キーンコーンカーンコーン。



校内にホームルーム終わりのチャイムが鳴り響く。今日も何事もなく、1日が平和に終わった。

栞里は帰宅の用意をしながら、窓の外へと目をやった。グラウンドではサッカー部や陸上部の1年生たちが早くも部活の準備を始めている。立海は部活動、特に運動部の成績がとても良い。詳しいことは知らない栞里でも、彼らが全国に名を轟かせていることくらい強いことは知っていた。

その中でも特に、双子の兄・雅治が所属する硬式テニス部は強豪中の強豪である。

「栞里〜、途中まで一緒に帰ろうよ!」

「あれ、美咲は今日部活休み?」

「そ、何か顧問が体調不良でさ。つっまんないの〜」

クラスメイトの美咲はそう言って不満そうな顔をした。ソフトボール部で不動のレギュラーの彼女にとって、部活が休みなのは悲報でしかない。

「でも久しぶりに栞里と帰れるのはすっごく嬉しい!ね、駅前のクレープ屋さん寄ってこ?」

「昼にダイエットする!って宣言してたの誰だったっけ?」

「あ、明日からにするから今日はセーフってことで……」

くるくると表情を変える親友をからかいながら、栞里は美咲と教室を出た。



***



「ほんとに甘いものって幸せだよね〜」

「確かにね〜、癒される」

駅のベンチに座った2人は、お目当てのクレープを食べながらのんびりとした時間を過ごしていた。帰宅ラッシュが近づく駅前は少しずつ人の数が増え始めている。

「家だとあんまり甘いもの消費しないから買えないんだよね。私くらいしか食べる人いないし」

「あれ、雅治くんって甘いもの食べないの?」

「食べるときは食べるけど量は食べないかなあ。バレンタインとかげんなりした顔で帰ってくるよ」

「テニス部のファンクラブが聞いたら泣いて悲しむね、その話」

クレープを食べ終わった栞里はベンチから立ち上がる。美咲は慌てて残っていたクレープを口に押し込むと、スポーツバッグを肩にかけた。

「今日の晩ご飯決まった?」

「うん、一応ね。足りないものあるし買って帰らなきゃ」

「あーもう、栞里ほんとにすごいよ。雅治くんうらやましすぎ」

大したことないよと笑って、栞里は改札を通過する。

「じゃあね、栞里!また明日!」

「うん、また明日ね!」

改札越しに手を振って、ホームへの階段を上る。徒歩通学の美咲と別れた栞里は、ちょうどホームに入ってきていた並盛方面への電車に乗った。





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