幸太くんの不幸03
VS後輩くん
/素股・フェラ
「頭がいたい…」
数週間のうちにいろんなことがありすぎて、いや、なんかもう一生分の恥辱を受けさせられた気がして、ショックを通り越してすでに精神状態が麻痺しつつある。
土日を挟んで一週間の始まり、数週間前なら大好きな汁男優の画像や動画、新しいサイトなんかを探すためのネットサーフィンで毎日が潤っていたのに、今じゃもうそんなものを見るのも避けてるし、本やDVDもクローゼットの奥に全部しまってしまった。
早く長い休みに入らないかな。
そしたら誰の目も気にせずに、また好きなだけ好きなものを見られるのに。
なんて、まだこりていないから笑える。
「幸太、ご飯食べないの?」
「えっ」
そんなことをぼんやり考えていると、突然母さんから声をかけられる。
目線を追えば、ほとんど手をつけていない朝ごはん。
そういえば箸が全然進まない。
「なんだか最近ずっと顔色が悪いみたい…どうかしたの?」
え。
どうかしたってレベルではないけど…言いかける前に心配そうな母さんの顔を見て口を結ぶ。そんな顔見たらなにも言えない。
なんでもないよ、と笑って誤魔化した。
実際一番の悩みになっている人物にはあれからずっと会っていないし、そのおかげで精神的に荒れずに済んでいる。
…まぁ体調には出ちゃってるけど、とため息。
朝ごはんものどを通らず、結局ズキズキする頭を抑えながら家をでた。
*
お昼休みもご飯がすすまないまま、午後の授業が始まろうとしていた。
なんだか体がポカポカして、息も熱く感じる。
お腹のことといい、僕ってこんなに体弱かったかな、と思いながら次の教室へ向かおうとしていると。
「せんぱい!せんぱーいせんぱいせんぱいっ」
「?!」
いやに高い声がすぐ後ろで聞こえて、キーンと耳鳴りがする。
ただでさえ頭痛がひどいのに、なんて仕打ち。
何かの部活だろうか、とふと後ろを振り返ると、
「せんぱい無視っすか!こないだのお礼言いに来たんすけどっ」
金髪頭に彫りの深いハーフの童顔。
それが、この僕にすごくいい笑顔を向けている。
どうやら彼の言う「先輩」とは僕のことらしい。
が、こんな顔の後輩なんていない、ていうかむしろ万年帰宅部の僕を尊敬してくれるような後輩はいない。
で、お礼より先に後輩ができるような機会を探すとなるとあの出来事しかなくて。
…ていうかこういう類いの人種は間違いなく不良というよりチャラ男のノリなんだと思うけど、とりあえず怖いから不良。
「えっ覚えてないんすか!!」
「…わ、わかりますから」
威勢の良すぎる声が頭に響いてたまらない。そして、わかると言った瞬間に輝く笑顔。
その節はありがとうございましたー!と言って満足したかと思えば、テクテク僕の後ろをついてくる。
あのとき色んな人がいたけどみんな同級生だとばかり思っていた。が、後輩もいたなんて。うう、ほんとに最悪だ。
はぁ、と、彼に聞こえないように小さくため息をつく。チラリと見れば目が合って、屈託のない良い笑顔。
なんだろう、…後輩だと分かると、年下ってだけで少し気持ちが楽…な、気がする。
「俺、結城っていうんす!先輩はたしかえーと、えーと、下の名前はわかるんすけど…」
「沼田…」
「だと思いました!なんかこう、沼田ーって感じっすよね、ッポイすよね!」
助けて…
結城と名乗る後輩はことあるごとにキャッキャキャッキャとよく笑う。
それに加えてよく喋る。中学のときから陰気だった僕にはそのコミュニケーションスキルはとても羨ましいのだが、今は頭に響いて仕方ない。
朝も昼もほとんど食べていないし、寒気がするから飲み物も飲んでいない。
結城くんがずうっと何か話しかけてるけど内容は入ってこないし、ていうか結城くんが喋れば喋るほど頭がズキズキ…
少し目をつぶった瞬間、ふっと視界が暗くなった。
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