「本当にもう帰っちゃうの?まだ泊まっていけば良いのに………」
「いいのよ。あまり長居すると二人に悪いしね。邪魔者はさっさと退散するとするわ」
「お、お母さん!」
「うふふ」
お母さんは結局、1日泊まるだけで帰ってしまう事になった。
そんなお母さんを私と銀時は玄関の外まで見送りに来ていた。
私としては久しぶりにあった義母ともっと居たかったって言うのはあるけど……我が侭いう歳じゃないしね。
「実はお父さんに内緒で来ちゃったのよ。ご飯作り置きしなかったから少し心配なの」
「え……ドンマイ、お父さん」
お母さんは天然と言うかなんと言うか、自由奔放だからお父さんも手を妬いていた。
まあ、そこがお母さんの魅力だったのかな。
「じゃあもう行くわね。元気でね朱鶴、それから銀時くんも」
「お母様もお元気で」
「またいつでも来てね」
「ええ」
お母さんはゆるゆると手を振りながら歩いていった。
そんなお母さんの背中が見えなくなるまで私達も手を振った。
「ごめんね、銀時。突然お母さんが来て驚いたでしょ」
「気にすんじゃねーよ。朱鶴の母ちゃんに会えてよかったぜ」
「そっか。……あー寒いね、早く中入ろうか」
「朱鶴」
身体が大分冷えてきたから中に入ろうと一歩踏み出したとき、銀時に名前を呼ばれた。
ゆっくりと振り返ればそこにはいつになく真剣な目付きをした銀時がいた。
「どうしたの、銀時」
「なあ」
「うん」
「結婚するか」
… … …
「え」
「結婚するか、俺ら」
一体この人は何を言っているのだろうか誰か通訳を呼んできてください早急に。
信じられない、今なんて言った?
「ななな、何突然……」
「朱鶴の母ちゃんにお前を頼まれたし、俺も腹くくる時だと思ってな」
そうだとしてもなんか……あれ、ムードとかなんかそこらへん配慮したりしようよ。
私達ちゃんちゃんこ着てるんですけど、おもっきり普段通り何ですけど……!
「何ですかァ、朱鶴ちゃんは俺と結婚したくないんですかァ」
「そういう訳じゃないけど……なんかこう、ムードがないよね」
「ムード?なにそれ食いもん?」
「だってもっとなんか違う言い方ってあるんじゃないの?!もっとトキメクような!きゅんってするような!爆弾投下するような!!」
「要求が多いんだよテメェは!!俺がドンだけ気合い入れて言ったと思ってんだよコノヤロー!!」
「絶対気合いも緊張もなかったよね、普段通りだったよね?!」
「あー…わァーったよ!」
頭をガシガシと乱暴に掻き乱した銀時は私の肩に手を置いて顔を近づけてきた。
「世界で一番朱鶴を愛してる。だから、俺と結婚してくれ」
綺麗な緋色の瞳は真剣そのものだった。
馬鹿みたいに直線でドラマで聞いたことのあるようなありきたりな告白。だけど、馬鹿みたいに喜ぶ私がいた。
私は胸の前で両手を握り、照れながらもニッコリ笑った。
「うん。喜んで」
「ほ、本当か?」
「うん」
「嘘じゃねえよな?」
「嘘じゃないよ」
「よ………
よっしゃァァァァ!!やったぜコノヤロォォォ!!」
突然痛いくらいに銀時に抱き締められ、私はうっと唸った。
そんな私には気付かずに思いっきり喜ぶ銀時。
なんだか私もだんだん嬉しさが込み上げてきて銀時の背中に腕を回し、強く抱きついた。
貴方らしいプロポーズ
(だけどその言葉は死ぬほど嬉しかったよ)