「―――あれから三年後、俺が銀時の居場所を掴みそれを朱鶴に知らせた。江戸に住み着いている銀時に怒りを表し、朱鶴が此方へ来て、今に至るという事だ」
桂さんが全てを話終えた後、沈黙が流れた。
僕と神楽ちゃんに至っては驚きすぎて声を出す事が出来ない。二人にそんな事があったなんて……知らなかった。
銀さんは朱鶴さんが大好きで朱鶴さんも銀さんを思っていて、幸せな夫婦だな、なんていつも思ってた二人。
だけど、その過去にはこんなにも悲しいことがあったなんて。
人知れず、僕の目には涙が浮かんでいた。
「マミー達にそんなことがあったアルか…」
「うむ。だが今はそれを感じさせないほどアイツ等は幸せそうだ。二人にとっては、それでいいのだろう」
そうだな、と僕も思う。過去に辛いことがあったけどそれを忘れるくらい今を楽しくいきれば、二人は幸せなんじゃないかって。
そのための手伝いを僕たちでやる。
僕たちも銀さんと一緒に守るんだ、朱鶴さんを。二人の幸せを。
「たでーまー」「あっこら!靴はちゃんと揃えなさいよ!」
玄関から聞こえてきたいつも通りの二人の会話に僕や神楽ちゃん、桂さんも思わず吹き出してしまった。
守るんだ、この幸せを。
「おかえりなさい!朱鶴さん!」
「マミーおかえりヨー!」
「ただいま、新八くん、神楽ちゃん!」
「新八くーん?神楽ちゃーん?銀さんもお帰りだけど?差別かコノヤロー」
「その程度で怒るとは、やはりまだ子供だな」
「まだいたのかよ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
「銀さん」と、僕が呼べばやる気のない目が僕をとらえる。それを確認してから神楽ちゃんに視線を向ければ大きく頷いてくれた。
僕は微笑み、再び銀さんを見据える。
「これからは僕たちも一緒に守ります」
「だから沢山頼ってヨ」
銀さんは大きく目を見開くと桂さんを睨んだ。
「ヅラくん?もしかしてお前…」
「喋っちゃった☆」
「ふざけんなハゲェェェ!」
「ハゲじゃない、ズラだ!…間違った、桂だ!」
銀さんは参ったように1つため息を吐き、がりがりと頭を掻く。
そして呆れたようにフッと笑って、僕たちの頭にぽんっと手を置いた。
「……ありがとよ」
「はい!」
「うん!」
僕たちが大きく返事をすれば銀さんはぐりぐりと掻き回し始めた。
何すんですか!なんてじゃれあってる僕たちを朱鶴さんは暖かな目で見つめている。
あの優しい目が、僕は大好きです。
「マミーは私が守るアル!」
「僕もです!」
「ありがとう。……二人とも大好き」
そう、にこりと笑いながら言うもんだから嬉しくて頬が紅潮する。
神楽ちゃんは朱鶴さんの名前を叫びながら抱き着き、僕は朱鶴さんの手を握る。
そんな僕ら三人を全員包み込むように銀さんが腕を広げた。
あ、これが、
家族の温かみなんだ…。
温もりに包まれて
(俺は影からお前たちを助けよう。
ピッコロ的な位置で)
「最後に語るのはいいですけど、危ないネタ振り撒くの止めてくれませんか」
「……」