「母さん今日帰ってくるって!」
唐突な父親からの報告に叩き起こされた栞里は、半分も活動していない頭を動かして自室の時計を見た。時刻は午前4時を過ぎたところで、どう考えても起きる時間ではない。ましてや今日は休日で、時間にも余裕がある。
「うん、……ていうか父さんは、なんでこんな時間に起きてるの……?」
「次の仕事の設計図を作ってたらこんな時間になっててね?そしたら母さんからメールが来たんだ」
満面の笑みでノートパソコンを見せつけてくる父親は、栞里がほぼ寝落ちしかけていることに気付いていない。栞里は母親からの文章を読むと、理解するかしないかのうちに再び眠りの中へと落ちていった。
「んじゃ、いってくるぜよ」
「いってらっしゃい……」
「ひっどい顔」
「母さんが帰ってくる!って父さんがはしゃいで叩き起こされたから……」
午前7時、雅治と雲雀がそれぞれ学校へ行くのを見送ると、栞里はズルズルとソファーに倒れ込んだ。中途半端に二度寝したせいか、眠気と頭痛が凄まじい。できれば今は何もしたくない。
(掃除とか、色々、後でいいよね…………)
全てを投げ出した栞里は、エプロンを付けたまま三度目の眠りへと引き込まれていった。
***
「…………から!そん……はない…………う!」
「いいじゃ……ヴェ…ん……から!」
どのくらい眠っていたのだろうか。
キッチンの方から聞こえてくる喧騒が、少しずつ脳内で認識され始めてくる。父親を含め自分以外は全員外出しているはず。まだはっきりと働かない思考回路を動かしながら、栞里はむくりと身体を起こした。
瞬間、目が合う。
「おはよう、栞里ちゃん」
「…………かあ、さん?」
ニコニコとした顔で覗き込んできたのは母親だった。
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