君がいなくちゃ

杖はお母様も一緒に見に行きたいわ、というナルシッサの言葉に、ドラコは日を改めてオリバンダーの店に行くことにした。ルシウスは杖くらい、と言うが、ドラコはこれから離れてしまうと寂しがる母の些細なお願いに応えたかったのだ。そうして両親と入ったオリバンダーの店で出迎えたのは、気味の悪いオリバンダーの翁ではなく若い女だった。

「いらっしゃいませ、ホグワーツですか?」
「ここはオリバンダーの店のはずだがな、女を雇うとはあの耄碌もまだ若いということか?」
「ルシウス、」
「これは失礼、はじめまして、わたくし耄碌の孫のナマエ・オリバンダーと申します」

ずっと修行に出ていたもので、でも今年からはようやっと店で働けることになりました。どうぞよろしくお願いします。

ルシウスの下品な嫌味にもナマエと名乗った女はカラリと笑って挨拶をする。
ナルシッサが失礼を、と声をかけたとき、奥からガタガタと物が落ちる音がした。

「ナマエ、樫の木に一角獣の骨の杖をどこへやった!」
「まだ合う樫が見つからないから製作してないったら!それよりお客さんだよ、降りてきて!」

はしたない、とルシウスの眉間に皺が寄るのがドラコには見えた。ナルシッサがドラコの手を優しく撫でる。
眼鏡がずれたオリバンダーの翁が降りてきて、ルシウスの姿を見ておや、と眉をあげる。

「これはこれはミスターマルフォイ、もう杖の調子が悪くなったので?」
「いや、息子の杖を新調しに来た。さっさとしろ」

埃臭いとわざとらしく鼻を鳴らし言うルシウスに、ナマエがぎょっとした顔をした。あの女が掃除をしているのだろうか。確かに以前父に着いてきたときより綺麗になっているな、とドラコは思った。しかし、確かにまだ埃臭い。しもべ妖精を雇えばいいのに、とドラコは不思議に思ったがすぐに貧乏なのかと内心嘲謔した。

「承知いたしました。さて坊ちゃん杖腕を測らせていただきます」
「ん」

杖腕を出すと巻尺がドラコの腕に巻きつき、測った数字を羊皮紙にナマエが書き込む。ナルシッサが汚い店内を見回しながら言った。

「一角獣の骨がありますの?」
「トウヒとポプラの2種類ございます!」

ナルシッサの問いにパッと嬉しそうな顔をしたナマエが杖を出して振り、奥から古めの箱と、それよりは新しい箱を出してくる。オリバンダーの翁がこほん、と咳をした。

「一角獣の骨にトウヒ、24cm。とても軽いが繊細です」
「ドラコ、振ってみなさい」
「はい、父上」

渡された杖をドラコは軽すぎる、と思いながら振ると、店の照明がバチンっと音を立てて落ちてきた。それをサッとナマエが杖をひと振りし、被害が出る前に戻す。

「ではこちら。杖芯は同じものでポプラ、21cm。魔法が安定しやすい」

ドラコが受け取ろうと手を差し出すと、触れた途端にパチンと静電気のようなものが走った。

「いたっ!な、なんだこの杖は!」
「合わぬようですな。さて、ドラゴンの心臓の琴線と柳」

ドラコが杖に向かって怒ると、即座にオリバンダーの翁が口を開き己の杖を出す。ナマエが肩を落とし悔しそうな顔をした。

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