あの後、昼食をたべ終えた私は高杉くんに引きずられるままに街に繰り出した。そしてゲームセンターに連れて行かれ、太鼓の達人を強制的にやらされた。なんか知らないけど高杉くんは太達を極めまくっている。鬼モードにも関らずフルコンボを叩き出しやがった。私もそこまで下手糞なわけじゃないのに「太達なめんじゃねえ」と若干キレられる始末。本当に高杉くんという人間が分からなくなった瞬間だった。太達をプレイして満足したのか機嫌のよさそう(実際機嫌が良かったのかは分からないけどなんとなく雰囲気が丸かった)な高杉くんはあっさりと私を解放してくれた。何気に親切に家まで送ってもくれたし。本当に分からないよ。高杉くんのこと。優しいのか、冷たいのか。いい人なのか、悪い人なのか。私の中でぐるぐると思想してみても答えが出るわけもなく、その日は夕食をとり、風呂に入ったらすぐに寝床についた。

そして夜は明け、だるい身体を引きずりながらいつも通りの時間に登校し、だるい授業をうけた。まあ私より銀八先生のほうが何倍もだるそうだったけど。しかしそんなだるくて授業放棄までしだした銀八先生に放課後国語準備室に来るように命令された。はて、私はなにか悪いことをしたでしょうか。頭の中で過去を振り返ってみても該当する出来事はなかった。まあ仕方ないからいくとするか。そう思いながらも放課後、準備室へと向かった。



「失礼します」
「おー、来たか」
「いったいなんの用ですか」



そう冷たく言えば「なんだよ冷てぇなー」と返された。あなたには色々恨みがありますからね。高杉くんに話しかけられている(脅されている)とき絶対気づいてたはずなのに助けてくれなかったし、昨日も私を拉致しようとする高杉くんを止めてくれなかったし!そう思って睨めばどうどう、とおさめられた。動物扱いですかそうですか。



「今日は蓮にこれやってもらおうと思ってな」



そういうと銀八先生は机の上にあるプリントの束を指差した。プリントの束は7つくらいに分けられていて机の端にはホッチキスが置いてある。何かの冊子を作るのだろうか。



「な、何で私が!」
「昨日授業サボった罰」
「(こ、こいつ!)」

あれは高杉くんが無理やり私を連れ出したのであって私に非はない。の・に!何で私が罰を受けなきゃいけないの!沸々と私の中の火山が噴火寸前だ。でも授業をサボったのも事実だから、なにもいえない。くそう、と手を強く握りながら、私は口を開いた。



「……高杉くんはどうしたんですか。彼もサボったじゃないですか」
「いやーアイツにもいったんだけどよォ、SHR終わったらマッハで帰りやがった」



あんの隻眼男……!!さらにあがる私の怒りに気づいたのか銀八先生は慌てて私の肩を叩く。



「ま、まあ、あれだよ。イチゴ牛乳やるからさ、頼むからやってくんね?人助けだと思ってよ」
「……先生、ただ単にこの作業が面倒臭いから理由をつけて私にやらせようとしてるわけじゃありませんよね」
「な、何で分かった……いやちげーよ?授業をサボるなんてやっちゃいけないってことをお前に分からすために罰を与えたんです!」



本当、とことん駄目な人間ですね。ため息を一つ吐きながらも私はソファーに腰掛けて作業を始めた。先生はホッとしたのか軽く肩をなでおろしたのを横目で捕らえたが然して反応を見せず手を動かす。……今日は何時に帰れるかな。



「なあ、蓮」
「……なんですか」



ぱちり、一つ目の冊子を先生に渡しながらそういえば先生はだるそうな目を私に向けた。



「最近、高杉と仲いいよな」
「……そうですか?」



先生が冊子を受け取ったのでまた1頁目を手に取る。



「高杉が最近学校に来るようになったの、蓮のおかげかもなぁ」



ぱちり、ホッチキスが的外れのところに止まってしまった。明らかに動揺した私に向かって銀八先生は意地の悪い笑顔を見せる。私はごほん、と態と咳払いをしてホッチキスの裏で針を取り、正規の場所に打ち込んだ。



「私は関係ないと思いますよ?」
「いーや、関係あるぜ。アイツ学校来てもお前構ってばっかじゃねーか」
「沖田くんとかとも話してますよ」
「そうかもしんねーけど、比率的には9:1くれぇだ」
「……」



それ以上否定は出来なかった。だって、本当のことだから。高杉くんは朝から授業も関係なく私に話しかけてくる。私が身を持って証明している。何で私に執拗に話しかけてくるのかいまだに理由は分かってないけど。



「もしかして、お前等付き合ってんの?」
「ハァァ!?」


ななななななななななな、何言ってんだこの変態教師!そんなことあるはずない!ありえない絶対ない!ないないない!なのに何で赤くなってんだ私は!



「え、まさか真実?」
「なわけないじゃないですか!冗談も大概にしてください!」



突き出すように2冊目の冊子を銀八に渡せば気持ち悪いほどニヤニヤした顔で受け取られた。この顔いらいらするなああ。



「でも蓮ちゃんは満更でもねえって反応だな?」
「違います!先生がへんなこと聞くからびっくりしただけです!」
「へー」



あんまり信用してないのか未だににやけ顔をこちらに向けてくる銀八先生を本気で殴りたいと思った。私と高杉くんが付き合うなんて天地がひっくり返ってもありえない。その前に私が高杉くんを好きになること事態がありえない。あんなに横暴で、わがままで、自分勝手な奴なんか…。でも以外にまじめな部分もあるし、ちょっっっとだけ優しいところもあるのも事実、なんだけどね。それに、高杉くんの笑った顔は綺麗だ。って何言ってんだ私!とと、とりえず、私が高杉くんを好きになるなんて絶対ありえないの!



「こ、これ以上この話したらわたし帰りますからね!」
「はいはい悪かったァ。じゃ、先生がイチゴ牛乳の素晴らしさについて語ってやんよ」
「結構です」



私がそういっても銀八先生はイチゴ牛乳について語りだしてしまった。もういいや、ほっとこう。そう思って冊子作りに専念しようとしても、なぜか高杉くんの顔がぽんと浮かんでくる。なんでなんでなんで!頭を振って消そうとしても頑固な油汚れの如くこべりついて離れない。

あーもー!!!




何だ、この気持ち

(どうしちゃったんだ私ィィィ!)
(オイ、聞いてんのかァ!?)


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