あの日以来、高杉くんは学校に登校するようになった。そして何故か私に執拗に声を掛けるようにもなった。正直ビビリます。怖いです。
「おい、西藤」
「なんでしょう」
「教科書見せろ」
しかも彼は私の隣の席だ。今日から。本当は長谷川君が隣だったのに高杉くんが一言「代われ」といえば長谷川君は涙しながら元高杉くんの席に移動した。なんだか申しわけない。私が悪いわけではないんだけど。
「おい、西藤」
「なんでしょう」
「シャーペンかせ」
「ねえ、学校に何しに来たの?」
教科書もないシャーペンもない。普通に見たらやる気はないように見える。実際やる気はないと思うんだけど。それでも、高杉くんは今日学校に来ている。それが不思議で不思議でならなかった。
「なにしに…ねえ」
「なんで私を見るんですか」
「なんで敬語なんだよ」
「いや、本能的に」
「普通に喋れや」
「ちょっとそれは難しいです」
「なんでだよ」
「なんでもです」
先生、高杉くんがしつこいです。なんて口にできるはずもないのでせめてもの視線を先生に向けるが相変わらずやる気のないだらしない声でマイペースに授業を行っている。期待は出来なさそうだ。
「おい、西藤」
「なんでしょう」
「今日俺に付き合えや」
「ごめんなさい」
「テメーに拒否権はねえ」
「本当にごめんなさい許してくださいお願いします」
「犯すぞ」
「どこまででもお供します」
先生、ここで脅迫されているか弱い女子生徒がいますよ。再び視線を向けても今週のジャンプについて語りだしている先生は気づかない。教師失格です、あなたは。
「物分りがいいじゃねーか」
にやり。高杉くんは笑いました。正直怖いです。いい予感もしません。本当助けてくださいお願いします。もうこの際山崎君でも構わないから。そう思って逆隣に視線を向ければ勢いよくそらされた。山崎君とはもう絶交だ。
「よし、んじゃ行くぞ」
そういうと高杉くんは立ち上がり、机の横に掛かっている私の鞄と私の腕を引っ掴むと教室のドアまでずかずかと歩き出す。
「ちょーっと高杉くん?蓮ちゃん引き連れてドコ行く気?授業中なんですけど、一応」
一応ね、一応。あんなの授業とは言いませんよ先生。そして速く私を助けてください。そんな私を他所に高杉くんはまたにやりと笑った。
「野暮なこと聞くもんじゃあるめーよ」
ああ、
わたし生きて帰れるのでしょうか。
拉致されました。
(どこいくの、高杉くん)
(お楽しみだ)
(果てしなく不安)