないのよ」
「知ってるわよ。気が済むまで聞くから」

マリエッタからパチリとウインクが飛ぶ。ありがとうと目を細める。ふふ、と笑い合う。その視界の端で、ハリーがナマエの口元をナプキンで拭っているのが見えて、その距離の近さにパッと恥ずかしくなった。ハリーもナマエも平然としているし、他の2人も何事もないかのようにしているけれど、近いわ。どうしてグリフィンドールは何も言わないのかしら。2人の距離の近さが当然だから?それって、ただの友人かしら。つい考え込んでしまい、眉間に皺がよってマリエッタの細い指でつい、と伸ばされた。

「表情が忙しないわね」
「ハリーとナマエの距離があまりにも近いから……」
「そんなものでしょ。あの子たちだって平然としてるじゃないの」
「でも、」
「そもそもね、あそこの4人は私たちが予想出来るような関係じゃないと思うのよね」

どういうこと?と、マリエッタの考察に耳を傾ける。マリエッタは肩を竦めた。

「私、最初はあの子たち利害関係にあると思ってたのよ。客観的に友情とかそういえものがあまり感じられなかったから。でも、最近はすっかりトモダチって感じだし、それにまるで執着だわ」
「……執着?」
「そう。4人がお互いに、相手がいないと成り立たないって思ってそうじゃない?」

マリエッタは語尾を軽く上げながら確信を抱いているようだった。私も不思議と納得していた。綺麗に言うとかけがえのない友人だけれど、あえて執着と言われたほうがぴったりに見える。きっと一言で表すには難しいけれど、もしマリエッタの考察が正しければ、このミサンガはやっぱり恋愛も成就してくれそう。考えながらもう一度グリフィンドールの席を見ると、何やら喧嘩しているようなミスグレンジャーとウィーズリーにナマエがミルクを押し付けているようだった。いそいそとハリーが自分からゴブレットを差し出して、ナマエもそれに注いでいる。そして、何事も無かったようにまた4人で話しだしていた。

title by まよい庭火