あれからどのくらい時間が経ったのだろうか。




ぼんやりと意識が戻ってくる。

どうやら地面に平伏しているようだった。瑠夏は閉じていた目をゆっくりと開いた。目に入ってくるのは白、白、白。どこまでも真っ白な空間の中に倒れていた。

(どこだろ、ここ…………)

瑠夏は身体を起こして立ち上がった。何もない世界にポツンと1人のようだ。どこか穏やかな気分なのはもう誰にも傷つけられることがないからだろうか。全身にあったはずの傷がなくなっていることが、この空間が現実ではないことの証明だ、と瑠夏は思った。

「……天国?それとも地獄?」

紡いだ独り言は広い空間の中に消えていった。真っ白だということだけで判断するなら天国のように思えるが、無機質すぎてどこか恐怖を生み出す場所とも感じられる。



それでも、死ぬ前よりはよっぽど気楽だった。



***



瑠夏はとりあえず歩いてみることにした。目標物が何もないので、己の感覚のみで方向を決め歩く。10分ほどまっすぐ進んでみたが景色は変わらず、ただただ真っ白な世界が続いているだけだった。

(何もないし何も起きないな………)

疲れも空腹も感じないために休むタイミングもよく分からない。それが逆に瑠夏を困らせていた。

「…………こんなよく分からない場所、壊れてなくなっちゃえばいいのに」

ポツリと文句が口をついて出る。何気なく出た言葉だったが、それは瑠夏の本心だった。



その瞬間、プツンと何かが切れたような音が響く。



「……な、に?」

地響きのような音と揺れが瑠夏を襲う。真っ白な空間はまるでタイルが剥がれ落ちるように崩れ始めた。





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