高杉くんと二人で歩くという行為は、3年生になってから何回もしてきた。
高杉くんに拉致されて無理やり授業を強制的に(ここ重要。テストに出ます)サボタージュさせられた日から、何故かしょっちゅう「けーるぞ」と言って私を無理やり(ここ重要。テストに以下略)登下校をともにさせる。
正直、高杉くんの考えることはよくわかりません。どんな人なのかも。
不良かと思えば塾に通っているというし、だからと言っていい子というわけでもない。平気で授業サボるし、ピアスあけてるし、不良っぽい友達も多い(この前たまたま出くわした)
だけど、たまにだけど、優しい人なのかな…とか思ってみたり。
今だって、こうして一緒に買い出しに付き合ってくれているわけだし。
斜め前を歩く高杉くんの背中を見つめていれば「なあ」と声をかけられた。
「どうしたの?高杉くん」
「沖田」
「沖田がなに?」
「お前どう思ってる」
「はい?」
何を言い出すかと思えば、沖田の話?どう思ってるって。
「ただの悪ガキ…かな」
「そんだけかよ。すきだのなんだのねーのか」
「絶対ありえない。というかなんでこんなガールズトークしてるの?高杉くん乙女なの?」
「ブチ犯すぞ」
「ごめんなさい」
しかし、なんともちゃんちゃら可笑しい話だ。
私が沖田を好きになるなんてそんなの地球が滅ぶとしてもありえない。
もっと例えるとお妙ちゃんが近藤君を好きになるくらいありえない。
もっと例えると銀八先生がさっちゃんを好きになるくらいありえない。
もっと例えるとメガネを取った新八君くらいありえない。
「きっと私のことクソ女程度にしか思ってないよ、沖田も」
「…鈍い女だな」
「はい?」
「んでもねえ。ほら、まずどこ行くんだよ」
「ホーマッコ」
なんで高杉くんがこんな話題を振ってきたのかわからない。
だけどこれ以上この話題を続ける気は無いようで、黙々と歩く高杉くんを、また見つめる。
なんだか今日の高杉くんはいつも以上にわからない。
―――――――
買い物を終えると、私たちの両手には大量の荷物があった。
重い荷物を率先して持ってくれた高杉くんはやっぱりいい人なんだと現金なことを思ってみたり。
一刻も早く学校に帰るべく足を動かす。
すると、高杉くんはまた私に声をかけた。
「今度はなんですか?」
「俺をどう思う」
「不良」
「本当いい度胸だなお前」
「…だけど、ちょっと優しい。なんだかんだいい子…だと思う」
「いい子だァ?」
高杉くんは何故か喉を鳴らして笑う。珍しい彼のそんな表情にときめくのはきっと私がイケメン好きだからだろう。なにせ彼は顔だけはいいから。そう自分に言い聞かせる。
「お前は本当アホというか」
「それ悪口」
「…俺ァお前のこと嫌いじゃねえぜ」
そんな言葉に、ときめきとは違う、ドクンと大きく心臓が高鳴った。なにこれ、こんなの、知らない。