「……ふう」
おっとエリートとしたことが、職務中にため息を吐いてしまいました。しかし今の私はため息を吐かなければならないほど心が淀んでいるのです。
菜々緒さんと出かけた日から、彼女と会っていない。喧嘩したのかなど、変な勘繰りはよしてください。私たちはいつまでもらぶらぶですよ。
最近、幕府の役人が暗殺されるという事件が多発しているため、光栄なことに我が見廻組が城内の警備に任命されました。それ故にここのところまともに睡眠がとれていない日が続いている。局長の私が長く持ち場を離れるわけにはいきませんので。
そんな中で彼女と会うのも難しいというものです。本音を言うとこんな城、崩れてしまえばいいと思っていますが、何分、幕府に仕える身ですからそんなこと言えませんけどね。一ツ橋派だのなんだのと、私からしてみればとてもくだらない争いだ。そう、私はそういう人間なのです。
しかし、そんな醜い私でも、彼女の前ではただの人間になる。あの底なしの笑顔と優しさに、何度救われたことか。思い返せば思い返すほど彼女に会いたいという気持ちが強くなる。
…メールで我慢しましょう。
[ただ今城を警備中だお(^^ゞ]
[サボりですか]
[サボりじゃないお(;_:)
休憩だお☆]
[ウザいです]
…相変わらず、冷たいですね。先ほど底なしの笑顔と優しさに救われたといいましたが、それは奇跡的なものだったのですね。エリートでも落ち込みます。
最後に会ったあの時、顔を茹ったように真っ赤に染め、私と結婚したいと思っているといった彼女はなんだったのでしょう。幻でしょうか。
[ウサギってさみしいと死んじゃうんだよ]
[異三郎さんはウサギではないので死にません]
[菜々緒たん冷たすぎるお(ToT)]
[正常です]
[ 会いたいです ]
…私としたことが、無意識にそう送ってしまっていた。エリートとしての余裕を見せたかったのですが、彼女が関わるとどうも狂わされる。まあ、彼女の事なので「は?」とか返事返してきそうですけどね。簡単に想像できてしまうところがまた悲しいのですが。そういっている間に返信が来ていた。
[ わたしも ]
とても短い文章なのに、大きな喜びが心を支配する。私に会いたいと思っていてくれている。それだけで満足する私は余程彼女にほれ込んでいるのだろう。
[ 愛してます ]
ただ、貴女一人を。
「いきなりなんで真面目になるかな…」
さっきまでだお☆とか絵文字ふんだんに使ってた彼が、ただ一言「会いたいです」と送ってきた。馬鹿みたい。そんなの、私だって…。佐々木さんは忙しい人だから、重荷になりたくないと思ってたから言わなかったのに。そんな私の遠慮なんて気にすることなく、ほしい言葉をすんなり言ってのける彼が、とても愛おしかった。
[とっとと仕事がんばってきてください]
こんな可愛くない言い方しかできないけど、照れ隠しだってことはきっと彼にはばれているだろう。
通じ合っている感じが、とても心地よかった。
…早く、会いたい、な。
その数日後、土方さんから「佐々木が重体 大江戸病院」とだけメールが届いた。