「これ、ハンカチです。どうぞ」


公園の水道は撤去されてしまっていて、仕方なくトイレの水道を使うしかなかった。
八木くん…の、弟の和泉くんはハンカチに水を含ませると、それで顔を拭くよう差し出してくれた。
見ると優しく微笑んでいて、僕はぎこちないながらも笑顔を返した。

ハンカチの冷たさが少しずつ頭を整理させてくれる。
まだ状況が理解できないけど、八木くんとは正反対の人柄であるということは確かなようだった。


「だいぶ兄のこと、怖がってるみたいですね」

「えと…あの…ご、ごめんなさい…」


謝らなくても、と和泉くんは笑った。
八木くんなら浮かびもしないその笑顔になぜか心がチクリとする。


「あの人、いたる所で問題を起こしているみたいですからね…すみません。そう言えばお名前聞いてなかったですね」

「あ、あの…沼田っていいます、沼田、幸太…」

「幸太くん。僕のことは好きに呼んでいいですから」


はぁ、と少し気の抜けた返事をしてしまう。
つくづく「良い人」という印象で、隙がなくて、礼節のある人だ。
しっかりと着こなされた名門進学校の制服が、どことなくそれを物語っている。

双子、なのにー

そんなことを考えたら、また胸のあたりがチクリとした。


「ところで、兄には何をされたんですか?」


びく、と肩が揺れる。
和泉くんのほうを見ると、表情こそ朗らかなままなのに、どこかその目の奥が先ほどと違う。

一瞬で空気の変わったのを感じ、手渡されたハンカチを握りしめた。


「な、なに、も…」

「やだなぁ、何もされてないのにそんなに怯えるわけないじゃないですか。その怯え方、異常ですよ」


鼓動がどんどん早くなって、変な汗が額を濡らす。
同時に、あのときのことがまざまざと脳裏に浮かんできた。八木くんが言った言葉のひとつひとつや、感触、感覚ー

返答できずにいると、突然手首を掴まれて個室のほうへ連れて行かれた。
嫌だというには遅すぎて、握っていたハンカチが手から落ちた。

押し込まれた個室の鍵がかけられ、いよいよ恐怖で身体が震えだした。
掴まれた手首がヒリヒリと痛む。
和泉くんは相変わらず微笑んでいるけど、さっきとは全然印象が違う。


「い、っ和泉くん、や…っ!」

「もしかしてこういうこと?」


言うなり僕を壁に押し付け、膝で股間をぐりぐりと刺激する。
突然与えられた刺激に思わず声をあげ、和泉くんを押し退けようと胸を叩くが力が出ない。


「ひぃ、あっ、やめ、おねが…ッ」

「ビンゴ?龍治が好きそうなタイプだもんね」


愉しそうに喉を鳴らす和泉くんの顔を見れずにいると、カチャカチャとベルトを外される。
顔色を変えて咄嗟にやめてと抵抗するが、ひやりとした目の色に息を呑む。
何をしても無駄だということが嫌でもわかる。

あのときと、同じ。


「龍治にも同じことされた?」

「や、あっ、あ、いや、ァ゛ッ!」


取り出された自身の先端をグリッと強く擦られ、痛みに思わず仰け反った。それでも頬を捕まれ強引に顔を振り向かされる。
切れ目の奥の瞳はまるで八木くんそのもので、…いや、それよりももっと暗くて、深い。
恐怖で知らぬうちにぼろぼろと涙が溢れ出る。


「聞いてんの。されたかって」

「いた、ァッ、いや、された、され…っ」

「はは、されたんだ。へぇ…」

「あぅ、あっ、いや、やぁッ」


ぐしゅぐしゅと乱暴に擦られる。
まだ反応もしていない自身を無理矢理刺激され、痛みかなんなのかわからないそれにいやいやと首を振る。


「これは?」

「ッ、あぅ…っ!」


言うなり、今度はワイシャツの上から乳首を摘まれる。反射的に腰が揺れ、耐えようと唇を噛むと口の中に指が入り込んでくる。
細い指がワイシャツごしに片方の乳首を摘み、先っぽを弄ばれる。


「いぁ、ッあん、あっ!や、ぁッ」

「されたかって」

「されて、ないッ、あ、ひぁッ!されてないからぁっ…」


ふぅん、とまた和泉くんが口の端を上げる。
口に入れられた指が出し入れするようにぐねぐねと動いて、思わず嗚咽が漏れ出た。
唾液で濡れた手が再び自身へ伸びたかと思えば、今度はぐちゃぐちゃと音を出しながら乱暴に擦られる。


「それでも反応してんのはなんなの?他の奴にヤられたとか?」

「ひぅ、あっ、や、やだ、や…ッ!」


首筋を意地悪くゆっくり舌が這う。
首を振ると強く乳首をつねられ、思わず大きな声が出てしまう。

無理矢理後ろを向かされ、上半身をトイレのタンクに押し付けられる。腰を突き出すような格好になり、抵抗しようとしたけどズボンとパンツを剥がされるように脱がされてしまった。
和泉くんの手がお尻の割れ目に伸びる。


「ここは?」

「いや…ッ、おねが、もういや…っひぁう!」

「聞かれたことにだけ答えればいいんだよ」


簡単でしょ、と再び自身の先っぽを親指で擦られ、強すぎる快感に今度は足が震える。
指の先がくるりと穴のまわりをなぞり、入り口を押した。
身体中がゾクゾクと粟立つ。


「あっあっ、いぁ、され、されたっ」

「なにを?」

「はぁう、あ、い、いれられ…っ」


乾いた笑いが響く。
もういやだ、逃げ出したい、胃が痛い。
ぼろぼろと涙を流しながら体を震わせていると、後ろでベルトを外す音がした。
まさかと思い振り向くと、和泉くんがジッパーを下ろして自身を取り出していた。
逃げようとしたところをすぐさま抑えられ、頭をタンクに押し付けられた。
そそり勃ったそれが穴の入り口に触れる。


「やだ、やだっ、おねがい、いや…っ!」

「僕と龍治、どっちのが気持ちいいか教えてあげようよ。あいつ今、謹慎中で暇してんだよね」


おもむろに携帯を取り出した和泉くんは、慣れた手つきでどこかに電話し始める。
僕は直感でその相手の予想がついて全身の血が引いていくのを感じた。

ー八木くんだ







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