- ナノ -

mission4,

俺の名前はナマエ、今500ガリオンのために身体を張って遠いホグワーツの城にいる苦労だらけらしい英雄の少年を救う手伝いをしている勇気に溢れた看守だ。彼女は絶賛募集中、いいなって思ったらアズカバン宛に手紙を送ってくれよな。

突然なんだが、俺は今ちょっと身も心も傷心中なんだ。原因は約束のXデー、シリウス・ブラック脱獄作戦決行の日、サブタイトル俺と500ガリオンちゃん出会いの日……改めシリウス・ブラックとの友情決別の日。あまりにもしんどいからダイジェストでいくぜ、ついてきてくれよなアリーナ。
その日、俺は朝から約束通り事を進めていった。何せ計画的で優秀なことで名を馳せたスリザリン生ナマエくんだから、ちゃあんと予定外の囚人の暴動とか喧嘩とかが起きても対処してしっかり吸魂鬼の交代時間もバレねえようにズラしたし、予定内だった夜間の巡回だって積極的に行ってきたことで不審がられることもなかった。

しかし予想外なことにブラックくんは?
俺にマジでステューピファイを撃って俺を気絶させてから脱獄していったわけだけど?以下回想。

「ナマエ……必ずハリーを救ってみせるからな!」
「うんおう気をつけてな、でなんで俺に杖を向けてんの?」
「ステューピファイ!」
「えっうそフリじゃないの????」

南無三、俺は赤い光線に当たる。回想終わり。
俺は開始1分で地に伏した。あいつマジで俺に攻撃したじゃん絶許。500ガリオンが縁の切れ目だクソ野郎め。マジあいつふざけんなよ、俺が吸魂鬼に嫌われるタイプの魔法使いじゃなかったら看守1名の尊い命が吸魂鬼に変わってたんだぞ。冤罪も多分そういうとこだぞシリウス・ブラックめ。

気絶した俺を起こしたのは誰だと思う?そりゃもちろん異常事態に気がついた同僚看守のやつだよ。吸魂鬼を遠ざけ騒ぎ立つ囚人たちをシレンシオで片っ端から黙らせ冷静に事態収拾に尽力する頼れる俺の仲間だ。まあ今回俺は敵側になっちまってるわけだけど、ぶっちゃけ仲間たちは俺と違って温厚なやつがあまりいない。
そりゃもちろん毎日毎日犯罪者と顔を合わせて世迷言と戦ってきてるわけだし、吸魂鬼と同じ空間に長時間いるっつーのも並大抵の話じゃあねえ。
選ばれし屈強な看守共だ、それは俺も胸を張って言える。俺の場合は吸魂鬼に嫌われる謎の体質から天性の職業と上司に言われるくらいだけどな、っと閑話休題。屈強な精神と体に囚人共を黙らせることの出来るヤツらは所謂体育会系で、つまるところゆっくり起こしちゃくれねえのさ。

ぶおんっ、と耳元で音が聞こえたかと思うと俺の顔は床にのめり込み酷い痛みが襲う。おかしいな……地面は石のはずなんだが……。

「イッテエエエエ!!!は!?何!もっと優しく起こして!?なに!?」
「てめえ、なにしてやがる……」
「へぶっっ」

理由のある暴力が俺を襲う!
悪かったよ俺だって仲間の睡眠時間を減らすことは望んでな、いや今回については望んでたことだが全部ブラックが悪いんだぜ本当だ!とは口に出せない俺の言い訳である。出したら全部バレる。

ところで、俺が前に西棟の看守について話したことを覚えているだろうか。1番やべえやつがぶち込まれた西棟の看守、スクイブのロブだ。
言っておくが、ロブはマジでやばい。
ベラトリックス・レストレンジが暴れたとき、ぶん殴って大人しくさせたって看守の中で噂になってる。噂っつーけど、医務室でいつも東棟、つまり俺らが世話になってる癒者のじいちゃんが西棟通ってるから確実にマジ。もうほんとやばい。ロブはスクイブだからたまに蔑まれてるけど、そこらへんの魔法使いよりクソ強えし。むしろ俺はロブに魔法の才能がないことで世界の均衡が保たれてんだなって納得してる。そんなロブに殴られたらどうなると思う?

「バーバラ、バーバ…………バーバラ!?」

こうなる。
スミスの野郎がバーバラ語のまま俺を2度見、いや3度見しておろおろとするくらいには衝撃の見た目になる。心配してくれてありがとうな、今ちょっと喋っても入れ歯のおじいちゃんみたいになるから黙っとくけどよ。つうかお前ちゃんと人のこと認識してたんだな、俺ちょっと安心した……。

さて、事件からもう4週間、約1ヶ月が経ってるつっつーのに俺の見た目が衝撃的で上手く喋れないのには理由がある。ひでえ話だ。俺はこの1ヶ月、事件の処分として謹慎になった。といっても自宅ではなく、独房にぶち込まれ1ヶ月寂しく──正確には、毎日ロブの野郎に殴られているため寂しいどころか熱烈なラブ(物理)に包まれていたわけだ。ほんとクソ、最悪、痛覚麻痺してくるレベル。

ロブはもともと俺を疑っていたらしい。
俺がブラックに優しくしているのが気に入らなかったらしく、俺がブラックに優しくするのはブラックとグルだったからで、俺は手引きしてブラックを脱獄させたというのだ。ただ疑われているだけなら、やだロブったら俺に惚れてんの?と茶化すところだが……これがマジだから困る。いや正確にはブラックに、ではなく500ガリオンをくれるブラックに、だけど、んまあロブくんには関係のねえ話だ。
しかし俺は友好関係も良好で評判のいい看守、もちろん味方してくれる仲間は沢山いるが──閉鎖空間とは恐ろしいもので、だんだん不満が蓄積していくにつれ不満の吐き出し口が必要になってくる。それはわかる、俺も覚えあるし。今までみんな囚人に当たっていたが、飽きてきてたんだろうなあ。

結果、俺フルボッコ。
ひでえ話だよな全く。
事実だから困るんだよな、俺どこで間違えたかなあ……。

当初は俺だって反論してしまくって独房の中でも暴れてロブにも反抗してたがな、こう、なんかさ、一人ぼっちで責められる状況が続くと人の心理っつーのは難しいもんで、だんだんおとなーしく抗わなくなるんだよな。諦めとも言う。つまり俺は諦めちまった。おかげで毎日痣が更新され、東棟の奴らと同じように医務室に通うはめになっている。

500ガリオンの代償にしては減給に加えて毎日殴られ骨が折れては治されるなんて拷問酷くねえかな、神様ごめんなさい俺別に信じてねえけど今だけ信じるから助けてよお!!杖持ってかれたし新調しようにもアズカバンに閉じ込められてるから国外逃亡もできねえよお!!看守……つら……。