見廻組局長室に時計の秒針がこくこくと動く音と、私が忙しなく足を揺する音だけが響いていた。隣に控えている信女も心無しか落ち着かない雰囲気を出している。

……運動のためにも歩いて見廻組屯所まで来ると言った婚約者が、約束の時間を過ぎても姿を表さない。

携帯に電話を掛けても出ない。嫌々ながらも真選組に連絡をしても一時間前に退勤したという。…なにか、あったのでしょうか。本当は見廻組総員出動させ捜索に行きたいところだが、あまり過保護にすると彼女は怒るので今のところは固唾を呑んで待つばかりだ。



「…信女さん、あと一回…あと一回電話を掛けても菜々緒が出なかったら見廻組総員に捜索命令を出してください」
「わかった」




信女さんに見守られる中、彼女の電話番号に発信する。プルルル、プルルル…5回コールが鳴ったところで私は溜息を吐く。やはり、出ないか。諦めて信女に命令を下そうとしたところでコールが鳴り止む。慌てて口を開き、彼女の名前を呼んだ。





「菜々緒!!」
「あーはいはいコチラ坂田でーす」






しかし聞こえてきたのはとてもも彼女とは似つかわない、間延びしたニートのような声だった。



「ニートの声ってどういうことだゴルァ!」
「信女さん、総員に連絡を。我が婚約者を誘拐したのは銀髪の侍です」
「まてまてまてまて!菜々緒はここに居ねぇんだよ!」
「……どういう、ことですか」
「路地裏に携帯だけが落てたんだよ。んでそれをたまたま見つけたトコでアンタから電話がかかってきたっつー訳だ」







路地裏、なんて、屯所に向かってきている菜々緒が行く筈がない。そうなると他者に連れ込まれたと考えた方がいい。…嫌な予感ほど当たるとはよく行ったものです。当たって欲しくは…なかったが。




「…坂田さん、あなたどうせパチンコで大量に無駄金をつかい、今後の暗い未来を考えるばかりの…つまりは暇ですよね」
「暇じゃありません、これから依頼殺到してんだよ」
「…エリートである私の頭はあなたと違って軽いものではないのですが、」
「喧嘩売ってんのか、あ゛?!」
「協力していただけませんか。菜々緒の命に関わるかもしれないので、もちろんお礼も差し上げます」
「…そうなっちゃ、おいそれと帰るわけにも行かねーな」






本当はこの様な方に助けを求めるなどあまりしたくはないのですが…菜々緒の為だと思うとそんな渺々たるプライドなどどうでも良く思えた。
彼は一番現場に近い人間だ。いちはやく事件解決するためには彼の力を頼る他ない。一先ず菜々緒を連れ去った人間を見ていないか目撃情報を集め、何かわかれば連絡するよう頼み通話を終了させた。





「、異三郎」
「信女さん、命令の変更です。菜々緒はどなたか存じませんが連れ去られてしまったようです。そんな命知らずを炙り出しますよ」
「わかった。ねえ、見つけ次第殺してもいい?」
「ダメですよ、信女さん。…それは私の役目ですから」







さあ、
花嫁奪還に参りましょう。









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