一人で店を回って数件目。今は天人が経営するとあるダンスバーに来ていた。未だにギャル娘……公子ちゃんの目撃情報は一つもない。可笑しいなあ、あんなに特徴のある子なら少しぐらい情報が入ってくると思ったんだけどなあ。
「すいません、お尋ねしたいことがあるんですけど、この子に見覚えはありませんか?」
そう言ってバーテンダの天人に写真を見せれば「コイツは、」と呟いた。
「なにか知ってるんですか!?」
「いや、同じ奴を探している奴をさっき見たんでな」
もしかして、銀時達?もしかしなくても十中八九銀時達だろう。さっきのやり取りを思い出してムッとしたが、取りあえず天人に礼を言ってその場を離れた。銀時もこの店に来たんだ。さっきって言ってたからそう遠くに行ってないはずよね。そう思って回りをキョロキョロと見回した。するとカチャリとひんやりとした鉄の塊を左のこめかみに当てられた。
「お前か、コソコソ嗅ぎ回っているやつは」
そこには体格の良い天人が数人いた。……おっとこれは、やばめですか?
「あっちでも怪しい奴を捕まえたらしい。合流するぞ」
銀時たち!?捕まったってまさか、あり得ない。強いだけが取り柄みたいな銀時がそんな。どうか無事でいて、みんな……!!私は引き摺られるまま、天人に着いていった。
「おい、こっちにも怪しい奴がいたぞ」
そう言って天人の群がる中に放り込まれた。ソコには予想通り、神楽ちゃんと新八くんがいた。
「マミー!!」
「朱鶴さん!!」
「二人とも!怪我はない?」
見たところキズが無い二人にホッとしてから回りを軽く見回す。銀時はこの場に居ないみたい。どうしよう……私だけでこの人数を倒せるかな。……ううん!出来る!私だって、努力してきたんだから。見てろよ、馬鹿銀時! 私は素早く袖の中に隠していた折り畳み式の木刀を伸ばし、敵に一撃をかました。敵はいきなりのことに対応できなかったのか、数メートルぶっ飛んで壁に食い込み気絶した。
「何すんだこのアマっ!!」
「主婦をあまりなめない方が良いよ。バーゲンで鍛えたこの力、見るが良い!!」
「バーゲンだけでそんな強くなれるのォォォ!?」
新八くんの素早いツッコミに感動しながら向かってくる天人を次々と確実に倒していく。
「つ、強い!!」
「マミーかっけぇアル!!」
五、六人ほど倒して一旦距離を置いた。あー流石に辛くなってきた。歳ですかね。でも、そんな弱音は行ってられない。後ろの二人は絶対に守らなきゃ。
そう意気込んで一歩踏み出した。
「調子に乗るなァァァ!!」
パンッ
突然足に力の入らなくなった私は地面に吸い込まれるように倒れた。
「マミーィィィ!!」
「朱鶴さァァァん!!」
二人が慌てたようすで駆け寄ってきた。太ももが燃えるように熱い。私は足を撃たれたことをようやく理解した。撃たれた部分からドクドクと血が溢れ、熱を帯びる。
「うっ……」
私がうめき声を挙げれば二人は悔しそうに握り拳を作って立ち上がった。
「お前ら絶対に許さないアル」
「僕たちの大切な人を傷つけた罪は大きいですよ」
そう言って構える二人の背後に影がさした。
「神楽ちゃ、新八く……ん……!!後ろっ!!」
時既に遅し。
二人は背後にいた天人に口元を布で宛がわれ、フラッと力が抜けたように倒れた。
「何を、した!!」
「転生卿を少しな」
転生卿……?!ニュースで聞いたことがある。とても中毒性が高い麻薬の一種だと。そんなものをどうして天人達が……!!
「この女はどちらにせよ動けねえ、お前運べ」
「へい」
そう言って天人の一人が乱暴に私を肩に担いだ。
「離して……!!」
「少し黙ってろ」
その言葉の後に頭に強い衝撃を受けた。
やばい、意識が途切れる。二人を守らなきゃ……大事な、家族を―――
私はそこで完全に意識を失った。