数分後、そよちゃんは一人で降りてきた。
十四郎はそんなそよちゃんに車に乗るよう促した。
「朱鶴さん」
「…ん?」
「私と女王さんは、お友達です。そう約束しました」
「うん、そっか」
「…朱鶴さんも、お友達になってくださいますか?」
「…もちろんだよ、そよちゃん。今度は私と神楽ちゃんで遊ぼうね」
「……はい!」
そよちゃんは晴れ晴れとした笑顔を私に向けると車に乗った。
「…はあ。勝手な約束取りつけやがって。姫とあろうお方が早々外にでられるわけねーだろ」
「その時は、護衛の方がついてきてくれればいいんじゃない?」
「ね、総悟」と話を振れば、総悟は微笑みながらうなずいてくれた。
「俺が朱鶴姉を守りますぜィ」
「いや、私じゃなくて姫様ね」
「こいつだけじゃ勤まんねえよ……ッチ、仕方ねえからそん時はついてやる」
「素直じゃないんだから」
「アァ!?」
ふふっと微笑むと十四郎は少し顔を赤らめて怒鳴りつけてきた。これ以上怒鳴られるのも嫌なので早々にその場を立ち去った。
向かう先は、
「かーぐらちゃん」
「マミー……」
屋根の上には膝を抱えた神楽ちゃんの姿があった。目には涙を浮かべ、悲痛そうに顔を歪めている。
そんな神楽ちゃんの横に座り、頭をゆっくり撫でてやった。
「そよちゃんがね、また遊んでくれるって。さっき約束してきたの。また会えるよ。だって友達だもん」
だから、
「泣かないで」
「……マミーィィィ…!!!」
神楽ちゃんは私のおなかのあたりに抱きつくと、声を上げて泣き始めた。
背中に手を添え、優しくたたいて落ち着かせるも、なかなか泣き止まない。
そよちゃんはそれほど神楽ちゃんの中で大きな存在になっていたんだね。
「さ、神楽ちゃん。おうちに帰ろう。お夕飯の時間になっちゃうよ」
「…ハンバーグ」
「そう。お手伝いしてくれるかな?」
「…うん!」
目に涙をたくさん浮かべながらも笑顔でうなずいた神楽ちゃん。
彼女が握っている番傘の柄には二人が映ったプリクラ。
こうして思い出は残されているんだよ。
だから、もっと思い出を増やしていこう。そうしたら、きっと会えない時間もつらくなくなるから。
って、昔の私に言ってるみたい。
「なんて、ね」