私は冷蔵庫の前でうんうんと唸っていた。
本当に銀ちゃんの食欲は計り知れない。
つい先日タイムセールで大量に食材を手にいれたはずなのにだよ?冷蔵庫の中は調味料といちご牛乳しか入っていなかった。





「また買い出しか……銀ちゃーん!」





いつもの様に銀ちゃんを呼んだ。
しかし何も返ってこなかった。あれおかしいな。


不思議に思った私は居間に顔をだした。
その居間のソファにジャンプを顔に被せて居眠りしている銀ちゃんがいた。






「まぁたこんなところで寝て……ぎ、」








銀ちゃん、と呼んで起こそうとした口と手をピタリと止めた。
いつも何だかんだ言って荷物持ってもらってるからな。報酬というなの糖分をあたえているけど。
今日くらいは一人でもいいかなと思った私は首にマフラーを巻いて、財布を片手に家をでた。







―――――――







今日の夕食は鍋にした。白菜やえのきや豆腐、それとんまい棒(何かくじ引きで当たった)が入ったレジ袋を片手に家路を歩いた。
最近は本当に寒い。
段々と近づいてくる冬の足音に嬉しさと倦怠感が心の中を支配した。

いや、冬は好きだよ?
雪とか凄く綺麗だしクリスマスとかお正月とか行事一杯あるし!
でも私は寒さに弱いからコタツ離れが出来ないんだよねぇ……。

そんなどうでもいいことを考えながら歩いていれば数メートル先に何かが落ちていた。
良く目を凝らしてみればそれが人だと言うことに気がついた。
え―……銀ちゃんといい、私は倒れている人と遭遇するプロですか。






「あの……大丈夫ですか?」







取り敢えず声を掛けることにした。
黒の綺麗な長髪だったので女性かと思いきや相手は男性だった。







「お主……」

「は、はい」

「んまい棒を、持ってはいまいか」






何でだよ。何でんまい棒何だよ。そして何でいいタイミングでんまい棒持ってるのよ私……!
取り敢えずレジ袋を漁り、んまい棒を渡してみた。






「む、チーズ味か。俺はどちらかと言えばコーンポタージュ派だ」

「いやそんなこと知りませんし。いらないならあげませんよ」

「スイマセンデシタ」






んまい棒チーズ味を受け取った男の人は側にあった私の馴染みである公園のベンチに腰掛けた。
え、これ帰っていいのかな。いいよね銀ちゃんお腹空かして待ってるんだし。
そう思っていたら男の人が自身の隣をポンポンと叩いた。なに、座れってか。






「早く来んか。一緒にんまい棒を食おうではないか」






え、なんでこの人こんなに馴れ馴れしいの?さっき会ったばかりだよね?てかさっき倒れてたよね大丈夫なの?
そんなことを問いかけても無駄だとわかった私は溜め息を吐いて男の人の隣に座った。






「お主、名はなんと申す」

「えっと、篠山朱鶴です」

「うむ、朱鶴殿か。俺は桂小太郎だ」

「(いや聞いてないし……!)……桂さんはどうしてあんな道端に倒れてたんですか?」






一番疑問に思っていたことを桂さんに問いかければんまい棒を開封しながら答えてくれた。




「つい先日までは仲間数人と行動していたのだが……むしゃむしゃ、はぐれてしまってな、もぐもぐ腹がへっむしゃてたおれてもぐしまったのだ」

「あの、食べながら喋るのやめてくれませんか。後半何言ってるかまったく解らなかったんですけど」





飛んでくる食べカスから回避しながらそう忠告すると「すまない」と言った後に口の中の物を飲み込んだ。






「ここの村までは一緒に来たのだが、直ぐにはぐれてしまってな。今も探しているところなのだ」

「そうですか、それは大変でしたねじゃあ私は夕食を作りに帰らなきゃいけないのでさよなら」

「ちょ、えぇぇ!?こんなに困ってるのに見捨てるのか貴様ァァ!!」

「いや知らないし!ほんと家で夕飯待ってる人いるから!」





ベンチから立って走り出そうとしたら荷物を持っていない方の手を捕まれた。





「は、離してくださいよ!」

「離さんぞ!俺はこの辺りを全く知らんのだ!」

「何でそんな得意げな顔してんの!?迷子になってるんだよねめっちゃダサイよね!?」






てかこの人握力強っ!手首痛いんですけど!
若干涙目になってきたその時、








「ぶへらっ!」








いきなり桂さんが数メートル吹き飛んだ。








「人の女に手ェだすたァいい度胸だな」









後ろには木刀を肩に乗っけて青筋を立てている銀ちゃんの姿があった。





ぎ、銀ちゃん!なんでここに……?」

「起きたら朱鶴が居ねェから来たんだけどよォ……今時ナンパですかコノヤロー」





ぶっ飛んだ桂さんを死んだ魚のような目で睨む銀ちゃんに冷や汗。
いやぶっ飛ばしてくれたのは助かったけどナンパされてた訳じゃないからね。






「な、何をするのだ貴様……!!」





銀ちゃんを振り向き、睨みつけた桂さんは突然目を見開いた。
そんな桂さんを見た銀ちゃんも同じく驚いた顔をした。






「!!……お前ェは」


「お前……銀時か?」


「……ヅラか?」


「ヅラじゃない桂だァァァァ!!」








……え、

お知り合いですか?








然の出会いと再会
 

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