エリオが立海に転入して3日が経った。
「んで、まだ解決までは程遠いわけ?」
午後の授業中、教科書を立てて顔を隠しながらブン太が話しかけてくる。教師は黒板に向かって数式を書いていて、こちらには全く気付いていないようだ。
「うん、まだまだかなあ……。分からないことだらけで動きようがなくて」
エリオは同じように教師の目を逃れながら溜め息をついた。この3日間情報収集に徹してみたが、特に有益な情報は手に入れられていない。そもそも犯人の目星がついていない以前に、事件の概要がはっきりしていないのだ。この学校の周辺で不穏なことが起きている、という事前に聞いていた情報以外まともな手がかりがない。
「被害内容もバラバラだしね。まず同一犯なのかどうかだけでも確定させないと」
「確か中等部で1人が襲われて、近くに住んでる人が行方不明だっけ?」
「そう。後は高等部在籍の生徒の父親の会社が放火にあってるみたい。全部偶然と言い張ればそれで終了なんだけど、任務として上がってくるからには何か関連性があると考えられたんだろうなあって」
エリオは連絡手段として渡されていた携帯端末の電源を入れた。一番新しいメールは作戦隊長であるスクアーロからのものだった。本文が見えるようスクロールしてからブン太に渡す。
「『この任務をヴァリアーに依頼したのは9代目だそうだ。沢田のことを案じてらしい。ヘマするなよ』……、9代目って今のボンゴレのボスのこと?」
「そうだよ。沢田っていうのはボンゴレ10代目のこと。10代目は日本人でここからそう遠くないところに住んでるらしくて、万が一のことも考えてヴァリアーに話が来たみたい」
とは言いつつ、エリオはボンゴレ10代目のことをあまり知らなかった。日本人であること、自分とそう年齢が変わらないことは聞かされていたが、顔も見たことがない。興味はあるのだが、ヴァリアー内においてボンゴレ10代目の話はタブー中のタブー。もし口に出そうものなら殺されても文句は言えない、というのが暗黙の了解になっている。
それが1年前のリング争奪戦でのXANXUSの敗北からだということを、エリオは知らなかった。
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