「朱鶴!ちょっどこ行く気ですかーコノヤロー」
「は?」
祭りの次の日、いつもどおりお買いものに行こうと草履を履いていると居間から焦ったように銀時がやってきた。いつもならそんな詮索しないくせに今日はやたらと突っかかってくる夫に疑問しか浮かばなかった。というか、ウザイ。
「どこって…スーパーだけど」
「待て待て、行く、俺も行くから」
「いや来なくていいよ」
「いーから」
「いやいらないって邪魔」
「邪魔!?」
余りにも騒々しいので銀時が傷つきそうな言葉を言うと、予想以上に効果は覿面だったようだ。ガーンという効果音がぴったりな顔をして私を見るもんだから流石に罪悪感が生まれる。……ちょっと言いすぎた?
「うん…邪魔は言いすぎた、かな。ごめんね」
「ごめんで済むなら警察はいらねーんだよバカヤロー!この傷ついた心はすぐ治るもんじゃねーよ!」
「はいはいはいごめんごめん。じゃ、行こっか」
「テキトーじゃね?」
チクショーと言いながらもブーツに足を通す銀時を待ってから一緒に外に出る。もちろん、神楽ちゃんたちに行ってきますと声をかけてから。
今日も外は晴天。こういう日はいくらか気分がよくなるよね。
「足、大丈夫か?」
「うん。歩く分には何の問題もないよ」
「ん」
昨日銀時にテーピングをしてもらったから少し動かしたくらいじゃ痛くもなんともない。手首の方も軽傷だったので動かせないなんてことにもならず安心。…って銀時にも言ったはずなんだけど、相変わらずの心配性なんです。
この人は自分のことになると無頓着のくせに人のことになるとこうだ。妻としてはもっと自分の身の心配もしてもらいたいものだけど。
そう思っていると怪我をしていないほうの手が一回り大きな手に包み込まれる。ふと上を見上げると幸せを噛みしめるような微笑みを浮かべる銀時がいた。
「なーに?」
「やっぱ、こうやって隣にお前がいることが幸せだーと思っただけ」
「……ふーん」
そっけない返事を返してみてはみたものの、頬の赤みを隠すことはできなかった。この人は唐突に恥ずかしいことを行ってくるものだから不意打ちを食らう。視線を彷徨わせ、顔を背けてみるけど、どうもこの熱は暫く冷めそうにない。
「どーしよ、俺の嫁可愛すぎる」
「う、うるさいな!」
主導権を握られている感じがとても気に食わない。
だけど、まあ、たまにはいいかな。なんて思う今日この頃。