志願者

いつのまにか。
死にたい、が口癖になってた。

死にたい死にたい死にたい。


ことあるごとに
なんにもないくせに

死にたい、と呟く。


死、という言葉を舌の上でゆっくりと転がして、甘く苦い味に陶酔したあとに呑み込んで。


現実味も何もない、空想世界での死。

私はそれに慣れすぎてしまったのだろうか。

死んだらなんにもできないね。

もう、君に会うことも
話すことも

出来なくなるね。


そう考えたら、脆くて甘美な死、という言葉が途端に恐怖の言葉に様変わりした。


ほらね、やっぱり怖いんだ。

死にたいって思うけど怖いんだ。


どうして私は死にたいの?
死にたいって思うようになったの?


存在を否定されたいの?
―違う。

死ね、って言われたいの?
―違うってば。


じゃあなんで死にたいの?

そうすれば
皆悲しんでくれるから?
そのときだけは私だけをみてくれるから?


そうだよ。
私は無償の愛が欲しいんだ。

私から何もしなくても
相手の利益の為に動かなくても
たとえ相手を虐げていても

与えられる無償の愛が欲しかったんだ。


死んだらそれに出会える気がして。

私の知らないところで。
それが成立する気がして。


けれど。
その時点で無償ではなくなっている。
私の死を対価に、一時的に皆に宿るだけの愛。
無償の愛なんてただのまやかしで。
それでもいいから欲しかった。

人間って自分の損得に関わる人物を吟味して選ぶの。
自分の利益になる人間を心の奥底で選り好みしてる。

選んだ人間だけに与える、利益を対価に与える愛を渇望し溺れて。

そうやって人間たちの関係は、社会は、家庭は、成り立っていると思う。

私だってそうでしょう?


ちょっと歪んだ脳味噌がひねり出した、歪な答え。

愛を得るために私は死を選びましょう。

一時的でもいいの。


私は、死にたいんじゃなくて、
生きたいんでもなくて

ただ幸せな人生を歩みたかっただけ。


叶わないから。
叩き潰して終わらせてみるの。





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