うちの主将はすごくかわいいです。

「赤司っちの可愛いところ?そんなの決まってるじゃないっスか!あの・・・」
「赤司の顔は可愛いよな。あれで女でおっぱい大きかったら彼女にしてぇかも」
「結局、青峰っちはおっぱいが全てなんじゃないっスか」
呆れたように息を吐く黄瀬の横で、
「わかってねぇなあ」
と青峰が腕を組む。
「おっぱいが大きいだけじゃ、彼女にしてぇとは思わねーよ。赤司だからそう思うんだ」
「確かに赤司っちが女の子だったら、きっとスタイルが良くて美人っスよね」
キラキラと目を輝かせて、妄想の世界へと思いを馳せる黄瀬。
その向かいで、
「全く分かっていないのだよ」
緑間が首を振る。
「今のままの赤司が一番美しいのだよ」
「緑間くんの言う通りですね。赤司くんは今のままが最高だと思います」
「赤ちんは男の子だけど可愛いよ」

主将不在のなか、ファミレスでぐるりとテーブルを囲って行われる秘密会議。
名付けるならば『主将・赤司の可愛いところを語ろう会』とでも言おうか。

「そういやこないだ、赤司の奴なにも無いところでつまずいてたな。必死で周りに人がいねーか、きょろきょろして確認してたけど、間抜けっぽくて可愛かったぜ」
その時のことを思い出して、青峰がけらけら笑う。
「赤司はああ見えてたまに抜けてるところがあるからな。大事な話をしている時に、噛んでしまって顔を赤らめている時は格別に可愛らしいのだよ」
次の試合について、主将と副主将で連絡事項を確認している時のことだ。
「寝グセとか、髪型気にする赤司っちはすごく可愛いっス・・・」
着替えの度に、手櫛で一生懸命に髪を梳かす赤司を思い出す。
「眠たい時にね、オレの肩に頭あずけて居眠りしちゃう赤ちん超かわいいし!起こしてやると『すまない』って恥ずかしそうに起きて、眠たい目ごしごしするの」
昼休みに芝生で一緒に食事をした時だ。
「・・・耳に息を吹き掛けると『ひゃあっ』ってすごく可愛い声を出しますよ」

なんだって!?

黒子以外の全員が、ガタッと音を立てて反応した。

「く、黒子・・・貴様なんてハレンチなことを・・・」
「黒子っちって見かけによらず大胆っスね」
平然とした態度で、黒子はコップにさしたストローでジュースを啜った。
「でもなんか、テツが言ったのやってみてぇかも」
「峰ちん、赤ちんに殺されちゃうかもよ」
紫原が特大のパフェを頬張りながら忠告するも、青峰の発言に黄瀬が「いいっスね!!」と食いついた。
「普段は見れない赤司っちの意外な素顔・・・拝めたらきっとすげーレアっスよ♪」
「貴重かもしれないが、身の危険が・・・」
緑間だって気にならないはずがない。
時々垣間見える、赤司の可愛い一面がもっと見れるのかと思うと胸が踊る。
「しかしなぁ・・・、テツみたいに姿消せるならまだしも、オレらじゃ近寄った途端にハサミで切り刻まれそうだな」
うげげ、と表情を崩した青峰がコップに口を付ける。
「そうっスよね・・・。赤司っち鋭いからすぐに気付かれそうっスよね・・・」
がっくし、と黄瀬が肩を落として項垂れる。
そんな二人を尻目に、紫原がパフェをスプーンで掻き回す。

「んー、でもそうでもないかもよ〜」
「どういうことなのだよ?」
「赤ちんってさ。オレらからしてみたら小さいじゃん。だからこういう時こそ体格差を利用して、捩じ伏せればいんじゃねって」
「・・・紫原。お前はたまにすごく物騒なことを言うのだな」
しかし、紫原の発言にその場にいた全員が頷いた。

「それじゃあやってみるっスか?赤司っちの化けの皮を剥がそう大作戦」
「いちいち作戦名いんのか?」
「仕方ないから付き合ってやるのだよ」
「このパフェ超おいしぃ〜」
「・・・頑張ってください」

かくして、愛され主将へのどっきどきサプライズが始まることになる――



「赤司っち♪おはようっス」
「おはよう、黄瀬」
朝練のために朝早く登校した黄瀬は、すごく早起きをして赤司を待ち伏せた。
「今日は随分早いな」
「赤司っちの顔、誰よりも早く見たくて」
にこっと眩しいモデルスマイル。
一瞬だけ、赤司はその笑顔に見惚れてしまった。
「そ、そうか・・・早く来るのは良いことだ」
ふいっと顔を背けて、黄瀬のわきを抜けようとする赤司。
(今がチャンス・・・!)
その手首を掴んで引くと、耳の裏に「ふぅ」と息を吹き掛けた。
「っ!ひゃ・・・」
ぞくぞくっと震えて、赤司の体が硬直する。
(なるほど、黒子っちの言う通り可愛い声が聞けたっス・・・)
「き、黄瀬・・・!なにを・・・」
「挨拶っスよ。挨拶。赤司っちかーわい・・・――ぐっは!」
どすっと腹に肘鉄を食らって、黄瀬はその場に膝をついた。
(さすが赤司っち・・・油断できねーっス・・・)
何も言わずにその場から立ち去る赤司を見上げてみると、そのうなじは赤く火照っていた。


「赤司か。おはようなのだよ」
赤司が更衣室に着くと、緑間が既に着替えを終えていた。
「緑間・・・おはよう」
それだけ告げると、所定のロッカーで赤司は着替えを進めた。
緑間は赤司の方を向いて、じっと眺めた。
シャツを脱いで、晒された赤司の上半身。
色白で程よく筋肉のついたバランスの良い肉体。
食い入るように眺めていたら、視線に気付いた赤司がこちらを向いた。
「?どうした」
「い、いや・・・なんでもないのだよ」
ごまかすようにして眼鏡を押し上げる。
(なにをグズグズしているのだよ俺は・・・!誰もいない今がチャンスなのではないのか?)
どきどきと心臓の鼓動が早くなる。
溢れる唾をごくりと飲んで、意を決して赤司に近寄る。
背後を通りすぎるふうを装って、
「・・・ふぅ」
赤司の耳孔に吐息を吹き入れた。
「ひやっ――!?」
これは予想外に可愛い反応。
「緑間・・・?」
ぐるりと振り向いた赤司の顔は真っ赤で泣きそうな顔をしていた。
うっ、と心臓を射抜かれて苦し紛れに、
「お、おは朝のお告げなのだよ・・・!許せ!!」
と嘘をついて緑間はその場から走り去った。


(全く、黄瀬といい緑間といい一体なんだというんだ・・・?)
二人に息を掛けられた右耳を手で抑えながら、赤司は体育館に足を踏み入れた。
するとそこには、
「よう、赤司。おはよ」
いつもは朝練にぎりぎり遅刻の青峰がいた。
おかしい、絶対におかしい、と思った赤司は訝しげに青峰を見た。
「んだよ、相変わらずコエー顔してんな?」
青峰がだんだんとこちらに近付いてくる。
「もちっと可愛い顔できねーのかよ。もとはいいのにもったいねぇ」
「・・・お前にそんなことを言われる筋合いはないのだが」
どさくさに紛れて頭を撫でてくる青峰に睨みを効かせるも、どうやら全く通用しないみたいだ。
「ははっ。赤司、お前さあ。んなことばっか言ってるから、からかいたくなんだよ」
「どういう意味だ?」
「こういうこと」
ふ、と赤司の耳に青峰の吐息が吹き入れられる。
「んっ!・・・」
びくびく震える赤司の肩を両手で掴んで、調子に乗ってさらに赤司を責めていく。
「やめ、・・・ゃ」
耳殻にガリッと歯を引っ掛けると、赤司が体を捩らせる。
このままもっとすごいことしちゃおうかな、と青峰が思った時・・・

「峰ちん!赤ちんに何してるんだし!!」
颯爽登場した紫原が、青峰から遠ざけるように赤司を抱き上げた。
「赤ちん、痛いことされなかった?」
「平気だよ。心配ない」
「ほんとに?」
「ああ。大丈夫だから、いい加減おろしてくれないか?」
赤司に言われて、紫原は赤司の体をそっと床に下ろしてやった。
腰を落とした弾みで近くなる赤司の顔。
ちいさな耳が、なんだか美味しそうで、つい紫原は赤司の耳をぱくりっと食べてしまった。
「やっ!ひぃ・・・、」
「な、おい!紫原!!」
今度は青峰が赤司を守るように紫原の体を引き剥がした。
「なにしてんだよお前・・・」
「だって赤ちんの耳、おいしそうだったから」

何が起こっているのかさっぱり分からずに、赤司は目をぱちくりさせて熱くなった耳をぎゅっと抑えた。
「赤司くん」
「ひっ!」
背後から声を掛けられただけなのに、ついおかしな声を上げてしまった。
「く、黒子・・・」
「かわいそうに、こんなに怯えてしまって・・・」
黒子の手が赤司の頬にそっと触れる。
「一体これは何の真似なんだ・・・?」
「赤司くんの可愛い素顔を見ようと皆で企てたんです」
「は?」
「おかげさまで可愛い赤司くんがたくさん見れました」
にっこりと天使のような笑みを見せる黒子。
実は朝から密かに赤司の後をつけて、こっそり様子を窺っていたのだ。
「赤司くんは耳がとても弱いですもんね」
かあぁっと赤司が耳まで顔を真っ赤に染める。

「赤ちん顔赤いし。風邪でもひいちゃったの?」
「赤司でもそんな顔すんだな」
いつの間にか、黄瀬と緑間も体育館に到着していたようで、
「赤司っちごめんス!でも超かわいかったっス、うへへ・・・」
「あ、赤司はとても魅力的だと思うのだよ・・・しかしたまにはそんなお前の違った一面が見られると思ってだな、その・・・」

「そういうわけだそうです赤司くん」
「・・・・・・」

全員の顔を拝んで、赤司はそれぞれに晒してしまった醜態を思い出してしまった。
恥ずかしくていたたまれない・・・。

「とりあえずお前らは、今日から1ヶ月は練習量3倍だ。以上」

えー!!と叫んだ声は、主将の睨みひとつで静まった。


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