君の不安なんて





一私は、何時になったら大人になれるんだろう。


私には恋人と呼べる人がいる。

プー太郎で
お金に貪欲で
でも
優しくて
強くて
真っ直ぐな人

そんな彼が、私は大好き。

だけど彼と私は年が少しばかり離れている。

本当は16歳の私が相手にされるのが可笑しな話。

だけど彼は気にしてねえ、と言って私を抱き締めてくれる。
キスしてくれる。
笑顔を見せてくれる。

だから、別に良かった。

だけど、今日。
銀さんと月詠さんが
話していたとこを偶然見て。
胸が苦しくなって。
ああ、お似合いだなあって思ったら。
涙が出た。

そしたら、足は勝手に動いて歌舞伎町を走っていた。

人にぶつかって怒鳴られても、
足が縺れて転びそうになっても、
決して足を止めることをしなかった。

気づけば、知らない路地裏の、街灯の少ない所に居た。

無我夢中で走ったから、ここがどの辺りかも分からない。
怖くなった。
人一人、誰も、いない。
暗くて、寒くて。
途端に彼の顔が頭を過った。



「銀…さん…!」



私はその場にしゃがみ、膝に顔を埋めた。
思い浮かぶのはいつもの銀さんのダルそうな顔。
馬鹿みたい、勝手に嫉妬して、悲しくなって、走り出して。

まだ、子供。
銀さんとお酒も飲めないし、夜中に散歩も出来ない。
ちっちゃな子供。

銀さんに近づきたいよ。
銀さんに似合う女性になりたいよ。

銀さん、
会いたいよ。




「おじょーさん。こんなとこでなにしてんの」




聞こえてきたまったりとした声。
私は勢いよく顔を上げる。
そこには、
大好きな笑顔。



「銀、さ…ん」

「なーに泣いてんだよ」



銀さんは私に目線を合わせるように膝をつき、親指の腹で私の頬を伝う涙を取り払った。

どうして、
そう言いたくても嗚咽が邪魔をして声が出せない。



「ぎ、さ…っ」

「ん―?」

「何処、にも…行かない、で!」



ああ、結局私は恐かったんだ。
子供である私を捨てて、違う女の人を好きになるのが。
私の前から銀さんが居なくなることが。
そう思ったら更に涙が溢れてくる。
呼吸が乱れて、嗚咽が出て、苦しい。



「バーカ」



銀さんが腕を伸ばした。
それを私の頭に伸ばすと、ぐいっと引き寄せた。
額が銀さんの胸板につく。
背中に銀さんの腕が回る。
髪に銀さんの息が掛かる。
今、銀さんに抱き締められてる。



「何勝手に不安になってんの。俺がお前を置いてどっかにいく?ありえねーよ」

「だって…、わたし、こどもだし…!」



頭の上で銀さんが溜め息をついたのが分かった。
呆れられたと思って、また涙が溢れる。
そんな私を、更にきつく抱き締めた。



「お前さ、自分がこどもだっつって気にしてるがよ。俺はお前をこどもだって思ったことねーよ」



一旦距離を置き、ルビー色の瞳とかち合う。



「だってこんなに、魅力的じゃねえか」

「…っ」

「銀さんを捕まえておけんのはハナだけ。自信持てよ」



銀さんはいつもそうだ。
私がほしい言葉を、さらりと言ってくれる。
本格的に泣き出した私を
銀さんは笑って抱き締めた。






君の不安なんて、僕が吹き飛ばす

(それが、俺の役目だろ?)






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