隣の席の03
人気者×地味/甘々・初えっち
宝くんは格好良い。
文句のつけようがないくらい。
それに、いつだってクラスの中心にいて、彼のまわりには自然と人が集まってくる。
人徳とでもいうのだろうか。
容姿もさることながら、誰もが認める人気者だ。
それでも高飛車にならず、いつだって飾らずに振る舞うような、そんな宝くんは僕にとって密かではあったけども高嶺の花だった。
だったのだけど。
「開通の儀を執り行わせて頂きたい」
高嶺の花は、床に額を擦り付けながら土下座なんかしない。
「宝くん恥ずかしいよ顔あげてよ!」
「うんじゃあ顔上げるね!小嶋くん初体験の場所って何かこだわりとかある?ない?俺的にやっぱりどっちかの家とか、それはもちろん部屋なんだけど、あ、キッチンとかでもいいよ?そしたら親とかいないほうがいいよね、どっちにしろ多分小嶋くん我慢できなくなって声おっきくなっちゃうでしょ?可愛いね!でね、親がいない日っていうと、あ、親いたほうがいい?なんかそういうオプションつける?いたほうが燃えるとかそうい」
「宝くん!!」
彼と僕の間でなにかが壊れてから数週間。
授業中は隣から常に異様な熱視線を感じるし、ここのところしょっちゅう休みの日は何をしてるのだの、詮索気味だった。
それの理由がこれか…と、ついため息が出てしまう。
「なんでため息!?」
「ちょっ…吸おうとしないで!もう!最近やたら時間のこと聞いてきたのってその、か、開通の…とか、そのことだったの?」
「うん、でもパンツの色とか聞いてたのは別の理由だから気にしないで!」
「気にしたくないよ!」
そっか!!と宝くんは爽やかに言う。
こういう場面じゃない笑顔ならどきどきするのに…いや、だめだめ、流されちゃだめなんだ。
「それに、いつも体育倉庫じゃゆっくりイチャイチャできないし…」
そう言うと宝くんはうつむいて小さくため息をついた。
イチャイチャ、っていうか…突っ込みどころは沢山あるけど、そんなにしゅんとされたら僕もちょっと考えてしまう。
でも、確かに僕と宝くんは教室じゃあんまり話せない。というか、宝くんは話そうとしてくれるんだけど、その前にいつも誰かしら宝くんのところへ来てしまうから話せなくなってしまう。
僕も僕で、自分から話しかけるなんてできないし…
だからこうして、いつもの体育館倉庫で話すしかないんだけど。
「ぼ、僕…土曜日だったら、家、いつもひとり…」
「ほんとに?!」
「さすがに夜は親が帰ってくるけどっ!それまで、なら…」
「いや、俺も今週の土曜なら部活、早く上がれるんだ!」
ありがとう!ありがとう!そう言って宝くんは満面の笑みを浮かべながらブンブンと握手をし、部活だからと颯爽と体育館倉庫を去っていった。
「あっ!宝くんこれ…」
跳び箱の上に置きっぱなしの宝くんのタオル。体育の終わりだったから、手に取るとしっとり濡れている。
あんなに嬉しそうに、しかもタオルまで忘れて…。
かくして土曜日がやってきた。
親は予定通り仕事へ向かい、いつもと変わらない平凡な土曜日。
ただ一つ違うのは、宝くんがくるということ。
別に意味はないけど掃除を入念にして、一応ジュースとかお菓子もちゃんと買った。暇にならないようにDVDとかも借りて、ゲーム機もあるし…お、お客様だしね、こういうのはちゃんとしないと。
そんなこんなしているうちにもうお昼はとっくにすぎて、14時過ぎになっている。
部活ってどれくらいで終わるんだろう。
時計を見上げるついでに、ふとベッドのほうを見てしまう。
『開通の儀を執り行わせていただきたい』
「…っ!!だめだだめだ!」
そういうことばっかりするんじゃない!
今日は普通に、遊んで、それで…
ピリリ、と携帯が鳴って心臓が飛び跳ねる。
着信だ。あ、宝くん。
「も、もしもしっ」
「あ、小嶋くん!?ごめん、さっき部活終わったんだけど、友達が急用だからって寄るとこできちゃって…今日もしかしたら行けないかもしんない…」
「えっ…」
「あっ、でももちろん寄るから!時間はあんまりないかもだけど」
「え…あ、そっか…う、うん!わかった、しょうがないもんね、気をつけてね」
ほんとにごめん!宝くんはそう謝ると、すぐに電話を切ってしまった。
ぽつん、と急激に寂しさがこみ上げてくる。
自分から言ってきたくせに!
…と、考えたところで虚しいだけ、
さらに、怒りより先に悲しくなった自分に嫌気がさす。
僕がしたいって言ったんじゃない、宝くんが言ったんだ。
「〜〜っ…もう…」
ボスッとベッドへダイブする。
ため息をついて目をやった先に、返そうと思っていた宝くんのタオル。
数秒見つめて、ずるりとこちらへ引っ張る。
いつもこのタオル持ってたなぁ、宝くん。
いつもって言ったって、体育のときしか見たことないけど。
そう思うと、いま宝くんと一緒にいるのはずーっと仲良しのお友達なわけで。
なんだか胸の奥がツンとして、思わずタオルに顔をうずめる。
あ、このにおい。
宝くんのにおい。
本当はいま宝くんと一緒にいるはずだったのは僕なのに。
このにおいを嗅げるのも、なんて、自分でも変なことを考える。
これじゃまるで宝くんみたい…そう思うと宝くんの笑顔が頭に浮かんできゅんとなって、自然と手は下へ降りていく。
「…ん、ッ」
服の上から股間をさすって、タオルをきゅっと握りしめる。
自分で自分がしてることが信じられないけど、でも手は止まらなくて、すりすり擦ってしまう。
ん、ん、と小さく声が出て、恥ずかしくなるけど、もっと触りたくてズボンの中に手を入れる。
「ふは、ぁッ…、たからくん、う、う」
タオルに顔をうずめて、しゅ、しゅ、と弱々しく自身を扱く。
宝くんの手や舌の感触がじんわり思い出されて、だんだんとそこへ熱がたまっていく。
「ん、はぁっ、う、っく、きもち、い…っ」
ぐりっと強く先っぽを擦ると、自分でもびっくりするぐらい身体が跳ねた。
宝くんの顔や声を思い出すだけでお腹の奥がうずいて、先っぽから恥ずかしいお汁がどんどん出てくる。
それを自身に擦り付けて、さっきよりはやく扱く。
「あっ、あっ、ひぁ、あっ、きもち…ッ、」
きもちいい、きもちいいけど、目の前は霞んでほろほろと頬は濡れた。
部屋の中にぐちゅぐちゅと鳴り響くいやらしい音に、自然と腰は揺れて。
「んァ、あ、っ、たからく、ぐす、っう、おしりも、してほしいよぉ…ッ」
「わかった」
あぁ、僕ったら頭が溶けそうで幻聴まで聞こえ…
「っ?!」
ガバッと声がした方を見れば、頬杖をつきながらうっとりとした目でこちらを見る宝くんの姿。
いるはずがない、だって友達は、急用は、頭の中で色々な情報が飛び交う中、僕はハッと自分が置かれている状況に気づいて血の気が引く。
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