転入初日は時間があっという間に過ぎた。放課後を告げるチャイムが響く中、エリオは1人、屋上から校庭を見下ろしていた。

「さて、と……やっと調査開始できるかな」

本当なら授業の合間や昼休みも学校内の調査をしたかったのだが、クラスメイトに囲まれてしまい動けなかった。ある程度は仕方ないとはいえ、他のクラスからまで見に来る生徒が大勢いたのにはさすがに苦笑いしか出なかった。

(どこから行くべきかな……)

エリオが屋上に来たのは、怪しい人物がいないか観察するためだ。捜索対象が学校周辺ということもあり、必ずしも校内に犯人がいるとは限らないのだが、今回の事件における被害者はいずれもこの学校の生徒やその親、近隣住民であり、また犯人の目星も今のところついていない。エリオとしては学校の監視くらいしかすることが思い浮かばなかった。



イタリアと同じような風が吹いて、エリオの髪が空中を舞う。ふと視線を落とした先に、テニスコートがあった。立海が誇るスポーツ実績の中でも頂点に君臨するテニス部は、今日もハードな練習に取り組んでいるようだった。

「立海で一番有名どころと言えばテニス部だけど、そこを狙えばかなり目立つし、無差別に攻撃してるとしたら無意識にでも一番避ける相手だろうし……」

しばらく観察してみたが、怪しいものは何も発見できなかった。エリオは座っていた屋上のフェンスから飛び降りると、グッと背伸びをして双眼鏡を鞄に戻した。

「…………ハァ、やっぱり何か手がかりを見つけないと話にならないか」

「手がかりって?」

「?!」

突如背後から声がかかる。とっさに振り向くと、先ほどの声の主は笑顔でエリオに手を振っていた。燃えるように赤い髪が風で揺らめく炎のように舞う。

「……ブン太くん」

ただのクラスメイトだと思っていた丸井ブン太が、そこにいた。








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