走って俺を探しに来た新八の話の内容は、予想していなかったわけではないが、起こってしまった最悪な事態。驚き慌てふためく前に、俺はとりあえず歌舞伎町を駆け回る。あのクソメガネ!お前に頼んだのが馬鹿だった!マジあのメガネかち割んぞ!

手分けして探してる真選組から聞いた話じゃ、いま幼女誘拐が多発しているらしい。そいつらの狙う幼女は黒目黒髪の純和風な容姿で、将来有望そうな顔をしている女児。

………まるっきり3歳の朱鶴だろォォォォがァァァァアァ!寧ろ朱鶴を指しているんですか?といいたいくらい、100%条件がそろっていた。近くを探してもいなかったことから朱鶴が誘拐されたのは間違いねえ。





「くそッどこ連れてきやがった…!!」

「銀さん、銀さん!わかりますけど、少し落ち着いてください!」

「落ち着いてられるか!!」






あいつは、3歳の朱鶴は"孤独"におびえている。
今頃知らないやつのそばで泣いているのかもしれない。
もし、母親のように犯人に暴力でも受けていたら。
そう考えるだけで冷静なんて保つことができなかった。

それは今別のルートで朱鶴を探している真選組の奴らも一緒のようだ。あのいつも飄々とした態度の沖田くんでさえ、余裕のない表情を見せていた。
あいつらはどうしようもねえ集団だが、朱鶴の命がかかってんだ、すぐに探し出す手がかりを見つけるだろう。



《ザザッ……旦那、犯人の潜伏先がわかりやした》




真選組から一つ拝借した無線機から沖田くんの声が聞こえる。




《歌舞伎町外れにある廃港。そこが奴らの拠点でさァ》

「あそこか…、ここから5分とかからねェ!」

《俺らはちょいと離れてましてね、後から追いかけまさァ…朱鶴姉を頼みましたぜ》

《朱鶴に何かあったらタダじゃおかねぇぞ》

《朱鶴ゥゥゥ!!!》

「うるせェェエ!黙って俺に任せとけ!」





そこで無線機を新八に投げ捨て、更にスピードを上げた。

頼む……無事でいてくれ、朱鶴!!






* * *


くらい、くらい。
ここがどこなのか、わからない。

さっきまで、ぎんたんと、しんちゃんと、ぐらちゃんがいたのに……いまはしらない人が朱鶴をみてる。

ぎんたんたちとはちがう。あたたかくない。
ぎんたんたちはあたたかくて、あかるくて、やさしくて。
あまいものもたべさせてくれた。おいしかった。

いまのおかあさんもやさしい。
だけど、まえのおかあさんは朱鶴をぶってばかり。

朱鶴がわるいの。
朱鶴がいけないの。
だからおかあさんはおこってばかりなんだよね。
だから、朱鶴をすてたんだね。

いまのおかあさんはよく言う。




「朱鶴は何も悪くないのよ」




そういってわらうの。こうやって、にって口をあげることを“わらう”っていうことを、さいきんいーちゃんが教えてくれた。でも、どうしてわらうのか、朱鶴はワカラナイ。

そういえば、ぎんたんたちも、わらってた。
なんでなんだろう?なんで?
だけど、ぎんたんたちの笑顔は、とても、あたたかくて、もっと、もっと、みていたい。

もういちど、あいたい…ぎんたん。








「朱鶴ゥゥゥ!!!!」






ぎんいろが、まぶしかった。
























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