あの後、15分ほどで十四郎が万事屋にやって来た。洗濯物を既に干し終わっていたので、最後に置き手紙を残し、パトカーに乗り込んだ。
車内で他愛の無い話をしながら真選組屯所に向かう。「パトカーに乗るの初めてだー」と言うと笑って「そら、そうだろうな」と返された。
昔と比べてよく笑うようになったもんだ。そう染々と思っているうちに屯所に着いたみたいだ。
車戻してくるからここで待ってろ、と言われ門の前で降ろさる。
再び走り出した車をぼーっと眺めていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あれ、万事屋の姐さん?」
「あ、山崎くん」
現れたのはミントンのラケットを手に持った山崎くんだった。そういや、彼とは花見以来だね。
笑顔でこんにちは、と挨拶してくれた山崎くんに同じようにかえした。
「どうして姐さんが屯所に?」
「今女中さん達風邪ひいて大変なんでしょ?手伝いに来たの」
「本当ですか!?凄く助かります!今朝は隊士が作ったんですけどもうそれは酷くて…」
「そっか…。少しでもサポート出来るように頑張るね」
「ありがとうございます、姐さん!」
ふわりと優しい笑顔を向けた山崎くんにほっこりしてしまう。
なんだかその優しい雰囲気が新八くんと似てるかも。
余計に彼と山崎くんが重なってしまい、無意識に右手を山崎くんの頭にのせていた。
吃驚して声をあげる山崎くんに私も驚き、手を引っ込めた。
「ご、ごめん!なんだか山崎くん、新八くんと雰囲気似てるなぁって思ってたら無意識に手が…気を悪くしたら謝るよ」
「いいいえ、気にしないでください!頭撫でられるなんて普段無いんで驚いただけです!」
「……そう?」
「はい!…何て言うか…姐さんって本当に、姉さんみたいですね」
「え、そうかな」
「そうですよ!…新八くんが羨ましいな」
「え?」
「何でもないですよ」
山崎くんが少し寂しそうな顔をしたのが気になったけど笑顔を向けてくれたので追求しないことにする。
そんなとき、遠くから聞きなれた声と、どたばたとした足音がきこえてくた。
その音は段々近づいてきて、軈て姿を表す。
「朱鶴姉えええええええええええ!!」
「た…隊長!?」
「総悟ー」
総悟は勢いを落とすことなく私にタックルをかましてきた。思わず倒れそうになったけどそこは後ろにいた山崎くんが必死に支えてくれた。ありがとう、山崎くん。
「何で朱鶴姉が屯所にいるんでさァ!」
「女中のお手伝いに来たんだよ」
「てことは、ずっと一緒にいられやすねィ」
「お前は仕事があんだろうが!!」
いつのまにいたのだろう、十四郎が総悟に突っ込んだ。総悟は途端にむすっとした表情に戻り、十四郎を睨んだ。
「土方さん、何で俺に言わなかったんですかィ」
「言ったらお前、見廻り行かなかっただろう」
「当たり前でさァ!」
「威張んなァァァ!」
始まってしまった十四郎と総悟の喧嘩に私と山崎くんは同時に溜め息を吐いた。
私を挟んで喧嘩しないでよ。いつ斬り合いが始まっても可笑しくない雰囲気にそろそろ止めないと、と思った私は口を開く。
「お、朱鶴。もう来てたのか。や〜今回は世話になる!」
そんな空気をぶち壊すように屯所の中から勲くんが出てきた。二人とも殺気を戻し、勲くんに目を向けたのでほっと安堵の溜め息を吐く。
「勲くんや十四郎の頼みだもん、断れないよ」
「そうか!ま、立ち話もなんだ。屯所でゆっくり話そう」
「…私仕事しに来たんだよ」
「む、そうだったな。だーはっはっはっ!」
いつもの勲くんペースに笑うと総悟も笑った。十四郎と山崎くんにも目を向ければ二人も笑っていた。やっぱり勲くんは凄いなーっと思いながらも総悟に手を引かれながら屯所に入っていった。