策士は溺れる
美少年×平凡
/媚薬・幼馴染み
ときどき、そのへんの女なんかよりよっぽど可愛い男っていうやつがいる。
美少年っていうの?なんつーか鑑賞用の絵画みたいにきれいで、触れるのももったいないくらいの。
幼なじみがまさにそれだ。
幼稚園の頃から女の子に間違えられ、小学生のときには何度も変質者から守ってやり、中学生になると一緒に歩いているだけでカップルに間違えられた。
物心ついたときからそいつが好きだったし、一緒に歩いてカップルに見えるだけで俺は嬉しかったんだけど。
中学、高校にあがり世の中の男女がしている営みというものを知ってから、俺は沸々とその欲望を押さえきれなくなっていた。
もちろんそいつに対して。
女の子に興味がなかったわけじゃない。ただ、どんなに好きだと思って抱いてもそいつの顔が浮かんできて、結局そいつを思い浮かべながら果てるしかなかった。
そうして可愛くて可愛くてたまらないあいつが、俺に滅茶苦茶にされて喘がされている様子を何度も思い浮かべては切ない夜を過ごした。
そして大学生になった今。
俺はとある大決心をしたのだった。
「どうしたの匠、そわそわしちゃって」
くりっと大きな瞳が俺をみる。
時計は夜の10時を指している。そう、いつもと変わらない宅飲みお泊まり。
俺が今からこいつを薬漬けにして犯そうなんて思っていること以外はいつもと何にも変わらない。
薬はアダルトショップから直接買ったものだ。
なんかかなりすごいらしいからそれなりに高くて財布が風通し良くなっちゃったけど、それもこいつとの営みのため。
「や、なんでもない!えっと、久しぶりだなぁーと思って…」
「久しぶりって…ほとんど毎朝会うのに」
「違う違う!なんつーか、大学違うからこうやって宅飲みもできねぇじゃん!」
重要なのは薬を入れるタイミングか…幸い俺もこいつも酔いやすいほうだから、別に今さりげなく、見てないうちに入れてもいいんだけど。
「ていうかお酒減っちゃったね、買い足してくる?」
「いや!大丈夫じゃね?そ、蒼太つぎ何飲む?つ、ついでやるよ」
「んー…匠が飲んでるやつでいいや。それ、まだ空いてないよね」
そう言って蒼太は俺にチューハイの缶を指差すと、ちょっと横になるねと言ってテレビの前にゴロンと横になった。
よし!今だ!!
缶を開けると、ポケットにしのばせておいた薬のキャップを音をたてないように外し、何滴か入れる。ていうか全部入れる勢いで入れる。
よし、これで、これで可愛い可愛い蒼太にあんなことやこんなことが…
やべ、たってきた。やべ。
「そ、蒼太、空けたから飲めよ」
「んー、ありがと。そのうち飲む…なんか食べたいんだけど」
くそ、さすがにすぐ飲ませるのは怪しいしな。はやまるな俺!まだ時間はあるんだ…
蒼太が何か食べたいというのでリビングまでお菓子をとりにいく。
あー、部屋に戻ったら蒼太が顔を赤らめて「たくみぃ…あついのぉ…」みたいになってないかなー、あ、やべ、またちんこが。やべ。
部屋に戻るとそんなことはなく、しかし代わりに蒼太がチューハイを飲んでいるところだった。
「!!!」
「おかえり。…どうしたの、絶句して」
「ななななんでもない!!はい!ぽてち!!」
いっきに心拍数が上がる。
やばいやばい、飲んだよ!!
俺もなんか、マカみたいなの買った方がよかったかな!
やべぇ、落ち着こう落ち着こう、そう言い聞かせながら目の前のチューハイをとりあえずイッキ飲み。
蒼太はポテチに手を伸ばし、テレビを見ながらパリパリと食べている。
薬、どんくらい時間たてば効いてくるんだろう。
説明書とかよく読んでないからあれだけど、速攻とか書いてあったからたぶんすぐクラクラしてくんだろうな。
漫画みたいにはやく蒼太の顔が赤くなって、もじもじし出して、堪えきれずに俺に股間押し付けてきたりしないかな、あ、やべ、またちんこ、
「…匠、俺の顔になんかついてる?」
「えっ、や、べつに!あっ蒼太、それ全部飲んじゃえよ、空き缶捨てるから」
興奮を抑えるように、チューハイを全部飲むよう催促する。
蒼太は首をかしげながら缶を手に取りつつ、あ、と声をあげた。
「…ごめん、僕間違えて匠のほう飲んじゃったんだ」
「えっ」
僕のはこっち、と、ほとんど残っていない缶を傾ける。
じゃあ俺が飲んだほうが媚薬入り!?
絶望の縁に立たされた気分だ。この日のためにバイトも入れまくって媚薬代稼いで、親のいない日にちを計算して宅飲みお泊まり計画して…まさか、そんな念入りな計画の末に媚薬を自分自身のために使うなんて。
余っていればいいものを、緊張のあまり全部飲んでしまったしな…
ん?全部?
「匠どうしたの?ほんとにおかしいよ」
蒼太の白い手が伸びてきて、おでこをすっと触られる。
「っ、おわ!」
「あ、ごめん冷たかった?」
そう言いながら、蒼太は俺の首筋に手を這わせていく。
薬の効いた身体は少しでも触れられるとゾクゾクとした寒気のようなものが走る。
「匠…酔ったの?すごい顔まっか」
蒼太がクスリと笑ってまた俺の額へ手を伸ばす。いや、かわいいんだけどね。
可愛いんだけど、今触られたら、
「よ、ってない、ばか、さわんな…ッ」
今触られたら確実にやばい!!
ていうか勃ってること自体ばれたらヤバい。数十年間築いてきた俺と蒼太の関係に亀裂が生じること間違いない。
それにも関わらず蒼太は心配そうな顔をしてのぞきこんでくる。
やばいって、やばいって、
「吐きたいの?さすってあげようか」
「うぁっ、ん!」
変な声出してしまった!!
それもこれも、蒼太が背中ではなくなぜか腹をさすってくるから。
「んっ、ん、んうう…っ」
「さっきまで平気だったのにね。あのチューハイそんなに強かった?」
うーん、と蒼太が空になったチューハイの缶を振る。
強いんじゃない、だってそれには薬が、薬が、
「それとも…変なもんでも飲んだ?」
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