此処は真選組屯所の客間。そこには私と異三郎さん、そして私たちと対面しているのはうちのトップ3。

そう、今日は私側への挨拶をしに来たのです。

私の両親はすでに他界しているので挨拶のしようがないという話になり、それならばと職場に挨拶しようと異三郎さんが言ったのだ。

本当は全力で阻止しようと思っていた。だって真選組と見廻組って同じ警察だけどどこか敵対しているし、主に土方さんと異三郎さんが。





「貴女を貰いに行くのですから、それくらいさせてください」





異三郎さんがそういうもんだから、なんとなく逆らえなかった。












「い、いや〜久しぶりですな佐々木殿!」

「ええ、ご無沙汰しております」

「あ、あれだよね!これって菜々緒をください!っていうやつじゃ…ないよね?」

「いえ、その通りです。菜々緒を私に下さい」

「言っちゃったァァァァアア!」





なんだか近藤さん一人でテンパってるんですけど。だけど、その理由は近藤さんの横にいる二人を見て納得できた。






「おい、どの面下げてうちの菜々緒を貰うなんざほざいてんだ」

「うちの菜々緒さんを其方さんに渡すわけにゃ行きやせんぜ」




チャキッ、と二人同時に刀の柄に手をかける姿に私は思わず立ち上がり、静止の声を上げる。




「ちょっとォォォォオ!?アンタら何でこんな時だけ仲良いのさ!刀から手離してよ!」

「菜々緒アブネェからこっち来い」

「今からその横の奴の首飛ばすんで」

「だから止めろォォオオ!」




近藤さんも二人を止める為に後ろから腕を押さえてくれた。それもあってか少し冷静になった二人は大人しく坐りなおした。




「ご、ごめんなさい、異三郎さん」

「まあ、そのような対応をされることは予想していましたので驚きはしませんよ」

「んだとコラ」

「…しかし、少し安心しましたよ。菜々緒は此処でとても大切にされていたようだ」





異三郎さんの言葉に、私はなんだかうれしくも恥ずかしい気持ちになった。確かに、私は此処で大切にされていたなあ。近藤さんも「そうなんですよォ!」と嬉しそうに笑った。土方さんも沖田くんも、なんだか満更でもない表情だ。





「菜々緒はよく働く子でなァ、皆に平等に優しく接してくれていたのですよ」

「偶にドジだから目が離せねえ奴だしな」

「気立てもいいし、本当の姉さんみたいな存在でさァ」





各々表情を緩めながらそんなことを言うもんだから、頬が少し熱くなるのを感じた。そんな風に思ってくれていたことが、本当にうれしかった。




「そうですか…本当に菜々緒が好きだったのですね」

「そうですな」

「たりめーだろ」

「大好きでさァ」

「…ということで、菜々緒をください」

「「「あ、どうぞどうぞ……ってなるかァァァァアア!!」」」






異三郎さんはきっと、みんなの気持ちを持ち上げといて、その勢いで許可をもらおうと作戦を企てていたようだ。相変わらず、頭脳派の彼らしい。
私は苦笑いしかできなかったけど。




「テメー俺らをおちょくってんのか!?」

「俺らは短気なんでねェ、覚悟してくだせェ」




再び刀を抜きそうな二人に私はもう我慢ならなくなった。このままじゃ話が進まないじゃん!




「いい加減にしてよ!」






ぐいっと異三郎さんの腕に自分の腕をからます。3人も、異三郎さんも驚いたように私を見た。





「私が異三郎さんと結婚したいの!反対するならもう二度と口きかないから!」

「えっ!」

「なっ」

「!!」









「「「お幸せに」」」






うちの家族も、単純な人たちばっかりだ。







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