「まだかー?」

「も、すこし…」


京介に後ろを向いてもらって、僕は鏡の前で下着を着ていた。
下は履けたけど、ぎりぎりで思ったより恥ずかしい。
ファッションショーなんて京介は言ったけど、気持ち悪るがられるかもしれない…
それに、何よりブラジャーの着け方が分からない。
京介の言う通り僕は不器用だし、それにしたってブラジャーのつけるところにはどうやら3つ段階があって、それもワケがわからないし、どうやってこの小さい穴にこれが入って、とか。
女の子ってこんなに難しいもの毎朝毎晩つけてるんだ…


「あっ」


着けられそうだったのに、そんなことを考えていたら手が滑ってまた外れてしまった。
もう、と小さくため息をこぼす。
ふと後ろで背を向ける京介が目に入った。


「きょう、すけ」

「んー?着た?」

「ちが、あの…上、つけらんない」

「……うん、なんとなくわかったけど。俺、見ていいの?」


うん、と消え入りそうな声で言う。

ゆっくり、京介がこちらを向く。
一瞬どんな表情をしたかわからなかったけど、次の瞬間にはにっこり笑っていた。
恥ずかしい。
部屋が暗くてよかった。きっと赤くなって、見れたもんじゃない。
僕はブラジャーを手で押さえながら、うしろ、と指をさす。


「まぁ難しいよな、おまえ不器用だし。うしろ向いて、そしたら鏡で見れる」


こくりと頷いて、鏡の方を向き直した。
鏡越しに京介と目があって、慌てて目をそらす。
今更だけど、小さな身体に小さな下着を身につけて、しかもブラジャーを着けてもらってることが恥ずかしくてたまらなかった。
沈黙を破るように京介が言う。


「ホックじゃなくてヒモとかにすりゃよかったかな、ビキニとか、そういうの…」


する、と、細い指が胸元に触れて肩が揺れる。
くすぐったい。
いつの間にかその、ホックとやらはついたようで、やけに隙間のあいたブラジャー姿が鏡に映った。
身体がいつもよりすうすうする感じだ。


「似合ってる」


囁くよりももう少し強く、京介が言う。
決して肉付きがいいとはいえない身体にちょんちょんとただ付いているだけのような可愛らしい下着。


「…でも、胸のとこ…やっぱ、ないから…」

「そんなこと気にするな」


京介の手が、するりと腰辺りを掠めた。
またくすぐったくて身を少しよじると、ちょうど鏡越しに京介と目があってしまった。
いつもより熱っぽい、目。


「身体の変化についていけてないのは」


京介が口を開く。さっきと違うのは、僕の首筋に顔を埋めていることくらい。


「わかってた。そのことでおまえが、うみがずっと悩んでたのもわかってた。我慢してたのも。やだったろ、影で色々言われんの。でもけっこう、見てるのもつらいんだなー」

「きょうす、」


言うより先に、京介の唇が僕の唇に触れていた。それはほんの何秒ですぐ離れたけど、熱い息が唇にかかった。


「ごめん、もう俺がまんできない」

「きょ、ンん!ぅ、ッ」


頭を京介のほうへ向かされ、今度は強引にキスをされる。舌が口の中に割入って唾液をかき混ぜるように動き回る。
あつい、僕より少し高い体温。
短く息を吐くと口の端から溢れた唾液をちゅう、と吸われた。


「は、ン…っ、あ」

「舌、だして」


言われた通りにおそるおそる舌を出すと、優しく食まれて舌先を絡められる。
どちらのものかわからない吐息が口の中に絶えず流れ込んで、僕はぼうっとしてしまいそうになる。
ブラジャーの中にするりと手が入ってきた。
思わず身体を強張らせてしまう。


「や、だめ、ッあ、僕…ぼくの、おっぱいない…ッ」

「でもここは硬くなってる」

「あっあっ、や、あぁう…っ!」


乳首をきゅ、とつねられて、そのまま指先で擦られる。
首筋を舌が這い、両手で乳首をくりくりと弄られて思わずゾクゾクしてしまう。目の前の鏡にそれが映ると余計に恥ずかしくてたまらない。


「うみの可愛い乳首、腫れるくらい舐めたり吸ったりしたい…だめ?」


耳元で囁かれて、そのままぐちゅぐちゅと耳を舌先で犯される。
その水音さえもいやらしく感じて、自分の声じゃないみたいな声が出てしまう。
僕は必死で京介の腕にしがみつきながら、思わず頷いた。







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