「今日台風9号が直撃するでしょう。皆さん、なるべく外に出ないようにしてくださいね。

死にますよ」






あまりにも素敵な笑顔で死の宣告をするお天気お姉さんに私は恐怖で身体がぶるっと震えた。
この時期といえば必ずといっていいほどの確率で台風が上陸する。
今年の台風は年々より大型らしい。






「―――と言うことで銀ちゃん。屋根の補強しに行ってきて下さい」

「どういうことだよ。お前テレビ見てた?お天気お姉さんの言ってたこと聞いてた?外出たら死ぬって素敵な笑顔で言ってたろ?そんなに銀さんを亡き者にしたいの?」

「別にそう言う訳じゃないけど風の弱いうちに屋根の補強しないとここの家が亡き物になっちゃうからね」





今私がすんでいる家はお世辞にも新しく立派で頑丈な家とは言えない。築うん十年の木造建築でどちらかと言えばボロ家だといえる。
大型台風なんて来たら屋根がフライトアウェイしてしまうよ。





「銀ちゃんまたホームレスに逆戻りしちゃうよ、いいの?てかやってください。私までホームレスにする気ですか」

「たくっ……わーったよ!やりゃいいんだろ!お前ェはケーキでも用意しとけコノヤロー」




あ、見返り求めるんだ。まあ仕方ないか。我が家守ってくれるならそれ位してあげないと銀ちゃんが可哀想だ。
私は予め用意していた大工セットとヘルメットを持たせ、銀ちゃんを見送った。







「屋根から落ちないでね」


「ヘイヘイ」










――――――








「お、お疲れさま」


「やべぇよ、マジで死ぬかと思った。途中強風に拐われて黄泉の国に連れていかれるところだった」






窓をガタガタと揺らす強風。どうやら本格的に台風が上陸してきたらしい。
窓と同じくらいガタガタと身体を震わせる銀ちゃんに多少なりとも罪悪感を抱きながらも今年はこれで安心だと安堵のため息を吐いた。






「銀ちゃん、ケーキ用意したから元気だして」


「ケーキィィィィィ!」







タイフーン!

(糖分あれば台風にだっ勝てるぜコノヤロー)
(子供か!)







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