学園祭もあと一週間というところまで迫ってきている中、私たちの出し物である「THEありきたり 執事メイド喫茶」の準備も着々と進んできている。今日から教室内の飾りつけも始めようということになり、装飾担当の私もいろいろ配置を考える。



「蓮ちゃん、いまからテーブルクロス買ってこようと思うんだけど、どんなのがいいかな」

「執事メイド喫茶だからチェックとか柄物より白のレース系がいいかな」

「わかったよ!じゃあ行ってくるね」





同じ装飾係の新八君を見送り、私も気合を入れる。よし、私も壁の装飾をしてしまおう。ちょっと豪華な雰囲気を出すためにレースを飾ろうと考えてあらかじめ買っておいた。少しでもお客さんを多く入れたいもの。…こんなにも学祭のために真面目に考えているのは私と新八くん、そして山崎君くらいだろうけど。自分で言って悲しくなる。

はあ、と苦労のため息を吐き捨て、脚立を設置する。このレースを飾るためには椅子や机を使っても届かないから仕方ないことだけど…意外とこれ、高いんだよね。いや、怖いとかじゃないけど、何ならここでタップ踏んでもいいけど?ごめんなさい嘘です。ちょっと怖いです。こんなことなら新八君引き留めて代わってもらえばよかったな…。

なんて今更なことを考えながらも脚立に上り、飾りつけを始める。






「おーい蓮ーボンドどこでィ」
「教卓に、乗って、るで、しょーが」
「お前どうしたんでィ。生まれたての小鹿みてェになってんぜィ」
「う、うるさいな!」
「もしかしてお前…」
「な…なによ」







ちらりと沖田の方を窺うと、奴はそれはそれは楽しそうな、新しい玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべていた。…激しく嫌な予感しかしないのですが。







「お前ェ、怖いんですかィ?」
「は?こここ怖くないしこんなの余裕だしマジ朝飯前だし。…うそうそうそォォオ!怖いです心臓とびでそうですだから脚立蹴るのやめてェェエ」
「やめてくださいだろ」
「このっ、いい加減にっ…!!」







あまりにも悪質すぎる苛めに苛立ちを覚えた私は睨み付けるべく沖田に向かって振り返る。その時だった。振り返った反動で思わず体制を崩してしまった。
何とか手を伸ばして脚立にしがみつこうとしたけど、反射神経のない私はすぐに腕を伸ばすことができなかった。
あ、終わったな…。もう走馬灯的なものが頭をよぎったよ今。

ぎゅっと強く目を閉じて、来るであろう痛みを覚悟した。








「あっぶねェな……!」

「え、」







来るはずの痛みはなくて、目を開けたら至近距離に沖田の端正なお顔があった。
え、これは、どういう、状況?
今の私は沖田に抱き留められている。もしかしたら、受け止めてくれたの、かな。ひょろい男だと思ってたけど、剣道やっているだけあって、私を抱く腕にはしっかりとした筋肉がついていた。あ、沖田も男なのか。そんなこと思ってしまった。
途端に恥ずかしくなり、やんわりと離れようとしたけど、何故か腕の力は弱まるどころか、一層強さを増した。






「あの、沖田?受け止めてくれてありがとう…もう、大丈夫だよ、だから…」
「………細っせェ」
「は?」
「こんなんで落ちたら死んでたろ」
「え、というか落ちたの沖田のせい、」
「………、」







沖田が何か言いかけた時、私の腕が強く引っ張られた。突然のことに対応できなかった私は思いっきりバランスを崩して倒れこむが、私を支えたのは誰かの胸板だった。






「どういうつもりでィ……高杉」
「………」
「高杉くん?」







沖田の次は高杉くんの顔が至近距離にあった。なんだこの人たちどんだけ綺麗な顔してんだよ。私はそんな場違いなことを想っていた。というかそのお綺麗な顔はなぜかとてもお怒りのように見える。なんだこれ、なんだこの修羅場的な雰囲気は。







「人のもんに触れんじゃねェ」
「…え?」
「こいつァ、俺の」





え、え、なに俺の?俺の何?何故か私の心臓は大きく高鳴った。







「友達だ」








………ん?いま高杉君のお口から高杉君に似合わない単語ベスト3の中に入る言葉がつむぎだされたように思ったんですけど…気のせいかな。少しときめいていた私も恥ずかしいけど、ある意味友達という言葉も普通に嬉しいやら恥ずかしいやら。
クラスのみんなも高杉君の言葉が信じられないのか目が点になっている。いやたぶん私もなってるだろうけど。

…高杉君は私を友達と思ってくれていたのか。無理やりサボらせたり貸したシャーペンが返ってこなかったり宿題のプリントを名前のところだけ自分の名前に書き換えて提出して私が未提出で罰を受けたりしているのをあざ笑ったりしたけど、うん。










「友達…ねえ」











沖田は挑発的な笑みを浮かべていた。















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