似た者同士




最近新八が異常なまでに機嫌が良い。
お通ちゃんのライブ前日より、ニューシングル発売当日よりもとてつもなく浮かれているのだ。
いつもより大音量で歌いながら掃除をする新八に問いただしてみた。

そしたら、




「じ、実は彼女ができたんです」




というまったく信じがたい言葉が帰ってきた。
彼女って……お通のフィギュアか?ゲームの中の美少女か?機械のメイドか?お前ドンだけ悲しい人生送ってんだよ。
確かにお前は地味でツッコミしか能がねえ奴だが気が利くし優しい心持ってんだからよ。
まだ諦めるには早いぜ。
俺がそう捲し立てればいつもなら「地味っていうなァァァ!!」とか「ツッコミしか能がないって失礼だろォォォ!!」とか突っ込んで来るはずなのに新八ときたら、頬を染めながらヘラっと笑った。




「違いますよー。ハナちゃんっていう甘味処で働いてる子ですよ」






俺の頭に雷が落ちた。特大のやつ。
新八の彼女(自称)であるハナちゃんとやらは実在するらしい。
うそだ、信じねえ。俺にも彼女がいないってえのに信じられるかァ!!




「丁度今日万事屋に遊びに来てくれるんですよ」

「う、嘘だろ」






タイミング良く玄関からインターホンが鳴った。

するとどうだろう、新八は一気に顔を輝かせ、持っていた掃除用具を放り投げて玄関へと走っていった。
新八のあんな嬉しそうな顔初めて見たんですけど……。
おい、マジなんですか。






「銀さん!この子がハナちゃんです」

「は、初めまして。ハナと言います。新八くんから沢山お話を聞いています」

「ど、どーも。坂田銀時でーす」






新八がつれてきた彼女(自称)(まだ信じられない)はちっこくて、目がクリクリした人形みてえな可愛い女の子だった。
……尚更信じられねえ!






「ハナちゃんバイト帰りで疲れてるでしょ?さ、ソファに座って。僕お茶汲んでくるから」

「ごめんなさい。ありがとう、新八くん」





ハナちゃんが可愛らしい笑顔でお礼を言えば新八は顔を真っ赤にして微笑んでから台所へと姿を消した。




「あの…オタク本当に新八の彼女?」

「え、と……はい」





照れながらもコクリと頷くハナちゃん。
あーこりゃマジだな。






「遊びとかじゃねえんだよな?」

「違いますよ」





かなり失礼な事を聞いてハッと口許を抑える俺にハナちゃんは笑いながらゆるゆると首を振った。
俺はそれにホッとした後、更に質問した。




「新八とはいつ知り合ったんだ?」

「1ヶ月程前……バイトの買い出しで重い荷物を持っていたときに声を掛けてくれたんです」

「新八らしーな」

「ふふ、ええ。恥ずかしいことに私、新八くんに一目惚れだったんです」

「マジかよ」







意外にも意外。俺ァてっきり新八の片想いから始まったと思ってた。






「新八くんは誰よりも優しくて心が強い人。そんなところに惹かれたんだと思います」






ハナちゃんの目を見れば俺は「嘘だろ」なんて言葉は出なかった。
心のそこから新八を想ってる、そんな目だ。






「……そうかい。ハナちゃんなら安心だな」

「ふふ、新八くんを心配してたんですか?」

「まあ新八は弟みてえなもんだからな。それにアイツはばか正直で騙されやすい奴だからよ」

「そこが新八くんの良いとこでもあるんですよね?」

「……まあな」

「お茶入りましたよ。
何の話をしてたんですか?」






話の区切りが良いところで新八がお盆をもって来た。
新八は俺の前に一つ、ハナちゃんの前に一つ、そして最後にハナちゃんの横に座って自分の分を置いた。






「たいしたことねえよ。ただの世間話さ。な、ハナちゃん」

「はい」

「……なんか仲良くなるの早いですね」

「やだねえ新八。男の嫉妬は醜くていけねえよ」

「そ、そんなんじゃ……!」

「安心しろ。未来の妹分と仲良くしてただけだからよ」






俺がニヤリと笑いながらそういえば、二人は同時に顔を赤くした。

ちゃんとお似合いだぜ、おめえらは。








けっこう似た者同士
(新八くん顔赤いよ)
(ハナちゃんもね)







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